学校だより ふうしゃ 平成27年9月4日 アムステルダム日本人学校 No 17 http://www.jsa.nl/ 「ひとりの子を粗末にしたとき、教育はその光を失う」 校長 尾後貫 智 先々月、日本国内でまたしてもいたましいいじめによる中学生の自殺報道がありました。 今回のいじめによる自殺も、突発的にその子が自殺したのではなく、そこに到るまでの本 人の苦悩や葛藤があったことは、遺された行動観察ノートを見る限り、確かです。それを まわりにいた人々が誰一人救えなかったという点が悔やまれてなりません。 私はこの事件を決して遠く日本で起こった他人事とはどうしてもとらえることができま せんでした。なぜなら、いじめは子どもたちが共同生活を行う場においては、どこでも起 こりうる可能性があるからです。今回の事件の報道があった際に、私は全職員に学校だよ り(教師版)第 6 号 7 月 13 日付けで以下のように周知しました。 「教育の基本は、授業においても、生徒指導においても児童生徒理解です。これは、た とえ時代が変わろうとも、変わらない要因だと思います。担任が、校内の教師が、管理職 がどれだけ児童生徒理解を深めることができるかが大きく問われていると思います。」 そこで、具体的に指示したことは、以下の 2 点です。 ① 子ども達の人間関係は絶えず変化していると認識すること。そのため現在 の自分の児童生徒理解を過信することなく、絶えず児童生徒理解のアンテ ナの感度を高める努力をしていくこと。 ② 児童生徒理解のための情報のネットワーク作りに努め、担任以外の職員も 子ども達の様子で気づいたことを積極的に担任に伝えて児童生徒理解を深 めること。 もちろんこれだけで十分だとは思っていません。保護者の皆様からの情報や、学校で気 になる子どもについて保護者の皆様と連携していくことが不可欠だと認識しています。さ らに日本国内では、平成 26 年 4 月から「いじめ防止対策推進法」が施行されています。そ の第 13 条には、「学校は、いじめ防止基本方針又は地方いじめ防止基本方針を参酌し、そ の学校の実情に応じ、当該学校におけるいじめの防止等のための対策に関する基本的な方 針を定めるものとする。」と明記されています。これに則り、本校でもいじめ防止基本方針 を策定しました。職員会議で全職員で共通理解していじめ防止にこれまで以上に努め、ま た不幸にもいじめが発生してしまった場合、学校全体で組織的に解決に向けて取り組んで いく方針を定めました。このいじめ防止基本方針はホームページに掲載しますので、是非 ご一読していただきたいと思います。 「ひとりの子を粗末にしたとき、教育はその光を失う」この言葉は、教え子の死を原点 に先覚の教育を実践した「東洋のペスタロッチ」とまでいわれた安部清美先生の言葉です。 教え子は、運動会のリレーの練習中に突然心臓麻痺で急逝したもので、担任が非難を浴び ることはなかったのですが、自責の念が強く「自分は子どものことを何も理解していなか った」と思い、自殺を決意しましたが、同僚によって助けられ、その失意の中で誓った言 葉が、「ひとりの子を粗末にしたとき、教育はその光を失う」だったのです。 これはいじめとは関わりのない大正時代の話ですが、大正であろうと、平成であろうと 児童生徒理解が教育の基本であることは、普遍的な事実です。この教育の基本がなおざり になった時、いじめや事故などの様々な現象が教育現場で表出してくるものと考えます。 学校は、人と人とが互いに尊重し合い、認め合い、助け合う望ましい人間関係を作り共 に楽しく過ごすことを学ぶ場です。子どもたちは、思いやりのある言動や人間関係作りを 時に試行錯誤しながら学び合っていくものです。現在、人としての成長発達段階にある子 どもたちには、常に、相手を傷つけてしまったり、嫌がらせやいじめの被害者にも加害者 にもなり得る可能性があります。 そこで学校では、道徳の時間や学級活動の時間を中心に子どもたちが思いやりのある言 動をできるように心の育成や自律心の向上等を図り、嫌がらせやいじめの未然防止に努め ています。また、子どもの様子について日常観察や面談・アンケート等で情報を収集し、 いじめ、嫌がらせの早期発見やいじめの芽を摘み、根を取り除く指導を継続的に行ってい ます。子どもたちの言動に対する注意のアンテナをより高くしながら指導体制を充実させ て、いじめや嫌がらせのない安全安心な学校にしていきたいと思います。 この取り組みは保護者の皆様方と連携協力していくことが不可欠であり、そうすること でより実効性が高まるものと考えます。今後とも保護者の皆様方のご協力をよろしくお願 いいたします。
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