地上雨量計による X バンドマルチパラメータレーダの精度評価

(一社)建設コンサルタンツ協会 近畿支部
第48回(平成27年度)研究発表会 論集
プレゼンテーション発表アブストラクト №224
地上雨量計による X バンドマルチパラメータレーダの精度評価
東洋技研コンサルタント株式会社
奥村 純一
の間にあることから,比較を行なう時間帯を 11 時から 17
1.はじめに
近年,都市部において局地的短時間豪雨による水害被害
時までの 6 時間とした.
が多発し問題視されている.そこで国土交通省では水害緩
和策として,X バンドマルチパラメータレーダを設置し降
雨情報を試験的に提供している.しかしレーダによる降水
量推定値が正確であるかどうかは十分に検討されていない.
そこで本研究では,レーダの精度を明らかにするため,レ
ーダの測定値を地上雨量計の観測値と比較した.
2.X バンドマルチパラメータレーダの概要
現在,気象庁・国土交通省では気象レーダとして C バン
ドレーダを使用している.しかし C バンドレーダは解析度
が 1km メッシュと粗く,情報配信までの時間も 5 分から
写真 1 レーダの外観
10 分かかり,局地的に短時間で降る集中豪雨の情報として
は物足りない.一方 X バンドマルチパラメータレーダ(写
N
真 1)は国土交通省により平成 22 年 3 月までに一部設置
(c)
され,7 月よりデータの配信が始まった.X バンドマルチ
パラメータレーダの解析度は 250m メッシュと細かい.ま
た,情報配信までの時間は約 1 分と早く,より細かな降雨
(b)
情報をリアルタイムに得られる.この情報は水害被害の減
(a)
少に役立ち,防災につながる.また短時間降雨の予想への
応用が期待される.
3.対象とする降雨と範囲
比較対象とする降雨は平成 23 年台風 15 号によってもた
らされた降雨で,9 月 20 日には名古屋気象台で同観測所 5
番目となる月最大 24 時間降水量 223.5 ㎜を記録した.この
5㎞
豪雨により,愛知県名古屋市守山区では,庄内川の越流が
あり,死者 2 名,床上浸水 17 戸,床下浸水 27 戸の被害が
気象庁
国土交通省
愛知県
名古屋市
図 2 検証を行う対象範囲と地上雨量計の配置図
あった.
対象とする範囲は図 2 のように名古屋市全域を含む東西
約 25km
(東経 136°47'15''から 137°04'7.5''の 16 分 52.5 秒,
X バンド 90grid)南北約 28km(北緯 35°1'45'' から 35°
16'37.5''の 14 分 52.5 秒,
X バンド 119grid)の範囲内とした.
比較対象とする地上雨量計は,気象庁所管の 2 箇所,国土
交通省所管の 2 箇所,愛知県所管の 8 箇所,名古屋市所管
の 34 箇所の合計 46 箇所である.
4.降雨の特徴
図 3 は名古屋気象台で 9 月 20 日に観測された時間雨量
変化を示したものである.降雨のピークは 12 時から 14 時
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図 3 時間雨量変化 名古屋気象台
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プレゼンテーション発表アブストラクト №224
(a)
(b)
(c)
図 4 各地点の 10 分間降雨量の時間変化
5.降雨の特徴
図 4 は図 2 の(a)(b)(c)地点に設置されている地上雨
量計と対応するレーダの観測値の時間雨量変化である.
図を見るとレーダの値が地上雨量計に近い値で推移し
ているのがわかる.図 5 は地上雨量計と,レーダ雨量
の比較をみた図である.図からわかるように,測定さ
れた値はほぼ 45 度線に沿って集まっていることがわ
かる.図 6 は図 5 で用いたデータよりレーダ雨量の
値から地上雨量計の値を引いたものの値が,
0.5mm/10min の区間に,いくつあるのかを求めたヒ
ストグラムである.地上雨量計の観測値 0mm/10min
の場合は除いてある.図をみると誤差は-1.0~
図 5 レーダと地上雨量計の比較
1.0mm/10min の間に集中しており,レーダと地上雨
量計の観測値は近い値であることがわかる.算出した
標準偏差は 1.334mm/10min であった.また図 7 は地
上雨量計の観測値が 2mm/10min 以上であるものから
作成したヒストグラムであり,算出した標準偏差は
1.722mm/10min である.上記の結果より,誤差は雨
量強度が高くなると大きくなることがわかった.また,
誤差の分布は安定した表れ方をすることが明らかにな
‐0.5 ‐4.0 ‐3.0 ‐2.0 ‐1.0 0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0
った.
6.おわりに
図 6 誤差のヒストグラム
X バンドマルチパラメータレーダと地上雨量計の観
測降雨量の比較を行った結果,レーダの測定値は,実
際の降雨量と近い値を測定していることが明らかにな
った.よってレーダの雨量情報を活用することは,局
地的短時間豪雨の被害の抑制につながると期待できる.
今後の課題としては,他の降雨現象を対象にした比較
を行ない,さらに詳細な検証をすることが必要である.
‐0.5 ‐4.0 ‐3.0 ‐2.0 ‐1.0 0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0
図 7 誤差のヒストグラム(地上雨量計 2 ㎜/10min 以上)
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