「 馬 」

ニンジン
ま
タキイ茨城研究農場
冷涼地:播種7月→収穫10~11月
中間地:播種8月上中旬→収穫11
月中旬~12月
暖 地:播種8月中旬~9月上旬
→収穫11月下旬~1月
■「翔馬」適期表
冷
涼
地
中
間
地
暖
地
近年、ニンジンの夏まき栽培は、地
「翔馬」の適作型
く、適期収穫でM/L規格によくそろ
定した早生種です。形状の乱れが少な
「翔馬」は尻詰まりが早く、肥大の安
❶尻詰まりのよい早生種
しり
品種特性
年新発表することとなりました。
ためタキイ交配「翔馬」と命名し、本
た育種目標を達成し有望と認められた
産地で試験栽培を行った結果、期待し
て数年間にわたり関東や九州の主要な
−
した。そして「TCH 750」とし
ジン」を目標に品種育成を行ってきま
効率の高い良質の夏まき年内どりニン
「安定した生産性とそろいがよく作業
ます。そのようなニーズに応えるべく、
まで以上に高いレベルが要求されてい
化が進み、品種に求められる特性も今
の栽培は機械化による省力化、大規模
安定になっています。一方で、生産者
った気象変動の影響により、作柄が不
球温暖化による猛暑や豪雨、少雨とい
門田 伸彦
のぶ ひこ
た
かど
太りよし、そろいよし、肌ツヤよしの夏まき年内どり種 !
しょう
「翔馬」
新発表
9
2015 タキイ最前線 夏号 ②追肥型の肥培管理
こう よう に ごう
「翔馬」
は
「向陽二号」
と同様に吸肥力
のおとなしい品種のため、肥培管理に
注意します。施肥量は「向陽二号」と
同程度(10a当たりチッソ成分12㎏程
度)を基準とし、前作の残肥や畑の保
の水分を必要とします。発芽をそろえ
るよう十分な潅水管理を行いましょう。
発芽後も乾燥すると又根や裂根が増加
するため、土壌水分に留意し適宜潅水
を行います。
「翔馬」
の
「発芽から初期生育が旺盛」
という特長を最大限に生かせるように
潅水管理を確実に行い、均一な発芽と
スムーズな初期生育を目指しましょう。
④病害虫の防除
はん てん
害虫や葉枯れ病害(黒葉枯病や斑点
はん てん さい きん
病、斑点細菌病など)は発生すると蔓
延しやすく収量に大きく影響します。
め、肥沃地では初期の肥効をやや抑え
月あたりから定期的に薬剤散布を行う
た追肥型の肥培管理が適します。元肥
として全体の6~7割を施用し、残り
を追肥とするとよいでしょう。
一方、やせ地や肥料もちの悪い畑で
は初期から安定した肥効に留意します。
生育途中の肥切れは、裂根や地上部病
くろ は がれ
害(黒葉枯病など)の発生につながる
ため注意しましょう。
また、ニンジンはリン酸の肥効が生
育に重要といわれています。リン酸成
10 2015 タキイ最前線 夏号
95
ンの種子は吸水力が弱く、発芽に多く
肥力を考慮して施肥量を決定します。
「翔馬」
は初期生育が旺盛な品種のた
❹根色濃く肌がなめらかで食味良好
栽培する重要ポイントとなります。
い、秀品率が高い品種です。
有機質に富んだ土づくりが「翔馬」を
❷初期生育が旺盛で作りやすい
カ月以上前に施用します。排水がよく
根形はやや肩張りの五寸形状で、根
色は表皮から芯まで鮮やかな赤みのあ
堆肥は完熟堆肥を利用し、播種の1
る鮮紅色です。肌がなめらかでツヤが
性向上には緑肥栽培や堆肥施用を行い
ます。
夏まき栽培の播種時期は、生育環境
が厳しいため発芽不良や立ち枯れが発
たい ひ
の最重要ポイントとなります。ニンジ
あり、洗浄後の荷姿が美しい商品性の
気性や保水性、保肥力など土壌の物理
期生育を順調に進めることが良品多収
生しやすくなり、収量や秀品率に大き
ほ
圃場の排水性向上に努めましょう。通
高い品種です。また、みずみずしい食
う明渠の設置や、畝を高めにするなど
ニンジン栽培は、発芽をそろえ、初
く影響します。「翔馬」は高温条件下に
めい きょ
感で臭みが少ないため、食味にすぐれ
畑では短根や、しみ腐病などが発生す
る恐れがあるため、水がたまらないよ
③「均一な発芽」と
「スムーズな初期生育」
20
おいて発芽ぞろいがよく、初期生育が
ぐされ
定生産・良品多収へとつながります。
ます。適作型では播種後 ~100日
します。地下水位が高く水はけの悪い
発根が促され地上部が健全となり、安
18
旺盛で欠株になりにくく栽培安定性に
ひ よく
・保水性のよい肥沃な畑での栽培が適
布剤を、生育中後期に数回散布すると
で根長 ~ ㎝程度、根重180~2
「翔馬」は耕土が深く、通気・排水
分主体の「ホストマト」などの葉面散
すぐれます。
また、
肩部の高温障害(エ
①排水良好で
有機質に富む土づくり
00g
程度によくそろいます。
栽 培 の ポ イ ン ト
クボ症、肩こけ)に比較的強く、夏ま
き年内どり栽培に最適な品種です。
❸草姿立性で機械収穫に適す
「翔馬」の草姿は立性で葉が伸び過ぎ
ず、葉軸はしっかりしています。その
ため、中耕や土寄せ、薬剤散布など栽
培管理が行いやすく、ニンジン収穫機
を用いた機械収穫に適しています。
↑草姿立性で機械収穫にすぐれる。
予防的防除を基本として、播種後1カ
と効果的です。また、収穫遅れによる
老化は、しみ腐病の発生増加につなが
るため適期収穫を心掛けましょう。
ニンジン「 翔 馬 」栽 培 特 性メモ
最適播種期
(産地レベル)
8月上中旬(中間地)
基本の施肥量
(10a当たり) N:P:K 12㎏:15㎏:15㎏
播種基準
(畝幅・条数・株間) 畝幅75㎝・条数2・株間7㎝(一般地)
栽培重要ポイント
黒葉枯病・斑点細菌病の予防的防除
↑「翔馬」は、尻詰まり
が早く肥大の安定した
早生種。