適性検査Ⅱ型試行問題

ものの見方として,幅広くものを見て,自分の
頭で考えているかどうかをみます。
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次のA・Bの文章,Cのグラフを参考にして,
あとの問いに答えなさい。
A
私たちが当たり前に耳にするようになった「グ
ローバル」という言葉が,頻繁に使われるように
なったのは一九八九年以降のこと。ベルリンの
壁が崩壊し、東西の冷戦が終結する世界情勢
のなかで,「資本主義・自由経済」対「社会主義・
計画経済」といった二項対立が消え,〝世界は
ひとつである〟という発想のもと生まれたのが,
「グローバル」という概念です。
当時はグローバル化により世界が均質になり,
単一化(フラット化)していくという考え方が主流
でした。それはモノやお金が世界を駆け巡る「経
済」を中心に,グローバル化がとらえられていた
からです。しかし,現在,世界では単一化よりも,
むしろ多様化が進んでいると考えられています。
国籍や民族の異なる人々,そしてそれぞれが持
つ文化が,グローバル化する世界で異文化とし
てグラデーションを描き始めたのです。
多様化する世界を前に,異なる文化を持つ
人々が,互いの文化的違いや価値を受け入れ,
尊重し,新たな関係性を創造することを目指す
「多文化共生」の考え方が,重要な意味を持つ
ようになりました。
でも,私たちは自分の持つ文化を,普段はそ
れほど意識していません。
例えば,海外で食事の前にお祈りをするクリス
チャンを目にしたとき,私たちは,自分たちが食
事の前に「いただきます」と言葉を発しながら手
を合わせる習慣を持っていることに気がつきま
す。異なる文化が交差するとき,初めて私たち
は自国の文化を意識させられ,同時に,異なる
文化に対して違和感を感じることもあるでしょう。
しかしこうしたとき,それぞれの文化に優劣をつ
けるのではなく,違いを理解して受け入れること
が多文化共生につながります。
この多文化共生の考え方は,民族や国籍の異
なる外国人との共存に限定されるものではあり
ません。例えば,お父さんやお母さん,学校の先
生の言うことが理解できないときがありませんか。
それは「ジェネレーションギャップ」という異文化
がそこに存在しているからです。
多文化共生で大切なことは「ぶつかる」こと。ぶ
つかるというと,なんだか怖い気持ちがしますが,
そうではなくて,コミュニケーションの際に生じる
〝ずれ〟を見出すことが重要。例えば,異なる
文化背景を持つ相手との対話で,意見を述べ
合ってぶつかることで,相手がどういう観点から
話をしているのかを初めて理解できた経験は
ありませんか。 そんなふうに私たちの身の周り
にある,さまざまな異文化を意識し,それを理解
しようとすることが,コミュニケーションの第一歩
となります。グローバル化というと,遠い話に聞
こえるかもしれませんが,こうした身近なところ
から始まるのではないでしょうか。
•龍谷大学公式サイト「グローバル化する社会で,世界はど
うなるの?日本はどう変わる?」より引用
http://www.world.ryukoku.ac.jp/department/why_02.html
B
「盆栽教育」とは,すべての子どもたちを盆栽
のようにこじんまりと育てようとする教育です。自
由に枝葉を伸ばそうとすれば,それは切られて
しまいます。大きく伸ばすことを考えるのではなく,
小さくきれいに育てようとしています。そして,は
み出しものの,盆栽になりそうもないような子ど
もたちはその場で捨てられてしまいます。言い方
は悪いようですが,それが今の日本の教育なの
です。
この「盆栽教育」のなかで,はたして「生きる
力」が育まれるでしょうか。日本を飛び出して,
世界で活躍できる人材が育つでしょうか。残念な
がら答えはノーだと思います。では,本当の意味
での「生きる力」とは何なのでしょうか。それは
「希望と夢」をしっかりと持つことだと考えます。
自分は将来,こんなことをやりたいという夢,こ
んな仕事で社会に役に立ちたいという希望,そ
の「夢と希望」こそが,人間の生きる力の源泉に
なります。いい大学に入ることや,もっと偏差値
をあげること,そんなちっぽけな夢ではなく,バカ
バカしいほどに大きな夢をもつこと,それこそが
子どもの特権であり,彼らの大いなる力なので
はないでしょうか。
「夢や希望」というのは人それぞれです。10人
の子どもがいれば10の夢と希望があります。そ
の一つひとつの夢に目を向け,寄り添いながら
後押ししてあげること,教師と保護者がすべきこ
とはそれだけなのです。
残念ながら今の教育現場は,みんなが同じ夢
や希望をもつように押し付けています。生きる力
はこれしかないと言いきっているような気がしま
す。夢なんて大きくなくていいでしょう,大きな希
望は抱かないほうがいいでしょう,小さくきれい
な盆栽のように育ちなさい,子どもたちはそうい
われながら育っているのです。
<次ページに続く>
<前ページからの続き>
私はJICAで活動する医師の言葉が忘れられま
せん。彼はアフリカの貧しい地域で医療活動に従
事していました。誰もが貧しく,病にかかるとすぐ
に死んでしまいます。多くの幼い子どもたちが命
を落としています。彼らを助けなくてはいけません。
もっと多くの食料を提供し,優れた医療をもたらさ
なければいけません。必死になって彼は活動して
いました。
しかしあるとき,医師はここにいる貧しい子ども
たちが望んでいるものが,食糧や水ではないこと
に気づいたのです。一本の注射も大事だけれど,
ほんとうに望んでいるのはそんな表面的なもので
はありません。目の前で治療を受けている幼い子
ども,医師はその子の心からの声を聞いたと言い
ました。子どもは目で必死に訴えていました。
「僕たちに,生きる希望をください」
この言葉に私は感動を覚えました。人間が生き
るための術となるもの,それは食糧やお金ではあ
りません。それは夢と希望です。生きる力とは何
でしょうか。もう一度立ち止まって,みんなが考え
る必要があるでしょう。私は心からそう感じていま
す。
江里口歡人「IB教育がやってくる!」より引
用
C
下のグラフは,高校生を対象に,留学する目的
について聞いたアンケートの結果を示したグラフ
です。
問 もし,あなたが近い将来,留学するとしたら,
留学期間の間に身につけたいと思うことは
どんなことですか。【書くときのきまり】にした
がって,18行以上20行以内で書きなさい。
【書くときのきまり】
1 題名は書かず,1行目から作文を書き始
めること。
2 文章全体で,少なくとも2つ以上の段落を
設けること。
3 最初の段落には,A, B いずれか各資料
で述べられていることをまとめ,それに対
する自分の意見を書くこと。
4 原稿用紙の適切な使い方にしたがって書
くこと。
5 文字や仮名づかいを正しく書き,漢字を
適切に使うこと。
これからの時代を生きていくうえで必要なこ
とは何であるかという問題に、真剣に向き合
い考えていってほしいという意図から出題し
ています。
[グラフ] 留学したらやりたいこと
・「平成25年度高等学校等における国際交流等の状況について」(文部科学省初等中等教育局国際教育課)より引用