と き コレクション・ギャラリー「時間のかたち」作品紹介 いけだ 作 者 名:池田 みどり 緑 / 1943(昭和 18)年生まれ 作 品 名:My Own Specimen(1943 年 4 月 3 日に生まれて) 制 作 年:1999(平成 11)年 技法材質:プラスチックテープ、アクリルパイプ 寸 法:縦 205.5 × 横 59.9 × 厚み 9.8cm 幾本も並べられた透明の筒。そのなかには、日付を示す数字が連綿と刻印 されたプラスチックテープがおさめられている。はじまりは、「1943. 4. 3」。 作者がこの世に生を享けた日だ。 池田緑は 1980 年代より、構成力にとんだ油彩画を発表したのち、さまざ ▲全図 まな素材や手法をもちいて自らの思索の過程を提示した独自の表現様式へ と移行し、道内外で注目を集めつづけている。 本作はアクリル筒を素材としたシリーズの1点。50 年以上の歳月にわた る毎日の日付が、テープライターをもちいた間接的な印字や、標本 (Specimen)にみたてた構成によって連なる様は、彼女自身の人生の時間 とともに、同じ時間を生きる私たちにも、さまざまな思考や想像を喚起させ ▲部分図 るだろう。 いけだ りょうじ 作 者 名:池田 良二 / 1947(昭和 22)年生まれ 作 品 名:Time of frozen ground(凍土の時) 制 作 年:1990(平成 2)年 技法材質:フォトエッチング、エッチング、アクアチ ント、ドライポイント、メゾチント、手漉き雁皮紙 寸 法:縦 114.0 × 横 180.0cm 池田良二は根室生まれ。同地で少年時代を送った のち、武蔵野美術大学に学んだ。写真を銅板に転写するフォトエッチングを中心に、さまざまな銅版画技 法をもちいた大作版画によって、国際的に評価を得てきた。 この作品は、根室の落石岬にある無線局跡をモティーフとしたもの。本作を手がける 5 年ほど前、作者 は母の葬儀のため久々に帰郷するが、その際、生地からそう離れていない落石岬に足を運んだ。そこで長 い年月とともに廃墟と化した無線送信所を目にしたという。以降、多くの作品において、この地をめぐる 情景をモティーフとしている。 いくつもの技法を併用した重層的で深みある大画面。そこには、故郷の地にふたたび立って気づかされ た、とどまることのない時の流れと自らの存在に対する作者の思いが込められている。 1 と き コレクション・ギャラリー「時間のかたち」作品紹介 おおうら かずし 作 者 名:大浦 一志 / 1953(昭和 28)年生まれ 作 品 名:杉並区阿佐ヶ谷南 3 丁目 23-13 普賢岳 (川は水を必要としていた) 制 作 年:1994(平成 6)年 技法材質:ミクストメディア(土、石、灰、木、合成樹脂、 印画紙) 寸 法:縦 169.0 × 横 225.0 cm 土や小石、 木の枝が貼り付けられた光沢のある表面。 その下に浮かびあがる、荒れ果てた自然風景。周囲には、メモのような書き込みもみられる。 この作品は 1990 年 11 月、約 200 年振りに噴火し、大火砕流を発生させた長崎県・雲仙普賢岳における 災害を題材としたもの。作者の大浦一志は、グラフィックデザインの分野で活躍する一方、写真をもちい た作品で知られている。本作では、災害地と自身の仕事場で使用している作業机という距離を隔てた場景 を、1枚の印画紙に二重に焼きつけ、さらに現地で採取した自然物を重ね合わせることで、ふたつの場、 ふたつの時の間を往還する、自らの行動と思索の軌跡を視覚化している。 「 『見るという行為』は対象に深く関わり、その対象と一体となる時間を持つことであるように思う」と いう作者の言葉は、美術作品をみる私たちにも、大切な示唆を与えてくれるだろう。 2
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