陳言コラム-16 中国雑談 ニセ札の名人 日本から短期取材に来た友人と一緒にタクシーに乗った。降りるときには、友人が赤い 百元を出して、運転手に差し入れた。相手は非常に不機嫌な顔でその百元を返して、「細 かい金はないか」と言われた。日本人の記者はそれがわからず、新しい元を出したが、ま た返してきた。「ニセ札」とはじめてわかった。後で見ると同じ番号の百元だった。 統計によると、2014 年に中国で押収された偽札の額面価格は 5 億 3200 万元で、2 年前 の 3 億 2900 万元を大きく上回った。中国の警察関係者の話では、新しい 100 元のニセ札 の価格は 1 枚 6 元で、転売されるたびに価格が徐々に上がっていくという。 中国のニセ札全体の 97%は、広東省の彭大祥が制作したフィルムを使用して印刷され たものだ。彭は 2013 年に逮捕され、現在無期懲役刑に服している。 彭は今年 76 歳で小学校しか出ていないが、幼い頃から絵を描くのが大好きで、地元で は少し名の知れた絵師だった。彼はパソコンの技術を会得していないので、ニセ札のフィ ルムの図案はみな彼が手作業で描いたものだ。彼の話によると、自分が作ったフィルムの 偽札図案を撮影、露出、現像、固定、すすぎ、乾燥などの工程にかけることによって、ニ セ人民元の印刷が可能なさまざまなレイアウトやさまざまな色合いの原版一式が完成す る。 彼が手作業でニセ札を描く際には、拡大鏡を使用して本物の札を観察しながら細部を描 いていくという。手書き作業が終わるとフィルムカメラで撮影し、原版の型枠を作る。 彭は自らの作品に対する基準が厳格で、経験も豊富だ。例えば、彼は毛沢東の透かしの 顔の部分には線を多めに加えて、透かしがよりリアルになるように工夫を凝らしており、 肉眼では本物と全く見分けがつかないほどだ。 彼は自ら制作したニセ人民元のフィルムをこれまでに 13 セットも売り、フィルムの価 格は一つ 5 万元から 12 万元だったという。彼が作った偽札フィルムの原版は 10 件を超え る偽札事件にからんでおり、それらニセ札の額面金額は合わせて数億元に上るとのことだ。 彭は、豚小屋に行ってしまっても億単位のニセ札はそれほど簡単に社会から駆除できな い。まがりにまがって日本からの友人も大きな被害を受ける。僕の日本人友人はどこで両 替してそのニセ札をもらったのだろうか、今もわからない。 陳言 在北京ジャーナリスト 連絡先:[email protected] 微信:understandChina 偽札の例
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