特殊関数を用いた 双極子-双極子相互作用のフーリエ変換

特殊関数を用いた
双極子-双極子相互作用のフーリエ変換
by T.Koayma
1.特殊関数の定義
まず、計算に必要な各特殊関数の定義を行う。
(1)ルジャンドル関数
Pn ( x ) =
1 dn 2
( x − 1) n , ( n = 0,1, 2, ")
2n n ! dx n
Pn ( x ) =
⎛n⎞
1 [ n / 2]
( −1) k ⎜ ⎟ (2n − 2k )(2n − 2k − 1) " ( n − 2k + 1) x n −2 k
∑
n
2 n ! k =0
⎝k ⎠
1
= n
2
[ n / 2]
∑ ( −1)
k
k =0
(2n − 2k )!
x n−2 k
k !( n − k )!( n − 2k )!
[n / 2] は n が 偶 数 の 時 に は 整 数 n / 2 で 、 奇 数 の 時 に は 整 数 ( n − 1) / 2 を 意 味 す る 。 ま た 、
Pn (− x) = (−1) n Pn ( x) の関係が成立する。
具体的に書き下すと、
P0 ( x) = 1
P1 ( x) = x
1
(3 x 2 − 1)
2
1
P3 ( x) = (5 x 3 − 3 x)
2
1
P4 ( x) = (35 x 4 − 30 x 2 + 3)
8
P2 ( x) =
となる。また
∫
∫
1
−1
1
−1
Pm ( x ) Pn ( x )dx = 0, ( m ≠ n )
{Pn ( x )}2 dx =
2
, (m = n)
2n + 1
が成立する。
(2)ルジャンドル陪関数
Pnm ( x) = (1 − x 2 ) m / 2
Pnm ( x) = (1 − x 2 ) m / 2
d m Pn
, (m ≥ 0, − 1 ≤ x ≤ 1)
dx m
[( n − m ) / 2]
∑
k =0
(−1) k (2n − 2k − 1)! n − m − 2 k
x
, (n ≥ m ≥ 0)
2k k ! (n − m − 2k )!
ここで、 x = cos θ である。具体的には、
P11 ( x) = (1 − x 2 )1/ 2 = sin θ
P21 ( x) = 3(1 − x 2 )1/ 2 x = 3sin θ cos θ =
3
sin 2θ
2
3
(1 − cos 2θ )
2
3
3
P31 ( x) = (1 − x 2 )1/ 2 (5 x 2 − 1) = (sin θ + 5sin 3θ )
2
8
15
P32 ( x) = 15(1 − x 2 ) x = (cosθ − cos 3θ )
4
15
P33 ( x) = 15(1 − x 2 )3 / 2 = 15sin 3 θ = (3sin θ − sin 3θ )
4
P22 ( x) = 3(1 − x 2 ) = 3sin 2 θ =
と書き下すことが出来る。
(3)球ベッセル関数
球ベッセル関数は、ベッセル関数
ν
⎛ x⎞
Jν ( x ) = ⎜ ⎟
⎝2⎠
( −1) m
⎛x⎞
∑
⎜ ⎟
m =0 m ! Γ( m + ν + 1) ⎝ 2 ⎠
∞
2m
を用いて、
jn ( x ) =
π
2x
J n +1/ 2 ( x )
にて与えられる。また、
( −1) m
⎛x⎞
⎜ ⎟
m =0 m ! Γ( m + 3 / 2) ⎝ 2 ⎠
∞
J 1/ 2 ( x ) = ∑
2 m +1/ 2
=
2 x sin x
π
x
であり、ベッセル関数の漸化式は、
d ν
x Jν ( x )} = xν Jν −1 ( x )
{
dx
d −ν
x Jν ( x )} = − x −ν Jν +1 ( x )
{
dx
となる。球ベッセル関数を書き下すと、
j0 ( x ) =
j1 ( x ) =
j2 ( x ) =
となる。
π
2x
π
2x
π
J 1/ 2 ( x ) =
sin x
x
J 3/ 2 ( x ) =
1 ⎧ sin x
⎫
− cos x ⎬
⎨
x⎩ x
⎭
cos x
⎛ 3
⎞ sin x
J 5/ 2 ( x ) = ⎜ 2 − 1⎟
−3 2
x
2x
⎝x
⎠ x
次に、球ベッセル関数の積分公式を導出する。
π
jn ( x ) =
2x
J n +1/ 2 ( x )
2x
∴ J n +1/ 2 ( x ) =
π
jn ( x ),
J n +1/ 2+1 ( x ) =
2x
π
jn +1 ( x )
これをベッセル関数の漸化式に代入する。
d −ν
x Jν ( x )} = − x −ν Jν +1 ( x )
{
dx
d − ( n +1/ 2)
x
J n +1/ 2 ( x )} = − x − ( n +1/ 2) J ( n +1/ 2)+1 ( x )
{
dx
⎫⎪
d ⎧⎪ − ( n +1/ 2) 2 x
2x
jn ( x ) ⎬ = − x − ( n +1/ 2)
j ( x)
⎨x
dx ⎪⎩
π
π n +1
⎪⎭
d −n
x jn ( x )} = − x − n jn +1 ( x )
{
dx
x − n jn ( x ) = ∫ {− x − n jn +1 ( x )}dx
(4)球面調和関数
球面調和関数 Yn ,m (θ , ϕ ) は、
Yn ,m (θ , ϕ ) = Pn ,m (cos θ )Φ m (ϕ )
と表現される。ここで、
2n + 1 ( n − m )! m
Pn ( x ),
2 ( n + m )!
1
exp(imϕ )
Φ m (ϕ ) =
2π
Pn ,m =
m ≤ n, n = 0,1, 2, "
で、m は n ≥ m ≥ 0 を満たす0または自然数である。また、
Yn ,− m (θ , ϕ ) = ( −1) m Yn*,m (θ , ϕ )
の関係が成立する。
球面調和関数は、球面上におけるフーリエ波と見ることができるので、通常のフーリエ波からの
類推から、球面調和関数も正規直交系を形成するであろうことは容易に理解できる。事実、
(Yn ,m , Yn ',m ' ) = ∫
2π
0
π
dϕ ∫ Yn*,m (θ , ϕ )Yn ',m ' (θ , ϕ ) sin θ dθ = δ n ,n 'δ m ,m '
0
の関係が成立する。また、 l ≠ n の時、
∫
2π
0
π
dϕ ∫ Yl* (θ , ϕ )Yn (θ , ϕ ) sin θ dθ = 0
0
である。
2.平面波の球面波分解
平面波は球面波によっても表現することができ、 r の極座標を ( r, θ , φ ) および k の極座標を
( k , Θ, Φ ) とすると、変換式は、
⎧ Pn ( x ) Pn ( X )
⎫
∞
⎪
⎪
exp(ikr ) = ∑ i n (2n + 1) jn ( kr ) ⎨ +2 ( −1) m P m ( x ) P m ( X )(cos mφ cos mΦ + sin φ sin Φ ) ⎬
∑
n
n
n =0
⎩⎪ m
⎭⎪
と与えられる。ここで、 x = cos θ , X = cos Θ にて定義され、 jn , Pn と Pnm は、それぞれ球ベッセル
関数、ルジャンドル関数およびルジャンドル陪関数である。
3.双極子-双極子相互作用のフーリエ変換
格子点上に規則的に配列した双極子を考える。格子定数を a とし、原点からの距離を r とする。
空間距離を a で規格化し、
R=
r
, R = ( X ,Y , Z )
a
と置こう。実空間における双極子-双極子相互作用は、ルジャンドル関数を用いて、
D( R ) =
3Z 2 − R 2
1
= 3
5
R
R
⎛ Z2
⎞ 1
1
2
2
2
⎜ 3 2 − 1⎟ = 3 ( 3cos θ − 1) = 3 ( 3 x − 1) = 3 P2 ( x )
R
R
⎝ R
⎠ R
と表現できる。ここで P2 ( x ) =
1
(3x 2 − 1) である。なお双極子-双極子相互作用にルジャンドル関数
2
P2 ( x ) が現れる理由は、クーロンポテンシャル場の多重極展開を思い浮かべると理解しやすい。
さて D ( R ) の離散フーリエ変換は、
D ( k ) = ∑ D ( R ) exp(ikR )
R
と定義される。これを連続近似および極座標表示して、
D( k ) = ∫ D (r ) exp(ikr )dr = ∫
r
∫ ∫φ D(r) exp(ikr)r
r θ
と表現しよう。ここで、 r の下限を a と置くと、
D(k ) = ∫
∞
a
π
2π
0
0
∫ ∫
となる。これに、
D(r ) exp(ikr ) r 2 sin θ drdθ dφ
2
sin θ drdθ dφ
⎧ Pn ( x ) Pn ( X )
⎫
∞
⎪
⎪
exp(ikr ) = ∑ i n (2n + 1) jn ( kr ) ⎨ +2 ( −1) m P m ( x ) P m ( X )(cos mφ cos mΦ + sin φ sin Φ ) ⎬
n
n
n =0
⎪⎩ ∑
⎪⎭
m
2
D(r ) = 3 P2 ( x )
r
を代入し、 x = cos θ ,
D(k ) = ∫
∞
a
π
2π
0
0
∫ ∫
dx = − sin θ dθ を考慮して整理すると、
D (r ) exp(ikr ) r 2 sin θ drdθ dφ
⎡
⎧ Pn ( x ) Pn ( X )
⎫⎤
2
⎢∞ n
⎪
⎪⎥ 2
P2 ( x ) ⎢ ∑ i (2n + 1) jn ( kr ) ⎨
=∫ ∫ ∫
⎛ cos mφ cos mΦ ⎞ ⎬ ⎥ r sin θ drdθ d φ
m m
m
a 0 0 r3
⎪ +2∑ ( −1) Pn ( x ) Pn ( X ) ⎜ + sin φ sin Φ ⎟ ⎪ ⎥
⎢ n =0
⎝
⎠ ⎭⎦
⎩ m
⎣
∞ π 2
P2 ( x ) [ −5 j2 ( kr ) P2 ( x ) P2 ( X )] sin θ drdθ
= 2π ∫ ∫
a 0 r
∞ 1 1
= −20π ∫ ∫
j2 ( kr )[ P2 ( x )]2 P2 ( X ) drdx
−1 r
a
∞1
= −8π ∫
j2 ( kr ) P2 ( X ) dr
a r
∞
π
2π
を得る。さらに球ベッセル関数の積分公式
x − n jn ( x ) = ∫ {− x − n jn +1 ( x )}dx
x −1 j1 ( x ) = − ∫ {x −1 j2 ( x )}dx
−
j1 ( x )
j ( x)
=∫ 2
dx
x
x
を用いて、
∞
j2 ( kr )
dr
a
r
⎧ ∞ j ( kr )
⎫
kdr ⎬
= −8π P2 ( X ) ⎨ ∫ 2
a
kr
⎩
⎭
D( k ) = − ∫ 8π P2 ( X )
⎧⎪ ⎡ j1 ( x ) ⎤ ∞ ⎫⎪
j1 ( ka )
= −8π P2 ( X ) ⎨ ⎢ −
⎬ = −8π P2 ( X )
⎥
x ⎦ ka ⎭⎪
ka
⎩⎪ ⎣
となる。したがって、 D( k ) は初等関数にて、
D( k ) = −8π P2 ( X )
j1 ( ka )
= −4π
ka
と表現される。さらに、
⎧⎪ ⎛ k Z ⎞ 2 ⎫⎪ sin( ka ) − ka cos( ka )
⎨3 ⎜ ⎟ − 1⎬
( ka )3
⎪⎩ ⎝ k ⎠
⎪⎭
sin x − x cos x
x3
1
= 3 (sin x − x cos x )
x
⎤
⎡ x2 x4 x6
⎤⎫
1 ⎧⎡
x3 x5 x7
= 3 ⎨⎢ x −
+
−
+ "⎥ − x ⎢1 −
+
−
+ "⎥ ⎬
3! 5! 7!
2! 4! 6!
x ⎩⎣
⎦
⎣
⎦⎭
=
1
x3
⎧⎡
⎤ ⎡
⎤⎫
x3 x5 x7
x3 x5 x7
x
x
−
+
−
+
−
−
+
−
+ "⎥ ⎬
"
⎨⎢
⎥
⎢
3! 5! 7!
2! 4! 6!
⎦ ⎣
⎦⎭
⎩⎣
=
1
x3
⎧⎡ x3 x5 x7
⎤ ⎡ x3 x5 x7
⎤⎫
−
+
−
+
+⎢ −
+
− "⎥ ⎬
"
⎨⎢
⎥
⎦ ⎣ 2! 4! 6!
⎦⎭
⎩ ⎣ 3! 5! 7!
⎡ 1 x2 x4
⎤ ⎡ 1 x2 x4
⎤
= ⎢− +
−
+ "⎥ + ⎢ −
+
− "⎥
⎣ 3! 5! 7!
⎦ ⎣ 2! 4! 6!
⎦
1 ⎛1 1⎞
⎛1 1⎞
= + ⎜ − ⎟ x2 + ⎜ − ⎟ x4 + "
3 ⎝ 5! 4! ⎠
⎝ 6! 7! ⎠
であるので、 ka → 0 の極限(長波長近似)では、
4π
D( k ) ≅ −
3
⎧⎪ ⎛ k Z ⎞2 ⎫⎪
⎨3 ⎜ ⎟ − 1⎬
⎪⎭
⎩⎪ ⎝ k ⎠
となる。
4.物体の表面形状の特殊関数による展開
固まり状の物体の表面形状は、球面調和関数の重ね合わせによって
∞
f (θ , ϕ ) = ∑
n
∑
n =0 m =− n
f n ,mYn ,m (θ , ϕ )
のように表現することが出来る。係数の f n ,m は、先の直交性から、
f n ,m = (Yn*,m , f ) = ∫
2π
0
π
dϕ ∫ Yn*,m (θ , ϕ ) f (θ , ϕ ) sin θ dθ = ∫ Yn*,m (θ , ϕ ) f (θ , ϕ )d Ω
0
Σ
と計算できる。ここで、 d Ω = sin θ dθ d ϕ である。
しかし、ルジャンドル関数自体も直交関数系であるので、ルジャンドル関数を用いて、物体の外
形を表現した方が、議論が簡単になる場合がある。特に物体形状の空間対称性が良い場合にはルジ
ャンドル関数を用いた方が良い。例えば、
r = r0 + ∑ ai Pn (cos θ i )
i
とすることが出来、和の添え字 i は、1つのルジャンドル関数の主軸に対応している。具体的に、
立方体形状を表現する場合、n=4 とし、i については軸を 90°変えた3軸に取り、ai = a < 0 とすれ
ばよい。すなわち、
r = r0 + aP4 (cos θ1 ) + aP4 (cos θ 2 ) + aP4 (cos θ 3 ) = 1 − 0.1{P4 (cos θ1 ) + P4 (cos θ 2 ) + P4 (cos θ 3 )}
である。
5.形状関数について
以上の手法を用いて、球の形状関数を求めて見よう。まず球の半径を a とし、z軸に垂直な面で
切られる球の面積を S とすると、
S = π ( a 2 − z 2 ) = π a 2 (1 − cos2 θ ) = π a 2 (1 − x 2 )
⎛ 1
⎞ 2
= π a 2 ⎜ 1 − {2 P2 ( x ) + 1}⎟ = π a 2 {1 − P2 ( x )}
3
⎝
⎠ 3
である。なお、ここで、 P2 ( x ) =
3x 2 − 1
1
, ∴ x 2 = {2 P2 ( x ) + 1} を用いた。形状関数 Q ( k ) は、
2
3
Q ( k ) = ∫ exp(ikr )dr
r
a
= ∫ S (θ )dθ
−a
D(k ) = ∫
=∫
a
0
a
π
2π
0
0
0
∫ ∫
π
2π
0
0
∫ ∫
exp(ikr ) r 2 sin θ drdθ d φ
⎡
⎧ Pn ( x ) Pn ( X )
⎫⎤
⎢∞ n
⎪
⎪⎥ 2
⎢ ∑ i (2n + 1) jn ( kr ) ⎨ +2 ( −1) m P m ( x ) P m ( X ) ⎛ cos mφ cos mΦ ⎞ ⎬ ⎥ r sin θ drdθ d φ
n
n
⎜ + sin φ sin Φ ⎟ ⎪ ⎥
⎪ ∑
⎢ n =0
⎝
⎠ ⎭⎦
⎩ m
⎣
⎡∞
⎤
r 2 ⎢ ∑ i n (2n + 1) jn ( kr ) Pn ( x ) Pn ( X ) ⎥ drdx
0 −1
⎣ n =0
⎦
∞ 1 1
= −20π ∫ ∫
j2 ( kr )[ P2 ( x )]2 P2 ( X ) drdx
−1 r
a
∞1
= −8π ∫
j2 ( kr ) P2 ( X ) dr
a r
= 2π ∫
a
∫
1
を得る。さらに球ベッセル関数の積分公式
x − n jn ( x ) = ∫ {− x − n jn +1 ( x )}dx
x −1 j1 ( x ) = − ∫ {x −1 j2 ( x )}dx
−
j1 ( x )
j ( x)
=∫ 2
dx
x
x
を用いて、
∞
j2 ( kr )
dr
r
⎧ ∞ j ( kr )
⎫
kdr ⎬
= −8π P2 ( X ) ⎨ ∫ 2
a
kr
⎩
⎭
D( k ) = − ∫ 8π P2 ( X )
a
⎧⎪ ⎡ j ( x ) ⎤ ∞ ⎫⎪
j ( ka )
= −8π P2 ( X ) ⎨ ⎢ − 1 ⎥ ⎬ = −8π P2 ( X ) 1
x ⎦ ka ⎪⎭
ka
⎪⎩ ⎣
となる。したがって、 D ( k ) は初等関数にて、
j ( ka )
D( k ) = −8π P2 ( X ) 1
= −4π
ka
と表現される。さらに、
⎧⎪ ⎛ k Z ⎞ 2 ⎫⎪ sin( ka ) − ka cos( ka )
⎨3 ⎜ ⎟ − 1⎬
( ka )3
⎪⎭
⎩⎪ ⎝ k ⎠