「太陽の国」の憂鬱 - みずほ総合研究所

海外通信 from London
「太陽の国」の憂鬱
2015年のスペインは+3.2%の高成長
5 月下旬、陽光あふれるスペインの首都マドリッ
ドを出張で訪れた。くもりがちなロンドンに住む身
としては、うらやましいばかりだ。夏には太陽と海を
求め、英国・ドイツ・フランスなどから大勢のリゾー
ト客が訪れる。海外からの旅行客数は年間6,000万人
を超え、世界第 3 位を誇る。インバウンド観光客の増
加を目指す日本にとっても、観光客を受け入れるた
めのインフラ整備などの面で参考にできる点がある
かもしれない。
経済もこのところ力強い景気回復が続いており、
2015年の実質GDP成長率は+3.2%に達した。
問題山積のスペイン労働市場
「太陽の国」が抱える悩み
スペイン政府にとっては、当面、景気回復を維持
し、失業率を低下させることが優先課題となる。と同
時に正社員と非正規労働者の格差を縮小し、若年層
の高失業を解消するための労働市場改革を進めなけ
ればならない。続けて少子高齢化対策として、労働参
加率を引き上げる施策、必要なら移民の受け入れ拡
大を検討することになるだろう。
首都マドリッドは明るく落ち着いた雰囲気で、と
ても失業率が 20%の国とは思えなかった。しかし、
スペイン労働市場には課題が山積しており、かじ取
りを誤れば、若者の不満が強まるリスクをはらんで
いる。
「太陽の国」が内に抱える悩みは深い。
みずほ総合研究所 ロンドン事務所
1%台の成長にとどまったユーロ圏の中で際立っ
た回復をみせたスペインだが、債務危機時の落ち込
みが大きかったため、経済活動の水準はまだ高くな
い。特に失業率は、最悪時の 26%台から低下したと
はいえ、今年1〜3月期時点で21.0%とユーロ圏平均
の 10.3%を大きく上回っている(図表)。なかでも若
年層(25歳未満)の失業率は、いまだに40%超の水準
にある。
加えて、雇用の質の悪化、それに伴う労働市場の二
極分化も問題視されている。欧州債務危機後、企業が
正社員雇用に慎重になったこともあり、パートタイ
ム比率が継続的に上昇している。やや緩和されたと
はいえ厳格な解雇規制に守られた正社員と、非正規
労働者の格差拡大という問題は、日本の労働市場と
共通する。
日本との類似性はそれだけではない。出生率が女
性1人当たり約1.3人(2014年時点)と低いため、人口
減少・高齢化が今後、かなりのスピードで進むことが
予想されているのだ。
所長 山本康雄
[email protected]
●スペインの失業率
(%)
60
50
46.5
40
30
21.0
20
失業率
10
0
2008
若年層(25歳未満)
失業率
09
(資料)
スペイン統計局
12
10
11
12
13
14
15
(年)
16