グリーンレポートNo.560(2016年2月号) 現地レポート 長崎県 発 福岡県 元気なアスパラガス産地が 多収栽培に向けて 土壌診断の新指標を検討中 アスパラガスは、九州の暖かさを存分に活かせる野菜 佐賀県 熊本県 長崎県 多収圃場の土壌ほどCECが高く、緩衝能を発揮 として期待されている。長崎県では、アスパラガスの土 壌診断基準が耐塩性の弱いいちごと同じだが、アスパラ 多収圃場の土壌では、CECが30me/乾土100g以上と ガスの根は耐肥性が強く、施肥量も多いため、土壌診断 高く、しかも収量との間に高い正の相関関係が認められ の結果は現行の基準とは乖離している事例が多くみられ、 た(図− 1 ) 。これは、塩基含量が高い割に肥料の過剰 産地から新たな指標の策定が求められている。 害がないことの要因と思われる。pHは5.5内外で、現行 そこで、長崎県では、集中的な土壌調査が行われ、現 基準に比べてやや低かった。塩基飽和度は、カリ飽和度 在、多収栽培をめざす土壌診断新指標の策定が進められ が 8 %内外で基準を超えるものの、石灰飽和度、苦土飽 ているので、その概要を紹介する。 和度は基準値内であった。このことも、CECの増加によ るものと考えられている。 土壌診断新指標の方向性 長崎県内に分布する赤色土と黄色土の土壌は腐植含量 に乏しいため、堆肥などの有機物を補給して緩衝能を増 強することが望まれている。土壌pHの酸性化については、 適正なpHと必要な石灰含有量の双方を考慮した検討が 望まれる。 【全農 九州営農資材事業所 肥料農薬課】 表−1 現行の土壌診断基準 可給態 塩基 無機態 pH EC リン酸 飽和度 窒素 (H2 O) (mS/㎝) (㎎/100g) (%) (㎎/100g) 石灰 飽和度 (%) 苦土 飽和度 (%) カリ 飽和度 (%) 6.0∼6.5 50∼70 10∼15 2∼5 1.0以下 20以下 20∼100 60∼80 ▲アスパラガスの生育状況 生育ステージを揃えて一斉に土壌分析 5,000 2012∼2014年に離島を含めた県内全域で、採土時期 4,500 年間収量 ︵㎏ / a︶ を11∼12月の休眠期に揃え、深さ10㎝の上層部土壌を対 象とした土壌診断が行われた。現在も、精度向上のため に分析点数を増やしており、最終的な指標が決定される 見込みである。 4,000 3,500 10 低収圃場の土壌は塩基含量が高い 3,000 2,500 低収圃場の土壌では、pHが4.0以下と低く、ECが1.5mS /㎝以上で高い、可給態リン酸含量が700㎎以上と著し 2,000 く高い、塩基含量[石灰(1,000㎎以上) 、苦土(150㎎ 20 以上) 、カリ(35㎎以上) ]がいずれも高いことがわかっ 30 40 50 のCEC (me/乾土100g) 上層土 (深さ10㎝) た。 図−1 多収圃場のCECと年間収量(2013年) 20 60
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