2016年2⽉1⽇ ⽇本株ファンドマネージャーの視点 『量的緩和と今回の緩和と上がる株の関係』 ※このレポートでは、⽇本株ファンドマネージャーが注⽬しているトピックなどを毎週お届けします。 先週の⽇本株市場は久々に⾼揚感に包まれました。世界的な資源安、エネルギー企業の信⽤不安、中国経済の失速懸念、株 安と1⽉に⼊り世界の市場は⼤荒れでした。しかし⾦曜⽇に⽇銀の「マイナス⾦利付き量的・質的⾦融緩和」導⼊で、⼀気 に円安、株⾼へ動きました。ただ⾦曜⽇の⽇中⾜を⾒ると、発表直後⼤きく⽇経平均株価は上昇しましたが10分ほどで下 落に転じ、⼀時⼤幅安となりました。いろいろ解説はありますが、おそらく市場は12⽉の⾦融政策決定会合直後の株価下 落が頭にあったのだと思います。そしてすべての準備預⾦をマイナス⾦利にしない仕組みを知って、緩和効果が薄いと思っ た可能性を感じます。 これも今回の緩和が、緩和といえば量的緩和という近年の⾦融政策を⾒てきた市場参加者には、⽬新しい政策変更だからだ と思います。教科書的にいえば⾦融政策の⼿段といえば、①⽇銀が⺠間銀⾏へ貸し出す「基準貸付利率」を操作する貸出政 策、②⽇銀が国債などを売買し貨幣量を変化させる公開市場操作、③当座預⾦の法定準備率を操作する⽀払準備率操作、の 3種類でした。ところが⾦利が低位に張りつき、⾦融政策の⼿段が狭まったため、法定準備をはるかに超える当座預⾦の量 を増加させる量的緩和が⾦融政策のメインとなりました。 今回の「マイナス⾦利」はこの量からある意味「利率」の変化という、本流への回帰といった側⾯を持つ⾦融政策の変更で す。この点から過去の2013年、2014年の⿊⽥バズーカとは違った株価の動きも想定すべきと考えています。 過去の緩和時、まず買われたのが不動産やその他⾦融など伝統的な緩和メリット株でした。ところが2013年以降の量的緩 和の際、これらセクターの株価はいったん上がりましたが、すぐに他のセクターをアンダーパフォームしはじめました。私 の解釈では、じゃぶじゃぶのところにお⾦を増やしても、不動産投資が増えるわけではないことが原因だと思います。リー マンショック前は量的緩和すると不動産株は上昇しました。ところがショック後は、⼤きく変わったことがあります。それ は⾦融機関の貸し出し態度です。グローバルで⾦融規制が強まり、リーマンショック前後で貸⼿も借⼿も考え⽅が⼤きく変 わったのです。そのため量的緩和しても⽇本の不動産会社への貸し出し量は前ほど変化せず、その結果業績の変化がおきる こともなく、⼀瞬ついたバリュエーションプレミアムも剥落していったのではないかと考えています。 今回の「マイナス⾦利」導⼊は⽇銀への超過準備を増加させることで稼げなくなる点で、銀⾏は貸し出しを増やす必要に迫 られます。負債側の預⾦はこれまでのトレンド通り増加傾向が予想され、少なくても増加分は貸し出しを⾏う必要がでてき ます。 普通に考えると、⼩⼝の貸出しを積み上げてリスク分散をしたいところですが、やはり⼤⼝で借⼊需要のある、不動産やノ ンバンクは魅⼒的な存在に⾒えるのではないでしょうか。もしそれらの会社が借⼊を増やし利益を増やすなら、株価も上昇 すると思われます。 ■東証セクター別騰落率(2015年12⽉末) 右表は東証17業種分類を過去3年間のパフォーマ ンスの良い順番に並べたものです。好パフォーマ ンスは内需ディフェンシブが上位を独占し、悪い ものにはグローバル景気循環のマイナス影響を受 ける資源、鉄鋼、商社などがずらりと並びます。 ただ内需企業ながらパフォーマンスの冴えないの が、REITと不動産です。ファンダメンタルは 空室率や賃料も改善傾向にあり悪くありません。 それでも⼈気がないのは、その増益分を⼈気の低 下(バリュエーションの低下)が上回っていたた めです。 今回の⾦融政策の変化で間違いなく、投資のトレ ンドが変わります。この⼤変化を⾒切るためには、 ⽬線を上げて俯瞰しなければなりません。ミクロ の企業の業績変化だけを追うだけでなく、マクロ の基礎に⽴ち返って⼀度復習してみるのも、悪く ないかもしれません。 期間 1年 3年 TOPIX17(情報通信・サービス他) 18.6% 115.2% TOPIX17(医薬品) 32.6% 109.6% TOPIX17(⼩売) 28.8% 109.5% TOPIX17(⾷品) 26.7% 105.3% TOPIX17(運輸・物流) 17.7% 95.4% TOPIX17(素材・化学) 13.1% 94.6% TOPIX17(建設・資材) 15.0% 86.7% TOPIX17(電機・精密) 0.3% 82.5% TOPIX17(⾃動⾞・輸送⽤機器) 3.4% 80.8% TOPIX 9.9% 80.0% TOPIX17(⾦融(除く銀⾏)) 11.6% 74.6% TOPIX17(電⼒・ガス) 11.6% 62.2% TOPIX17(機械) -5.3% 61.9% TOPIX17(銀⾏) 9.5% 58.0% TOPIX17(東証REIT指数) TOPIX17(商社・卸売) TOPIX17(不動産) TOPIX17(鉄鋼・⾮鉄) TOPIX17(エネルギー資源) -7.9% 56.8% 4.4% 41.6% -3.2% 39.3% -11.8% 33.6% -4.4% 9.8% 株式運⽤部 永⽥ 芳樹 出所:東京証券取引所 ■当資料は情報提供を⽬的として⼤和住銀投信投資顧問が作成したものであ り、特定の投資信託・⽣命保険・株式・債券等の売買を推奨・勧誘するもの ではありません。■当資料は各種の信頼できると考えられる情報源から作成 しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。■当 資料に記載されている今後の⾒通し・コメントは、作成⽇現在におけるレ ポート作成者の判断に基づくものであり、事前の予告なしに将来変更される 場合があります。■当資料内の運⽤実績等に関するグラフ、数値等は過去の ものであり、将来の運⽤成果等を約束するものではありません。■当資料内 のいかなる内容も、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。 大和住銀投信投資顧問株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第353号 加入協会 一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会
© Copyright 2024 ExpyDoc