日銀のマイナス金利をサプライズで終わらせない

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アジア
2016年2月1日
日銀のマイナス金利をサプライズで終わらせない
日銀の予想外のマイナス金利導入は、これまでのところ、リスクオンを促す結果となっていますが、マイナス金利には
副作用も懸念され、市場金利の低下、円安や株高などプラス効果が持続できるかに注目しています。
マイナス金利導入後:長期国債金利が過去
最低を更新、買いオペの結果は順調
日本銀行が2016年1月29日に公表した「マイナス金利付き量
的・質的金融緩和」を受けて日本の国債市場は上昇(利回り
は低下)傾向が維持されています。例えば、2月1日の現物債
市場では長期金利の指標となる新発10年物国債(341回債)
利回りは、日本相互証券が公表した1月29日(午後3時時点
の参照値)より低下して取引が開始されています。
どこに注目すべきか:
マイナス金利、量的金融緩和、買いオペ
日銀の予想外のマイナス金利導入は、これまでのところ、リ
スク資産への投資が活況となる状況を示唆する「リスクオン」
を促す結果となっています。ただし、マイナス金利には副作
用も懸念され、市場金利の低下、円安や株高などのプラス効
果が持続できるかを見る上で、副作用の抑制が鍵になると見
られます。
足元の日本国債利回りの状況を見ると、残存9年程度より短
い国債の利回りがマイナスで、残存6年以下の国債利回りは
概ね日銀が示唆したマイナス金利(-0.1%)近辺での利回りと
なっています(図表1参照)。日銀がさらにマイナス幅を拡大
するならば、利回りはさらに低下することも想定されます。
出足好調の日銀のマイナス金利導入が単なるサプライズで
終わってしまうのか、それとも効果が続くのか見る上で、次の
点に注目しています。
1点目は、金融機関の収益への懸念です。日銀が公表した参
考資料でマイナス金利の副作用を探すと金融機関の収益に
悪影響を及ぼす面があることが示唆されています。市場金利
の低下で貸し出しの利ざやが縮む影響は、特に国内業務が
多い金融機関で影響が懸念されます。なお、金融機関が日
銀に預けた残高(過剰準備)に対し金利0.1%が付与されてい
ましたが、これが突然ゼロやマイナスになると影響が大きす
ぎるため日銀はすでに積み上げた残高(基礎残高)の金利は
変えず、所要準備額に相当する残高等はゼロパーセント、こ
ピクテ投信投資顧問株式会社
れらを上回る政策金利残高分をマイナス金利とすることで、金
融機関の収益への配慮が示されています。
2点目は、量的金融緩和への影響です。日銀は長期国債の
購入を(従来どおり)続けると説明していますが、例えば、マイ
ナス金利となっても市場が日銀の国債買い入れオペに応札を
続けるかに注目しています。最悪、金融機関から申し込まれ
た金額が入札予定額に達しない事態が懸念されます。そもそ
も、日銀が保有する日本国債の対GDP( 国内総生産)比率は
今後も購入を続けた場合、米国やユーロ圏に比べて大幅に
高まることが懸念されるなど潜在的に量的金融緩和政策に対
する(中期的な)不安は高いだけに注視は必要と思われます。
なお、2月1日の買いオペは順調に消化されています。
3点目は、仮に今後マイナス金利の効果で日銀の当座預金か
らマネーが流出(シフト)した場合、どのように実体経済を回復
させるのか明確でない点です。日銀の資料では金利の適用
が3段階の階層構造であることや、被災地金融機関支援オペ
などが不利とならない配慮などは記されているものの、景気
への道筋は明確とは思われません。もっとも、景気回復を導く
需要の喚起は日銀頼みでは不十分で政治などの重要性が増
した格好で、日銀以外からのサプライズが必要と思われます。
図表1: 日本国債年限別利回り(2時点)と差異
(時点:2016年1月25日、2016年2月1日(日本時間午後1時頃))
bp 0
0.3 %
0.2
-5
0.1
-10
0.0
-0.1
-0.2
-0.3
利回り変化(右軸)
※1bp=0.01%
2016年2月1日 利回り(左軸)
2016年1月25日 利回り(左軸)
-15
-20
1年 2年 3年 4年 5年 6年 7年 8年 9年 10年
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
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