見 本 - 日本比較臨床医学会

ネコの AB 式血液型における各抗原の出現頻度について
蒔田莉菜1,古関純也1,宇田川智野1,鄭 英和1,落合和彦1
呰上大吾 2, 盆子原 誠 3, 土田修一4, 近江俊徳1
日本獣医生命科学大学
1
3
獣医保健看護学1基礎部門, 2 臨床部門
獣医臨床病理学教室, 4 比較細胞生物学教室
【目的】ネコ AB 式血液型は、A 型、B 型、AB 型の 3 つの表現型が存在する。A 型ネコは、
血漿中に抗 B 抗体を、B 型ネコは抗 A 抗体の自然抗体を保有しており、血液型不適合輸血は
重篤な溶血性輸血反応を惹起する危険性が高い。そのため、クロスマッチおよび血液型検
査が適正な輸血を行うために欠かせない。このように、血液型の研究は獣医学・獣医保健
看護学領域においても重要であるため、我々は、2011 年よりネコ血液型に関する基礎研究
の一環として本研究室で血液型判定を行ってきた。そこで、今回当該血液型システムの各
種抗原頻度および品種の違いについて報告する。
【材料および方法】本学獣医臨床病理学教室より供与されたネコ血液検体のうち 348 例(純
見
本
粋種、雑種、不明含む:2013 年 5 月現在)について、ラピッドベット‐H 猫血液型判定キ
ット(共立製薬)を用い、血液型を判定した。
【結果および考察】ネコ 348 例の血液型を判定した結果、A 型は 330 例(94.8%)、B 型は
18 例(5.2%)、AB 型は 0 例(0%)であった。この調査結果は、各国(同一複数地域)の
15 集団(解析例数 61 例から 1895 例)のネコの B 型の頻度 0%から 26.3%の範疇にあった。
なお、調査個体のうち純粋種 124 例、雑種 160 例、不明 64 例の A 型血液型は、それぞれ 114
例(91.9%)
、157 例(98.1%)、59 例(92.8%)。B 型は、10 例(8.1%)、3 例(1.9%)、5
例(7.8%)であった。B 型のネコが検出された 10 品種の B 型出現頻度は、アビシニアン
(14.3%:7 例中 1 例)、 アメリカンショートヘア(6%:33 例中 2 例)
、スコティッシュ
フォールド(12.5%:16 例中 2 例)、日本猫(9%:22 例中 2 例)、ペルシャ(33.3%:6 例中
2 例)、トンキニーズ(100%:1 例中 1 例)であった。我々の調査例数は少ないものの、海
外での調査においても、アビシニアン、アメリカンショートヘア、スコティッシュフォー
ルド、ペルシャにおける B 型出現頻度は 11%から 20%と報告されおり、比較的 B 型が多い
とされる品種は、我が国で飼養されているネコにおいても同様の傾向があるのではないか
と思われた。
今後は、さらに調査例数を増やすとともに、近年報告されたネコ AB 式血液型遺伝子の解析
を進めて行きたいと考えている。