証券化リサーチノート 第 127 号 2016 年 1 月 18 日 連絡先: 調査部長 江川 由紀雄 [email protected] (03) 6880-6035 住宅金融支援機構 MBS 月次第 105 回債 発行額は今年度でこれまで最大の 1993 億円、当面は高水準の発行継続見込み 住宅金融支援機構 MBS 月次第 105 回債の発行額は 1993 億円と今年度入り後最大の額と なった。裏付資産の 65%が 2015 年 12 月の実行分である。所得税・住民税の住宅ローン控除 (12 月末の借入残高が基準になる)との関係で、例年 12 月は住宅ローンの貸出実行が多くなる 月であり、MBS 発行額の平準化を行う起債運営を行いつつも、季節的な貸出ラッシュをある程度 反映させた額となった。年度累計の発行額は昨年度対比約 1.5 倍のとなっているが、この大きな 要因は、2014 年 12 月の金融経済対策の伴う【フラット 35】S の貸出金利引き下げ幅の拡充(当 初 5 年間または 10 年間年率 0.3%引き下げから 0.6%引き下げへの拡充)に伴う取扱高の増加 によるものであろう。金利引き下げ幅拡大は 2015 年 2 月 9 日実行分から始まったが、2016 年 1 月 29 日申込分で打ち切られ、それ以降の申込分については金利引き下げ幅は制度拡充前の 0.3%に戻る予定となっている。駆け込み申し込みも相当程度発生していると推測される。また、 住宅ローンは、申し込みから実行まで数か月のタイムラグを伴うため、当初 0.6%の金利引き下 げの対象となるローンは、今後、半年程度の間、多く実行が続くであろう。来年度入り後も当面は 今年度と同水準の規模の MBS の発行が続くものと予想される。 裏付資産の加重平均金利(WAC)は約 1.02%であるが、これは、たとえば、引き下げ幅拡大の 対処となるローンが含まれない第 94 回債の裏付資産の 1.28%に比べても大幅に低い水準にな っていることがわかる。第 105 回債裏付資産の最終加重平均最終金利も 1.57%と低い水準が 続いている。信用補完率は 19.4%となり、ここ数回の回号とほぼ同水準。 弊社予想期限前返済率は、2016 年 1 月 6 日(評価日)基準で、PSJ 8.15%、WAL は 9.03 年 となった。評価日時点での流通市場における 104 回債のイールドカーブスプレッド(YCS) 1を基準 とすると、クーポン予測値は 0.783%(予測値①)、同 IRR 2を基準とすると、0.778%(予測値②)、 104 回債条件決定時の YCS 3を基準とすると 0.772%(予測値③)となる。予測値に対する弊社 OAS は、それぞれ、30.0 bp、29.0 bp、28.4 bp となる。 1日本証券業協会に設置されている PSJ 予測統計値運営協議会による用法に準ずる。 2日本証券業協会による PSJ 平均値、日本証券業協会による売買参考統計値を用いて、PSJ キャッ シュフローモデルにより弊社が算出した IRR(内部収益率)。 3 PSJ 予測統計値平均値、価格 100 円を前提として PSJ キャッシュフローモデルにより弊社が算 出した YCS。 1 証券化リサーチノート 新生証券株式会社 調査部 図表 1 裏付けとなる信託債権概要 第 105 回月次債 第 104 回月次債 (単位) 当初融資額総額 247,561,140,000 197,680,410,000 円 当初融資額平均 27,793,998 27,470,874 円 融資残高合計 247,551,177,904 197,486,805,910 円 融資残高平均 27,792,880 27,443,970 円 融資件数(債務者ベース) 8,907 7,196 人 融資債権数(金利別債権ベース) 8,907 7,196 債権 平均当初融資期間 31.3 31.3 年 平均残存期間 31.3 31.3 年 平均経過期間 0 1 平均当初融資率 86.57 87.15 % 平均当初返済負担率 22.48 22.55 % 6,331,682 6,151,369 円 平均金利 1.02 1.06 % 債務者平均年齢(申込時) 40.1 40.0 歳 加重平均金利 1.02 1.06 % 加重平均残存年数 32.2 32.1 年 加重平均当初融資期間 32.2 32.2 年 0 1 ヶ月 平均経過期間(借換) 102 106 ヶ月 平均当初 LTV(借換) 76.34 78.03 % 平均当初返済負担率(借換) 19.04 19.82 % 95 99 平均年収(申込時) 加重平均経過期間 加重平均経過期間(借換) ヶ月 2 ヶ月 出所: 住宅金融支援機構公表情報を基に新生証券作成 図表 2 予測クーポン 新生モ デルC F( 新生モ デルPSJ予測値) 8.15% 9.030 PSJ予測値 W AL 予測クーポン 予測値① 評価日のセカンダリーマー ケット水準を基準(YCS) 0.783% 予測値② 評価日のセカンダリーマー ケット水準を基準(IRR) 0.778% 予測値③ 前回債の条件決定を基準 (YCS) 0.772% 国債利回り ( 第3 4 1 回1 0 年利 付国債) 0.240% PS Jモ デルC F( PSJ予測統計値平 均値) 8.49% 8.851 ローンチスプレッ ド Z- Spr e ad OAS YCS 54 30.8 30.0 35.5 54 29.8 29.0 34.9 53 29.2 28.4 34.3 評価日(1/7)のセカンダリーマーケットでの104回債のYCS水準 評価日(1/7)のセカンダリーマーケットでの104回債のIRR水準 104回債条件決定日の104回債のYCS水準 出所: 新生証券 2 証券化リサーチノート 図表 3 ヒストリカル YCS (bp) 新生証券株式会社 調査部 JGB ベース 日証協 PSJ・売買参考統計値(平均) PSJ モデル CF :各回号の残高加重平均 出所: 新生証券 3 図表 4 図表 4 ヒストリカル IRR (%) 日証協 PSJ・売買参考統計値(平均) PSJ モデル CF :各回号の残高加重平均 出所: 新生証券 3 証券化リサーチノート 新生証券株式会社 調査部 図表 5 発行額推移 6000 5000 4000 億円 3000 2000 1000 0 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 発行月 2007年度(機構月次:1~11回債) 2008年度(機構月次:12~22回債) 2009年度(機構月次:23~34回債) 2010年度(機構月次:35~46回債) 2011年度(機構月次:47回債~58回債) 2012年度(機構月次:59回債~70回債) 2013年度(機構月次:71回債~82回債) 2014度(機構月次:83回債~94回債) 2015度(機構月次:95回債~) 4 出所: 住宅金融支援機構公表情報を基に新生証券作成 図表 6 信用補完率および信用補完率に影響する主な属性 100% 35% 90% 30% 80% 25% 70% 60% 20% 50% 15% 40% 30% 10% 20% 5% 10% 0% 0% 信用補完率(右軸) 平均当初融資率 融資率90%超の割合 返済負担率30%超(右軸) 平均当初返済負担率(右軸) 年収300万円以下の割合(右軸) 公務員・会社員以外の比率(右軸) 出所: 住宅金融支援機構公表情報を基に新生証券作成 4 証券化リサーチノート 新生証券株式会社 調査部 図表 7 信用補完率と格付会社が想定するデフォルト率等 40% 0.8% 0.7% 35% 0.6% 30% 0.5% 25% 0.4% 20% 0.3% 0.2% 15% 0.1% 10% 0.0% 5% -0.1% 0% -0.2% 機構月次債 回号 信用補完率(左軸) S&P想定累積貸倒率 R%Iストレスシナリオ累積デフォルト率 エクセススプレッド目安(右軸) = [加重平均金利:当初] - [クーポン] 5 出所: 格付会社(R&I および S&P)公表情報を基に新生証券作成 図表 8 融資率(LTV) 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 機構月次債 回号 ~70% ~75% ~80% ~85% ~90% ~95% ~100% 出所: 住宅金融支援機構公表情報を基に新生証券作成 5 証券化リサーチノート 新生証券株式会社 調査部 図表 9 返済負担率(DTI) 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 機構月次債 回号 ~5% ~10% ~15% ~20% ~25% ~30% over 30% 6 出所: 住宅金融支援機構公表情報を基に新生証券作成 図表 10 平均当初 LTV および平均当初返済負担率(DTI) 95% 23.5% 23.0% 90% 22.5% 85% 22.0% 80% 21.5% 21.0% 75% 20.5% 70% 20.0% 平均当初LTV 平均当初返済負担率 出所: 住宅金融支援機構公表情報を基に新生証券作成 6 証券化リサーチノート 新生証券株式会社 調査部 図表 11 年収分布 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 機構月次債 回号 ~3M JPYen ~5M JPYen ~10M JPYen over 10M JPYen 出所: 住宅金融支援機構公表情報を基に新生証券作成 7 図表 12 地域分布 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 機構月次債 回号 北海道 東北 北関東 南関東 東京 東海 近畿 四国 中国 九州 南九州 北陸 出所:住宅金融支援機構公表情報を基に新生証券作成 7 証券化リサーチノート 新生証券株式会社 調査部 図表 13 融資種別分布 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 機構月次債 回号 マイホーム マンション 建売 都市居住再生 中古住宅 借換 マイホーム=マイホーム + 買取証券化支援建設 / マンション=マンション+優良分譲等+買取証券化支援購入(共同建) / 建売=建売住宅 + 買取証券化支援購入(共同 8 出所: 住宅金融支援機構公表情報を基に新生証券作成 図表 14 裏付債権の金利(WAC)と MBS クーポン 160 2.3% 140 2.1% 120 1.9% 100 1.7% 80 1.5% 60 1.3% 40 20 1.1% 0 0.9% 機構月次債 回号 MBS参照国債金利(bps) MBS ローンチスプレッド(bps) 加重平均金利(右軸) 加重平均最終金利(右軸) 出所: 住宅金融支援機構公表情報を基に新生証券作成 8 証券化リサーチノート 新生証券株式会社 調査部 本稿はストラクチャードファイナンス部・玉城晃子よる協力を得て作成した。 (調査部長 江川 由紀雄) 9 名称 :新生証券株式会社(Shinsei Securities Co., Ltd.) 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第95号 所在地 :〒103-0022 東京都中央区日本橋室町二丁目4番3号 日本橋室町野村ビル Tel : 03-6880-6000(代表) 加入協会 :日本証券業協会 一般社団法人金融先物取引業協会 一般社団法人日本投資顧問業協会 一般社団法人第二種金融商品取引業協会 資本金 :87.5 億円 主な事業 :金融商品取引業 設立年月 :平成 12 年 12 月 本書に含まれる情報は、新生証券株式会社(以下、弊社)が信頼できると考える情報源より取得されたものですが、弊社 はその正確さについて意見を表明し、または保証するものではありません。情報は不完全または省略されたものである ことがあります。本書は、有価証券の購入、売却その他の取引を推奨し、または勧誘するものではありません。本書は、 特定の商品やサービスの勧誘・提供を行う目的で作成されたものではありません。本書で言及されている投資手法や取 引については、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。また、これらの投資手法や取引について は、金融市場や経済環境の変化もしくは価格の変動等により、損失が生じるおそれがあります。本書に含まれる予想及 び意見は、本書作成時における弊社の判断に基づくものであり、予告なしに変更されることがあります。弊社またはその 関連会社は、本書で取り扱われている有価証券またはその派生証券を自己勘定で保有し、または自己勘定で取引する ことがあります。弊社は、法律で許容される範囲において、本書の発表前に、そこに含まれる情報に基づいて取引を行う ことがあります。弊社は本書の内容に依拠して読者が取った行動の結果に対し責任を負うものではありません。本書は 限られた読者のために提供されたものであり、弊社の書面による了解なしに複製することはできません。 信用格付に関連する注意 本書は、金融商品取引契約の締結の勧誘を目的としたものではありません。本書で言及ま たは参照する信用格付には、金融商品取引法第 66 条の 27 の登録を受けていない者による無登録格付が含まれる場 合があります。 9 著作権表示 © 2016 Shinsei Securities Co., Ltd. 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