Title Inducing High Function to Paper Yarn( 内容の要旨(Summary) ) Author(s) 村手, 宏隆 Report No.(Doctoral Degree) 博士(工学) 甲第343号 Issue Date 2008-03-25 Type 博士論文 Version URL http://repository.lib.gifu-u.ac.jp/handle/123456789/23528 ※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。 氏名(本籍) 学 位 の 種 類 村 手 博 士(工学) 宏 学位授与番号 甲第 学位授与日付 平成20年 専 攻 学位論文題目 号 343 3 25 月 日 環境エネルギーシステム専攻 InducingHighFunctiontoPaper協rn (紙繊維の高機能化) 神 光 信 彦寛志 橋富原 教 棚守 (副査) 授授授 (主査) 教教准 学位論文審査委貞 隆(愛知県) 教 授 炉 相 知 之 論文内容の要旨 村手氏の論文は新たなセルロース繊維である紙繊維の高機能化を、1)物理的、2)化学 的、3)複合化の3方法でおこなったものである。その内容を各章ごとに取りまとめると 以下の様である。 ノ Chapterl・ImprovementintheStretchitLgPropertyofPaperYirtLbyShapeMemoriヱatio ProducedwitbHigh一preSSureSteamTreatment (高圧水蒸気を用いた紙繊維の形状固定による伸縮性の付与) 第1章では紙繊維の高圧水蒸気処理による形状固定とその応用として紙織推へ伸縮性 の付与を行った。高圧水蒸気処理甚おいて処理温度を上昇させると、紙繊維の強度と伸度 は低下し、撚り固定度は上昇した。その強度と伸度の低下を防ぐために、紙繊維を水に浸 漬し前処理する方法(ウェット法)と0.28%のアンモニア水に浸漬し前処理する方法(ア ルカリウェット法)を試みた結果、アルカリウェット法が良好な物性値であった。そのた めアルカリウェット法で、170℃、2分にて紙繊維を高圧水蒸気処理した。その結果、未 処理紙繊維の強度が78%、伸度が100%保持でき、形状固定率が未処理晶は62%のとこ ろ、処理品は84%に高めることができた。 また、紙繊維に伸縮性を付与するためにマルチファイバー化(数本束ねた状態)し、撚 り数をかえたサンプルを作り、上記高圧水蒸気処理条件で形状記憶処理を行なった。その 結果、400回/mの撚りを入れ、形状固定を行づたサンプルで293%の伸度が得られ、官能 試験においても伸縮性が感じられる紙繊維を開発するを可能にした。 紙繊維の形状固定の機構を調べるため、Ⅹ線回折と固体MR測定を行い、高圧水蒸気 によるセルロースの結晶中の水素結合の組み換えが起こり、撚りを入れ収縮した形状で新 しく水素結合が形成され、かつ一部の非晶部が結晶化することにより、安定した固定がで き、紙繊維へ伸縮性の付与が可能となることを明らかにした。 -59- Chapter2・InducingAntibacterialFunctioninPaperyarnthrougbtheChemicalAdditionof VVesternRedCedarExtracts (ウェスターンレッドシダー高圧水蒸気蒸留液による紙繊維の抗菌化) 第2章ではWRCの精油成分は、主にツヤ酸やβおよびγツヤプリシンなどのトロボロ ン核などの7員環を有する成分であり、それらは抗菌性を有する。その成分の有効利用と 紙繊維の抗菌性付与による高付加価値化を目的に本研究を行なった。WRC蒸留液と紡織 維セルロースとをエステル反応させたものを、洗濯・乾燥させ、未結合成分の除去を行な うことで抗菌性紙織推ができた。その抗菌成分を調べるためにアルカリ加水分解し、精油 成分をGC・MSで分析した結果、紙繊維セルロースと結合した主成分がツヤ酸であり、抗 菌性能の発現は、ツヤ酸による機能と考えられた。更にツヤ酸を紙繊維セルロースに多く 結合させるために助剤の検討を行なった結果、1.4M塩化ナトリウムを助剤として用いた 時、ツヤ酸の結合量が多く、強い抗菌性が発現できる事を明らかにした。 WRCの精油成分の主成分であるカルポン酸を有するツヤ酸と、カルポン酸的な反応性 を示す水酸基を有するβ・ツヤプリシン(ヒノキチオール)の反応性をモデル実験で確認し た。カンファスルウォン酸を触媒とし、n・プチルアルコールとのエステル(エーテル)反 応を行った結果、ツヤ酸とのエステル反応物は多く確認できたが、β・ツヤプリシンとのエ ーテル反応物は少量しか確認できなかった。さらに、β・ツヤプリシンの反応性を調べるた めに、メチル化、アセチル化を行ない、β・ツヤプリシンの反応基である水酸基がカルポン 酸的性質のみならずこアルコール的性質も有することがわかり、β-ツヤプリシンの特異な 反応性を明らかにし、耐洗濯性を有し、実用的に使用できる抗菌性紙繊維の開発を行った。 Chapter3.TheNovelSoIventEbrWoolandtheIntroducingofExothermalFunctionto PaperlねrnbyCombinationoftheWateトSOlubleKeratin (新しいウールの溶媒とその水溶性ケラチンの適用による紙繊維への吸湿発熱性の導入) 溶融した尿素によって、ウールを150℃、20分で溶解できることをはじめて見出した。 そのウール溶解液中の尿素を除去するために透析し、ろ過することで水溶性ケラチンと非 水溶性ケラチンを得た。固体NMRのケミカルシフトからそれぞれのタンパク質の二次構 造がウールと水溶性ケラチンはα・ヘリックスとβ・構造の混在物、非水溶性ケラチンは大 部分がβ・構造物であることを明らかにした。 またその水溶性ケラチンの適用と紙繊維の高付加価値化を目的に、紙繊維布へ水溶性ケ ラチンの固定を行った。ケラチンを固定した紙繊維の布を28%から78%の湿度(30℃) のデシケ一夕一に移す際の吸湿時における発熱の経時変化をサーモグラフによる観察に よって未処理紙繊維布やウール布と比較した。その結果、ケラチンを付与した紙繊維布が、 未処理品に比べて3℃高い発熱性を有していることがわかり、これらの効果は約6分間 続き、未処理晶と比べてケラチンを付与した紙繊維に吸湿発熱保持機能の優位性がみられ た。その発熱機構は、ケラチンのアミノ基、カルポン酸基と水酸基の水和熱によるものと 考えられた。さらにケラチンと紙繊推とを化学結合させることによって、アルカリ洗剤に よる洗濯後においても、ケラチンの残存することを明らかにした。この研究成果は、毛髪、 ー60- 鶏羽、シルクの溶解にも適用が可能であり、ウールをはじめとする未利用動物性タンパク 質の有効利用への新しい展開が期待できる。 論文審査結果の要旨 村手氏の学位論文を棚橋雅彦、守富寛および紆相知之、神原信志の4名が査読審査し、 研究内容に新規性を有しており、紙繊維の高機能化に対して種々な方面から検討されてお り、十分価値のある論文であると評価した。またこの論文の元になる原著論文はいずれも 2名の、査読者を要する学術誌に2報掲載されており、いずれも価値ゐ高い論文であると 評価されている。3報目の論文に関しては特許の関係からまだ未投稿であり、博士論文の 内容としては評価したが、業績としては評価していない。すでに掲載済みの2報の原著論 文のみでも博士論文として十分価値のある論文であると評価した。以上のことより本論文 は岐阜大学工学研究科環境エネルギーシステム専攻の博士として十分な内容および新規 性を有していると判断した。 最終試験結果の要旨 学位論文の公聴会を2月14日に開催し、研究内容およびその経験・執権等を質疑応答に より審査した。原著論文お皐び博士論文のいずれも英語で記載しており、語学力も十分あ ると判断した。その結果村手氏は岐阜大学工学部環境エネルギーシステム専攻の博士とし て十分な資格を有していると判断した。 ー61-
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