< 第 56 回 静 岡 県 学 生 科学 賞 9 県 科 学教 育 振興 委 員 会 賞 > うき草の増え方パート3 ∼神久呂地区のうき草とその環境∼ 浜 松市 立 神 久 呂 小学 校 6 年 紫藤 理 沙 1 動機 私 は こ の 2 年間 、 「 ピグ ミ ーフ ロ ッグ ビ ッ ト」 と いう う き草 の 増 え方 に つい て 研 究 し て きた 。ピ グミ ー フロ ッ グビ ッ ト はま ず 根を 伸 ばし 、 葉 の数 を 増や す 。す る と 親 株 か らラ ン ナー が 伸 びて 子株 が生 ま れる 。 子株 も 根 を伸 ば し、 葉 の数 を 増 やす 。 子株 が 生長 す る と ラ ン ナー が 切れ て 、 子株 は独 立し 、 親株 と なる 。 こ れを 繰 り返 し 、ピ グ ミ ーフ ロ ッグ ビ ット の 数 は ど ん どん 増 える 。 さ らに ピグ ミー フ ロッ グ ビッ ト が 繁殖 す るた め には 、 太 陽と 生 き物 が いる 環 境 ・ 適 切 な水 温 (25℃ く らい)が 必要 で ある こ とも 分 か った 。 2 年 間 の 研 究を 通 し て、 水 にう か び弱 々 し く見 え るう き 草は 、 寒 さの 中 でも 生 き 抜 く こ とが でき る実 は とて も しん ぼ う 強い 植 物で あ るこ と を 知っ て 感心 し た。 で は 、 ほ か のう き 草は ど う だろ う。 私の 住 む神 久 呂地 区 は 自然 が いっ ぱ いで 、 美 しい 水 辺も あ る。 私 は 自 分 の 回り に は、 ど ん なう き草 があ る のか 、 環境 と う き草 に はど ん な関 係 が ある か に興 味 をも ち 、 調 べ て みる こ とに し た 。 2 方法 (1 ) 神 久呂 地 区で う き草 ま たは 水 草が 生 息 して い る河 川 や池 、 田 んぼ 、 水 路 な どを 探 す。 ( 2) 環 境 省 水 環 境 課が 作 成し た 「水 辺 の すこ や かさ 指 標」 を も とに う き草 が 生息 す る 河川や 池、 田 んぼ の 様 子を 調 べる 。 水辺 の す こや か さ指 標 のそ れ ぞ れ の 項 目を 点 数化 し 、 それ を レー ダ ーチ ャ ー ト図 に まと め るこ と で 「水 辺 のす こ やか さ 」 を 見 る 。 (3) その場所の水温や気温を調べるとともに、パックテストを使った簡易水質検査を行う。 調べ る のは p H 、C O D、 リ ン酸 、 ア ンモ ニ ウム 、 亜硝 酸 の 5つ で ある 。 (4 ) そ の場 所 の生 き 物調 査 をす る 。す ん で いる 生 き物 か ら水 質 判 定を 行 う 。 (5 ) 見 付 けた う き草 や 水 草 を本 や イン タ ー ネッ ト で調 べ 、環 境 と の関 係 を考 え る。 3 結果 ( 1 ) 神 久 呂地区 で う き草・ 水 草 が 生息 し て いる 河 川 や 池 、 田 ん ぼ を探す 。 神久呂地区には、東神田川、九領川、六間川、釜穴川、西の谷川、境川、郷堂川の7つ の川が流れている。ところがほとんどの川が整備され、コンクリートでおおわれているた め、川には植物が生えていない。また、川に近付けないところも多かった。その中で、実 際に川に入ることができたのは、東神田川と六間川、境川の3つだった。そこでこの3つ の川を調査することにした。池については、神ヶ谷町、大久保町には池があるが、どこも さくでかこまれて近付くことができなかった。神ヶ谷町や神原町、大久保町には広い田ん ぼがある。どの町の田んぼにも、うき草がたくさんあった。その中でも大久保町の田んぼ に隣接していた休耕田には、たくさんのうき草・水草があり、そこについて調べてみるこ とにした。調べた場所は次の5つである。A 東神田川上流 神明宮のところ(西山町) B 六間川起点(神原町)C 東神田川中流 日東橋のところ(神ヶ谷町) D 境川起 点( 神 ヶ谷 町 ) E 休 耕田 ( 大久 保 町 ) ( 2 ) 水 辺 の すこや か さ 指 標の そ れ ぞれの 項 目 を 点数 化 し 、それ を レ ー ダー チ ャ ート図にまと め る こ と で「 水 辺 のすこ や か さ 」を 見 る 。 -1- 神久 呂 地区 で 多く 見 られ た うき 草 ・水 草 水のすこやかさ指標(環境省水環境課指標による調査結果) 自然なすがた 5 4 3 地域とのつながり 2 ゆたかな生きもの 1 0 快適な水辺 水のきれいさ 東神田川上流 六間川起点 境川起点 休耕田 ( 3 ) ( 4 )( 5) 調べ た 所 コ ナ ギ・ ウ キク サ オ オフ サ モ 東神田川中流 パ ッ ク テ スト に よ る簡易 水 質 検 査 、水 辺 の 生き 物 調 べ 、うき 草 ・水草 調べ A 東神 田 川 B六間 川 C東 神 田川 上流 ( 西山 町 ) (神原 町) D境 川 中流 ( 神ヶ 谷) (神 ヶ 谷町 ) E休 耕 田 (大 久 保町) 気温 30℃ 30℃ 32℃ 30℃ 32℃ 水温 32℃ 32℃ 30℃ 24℃ 40℃ とう明 少し茶 色 とう明 とう明 水の と う視 度 泥が 沈 殿 にごっ てい る pH6.2 茶色 に にごり PH p H6.0 p H6.2 CO D 10m g/ L リン 酸 2 m g/ L 5m g/ L 0.2m g / L 0.2m g/ L 2 m g/ L アン モ ニウ ム 0 m g/ L 8m g/ L 0m g /L 0.5m g/ L 0 m g/ L 亜硝 酸 0.02m g/ L 1 m g/ L 0.1m g / L 0.05m g/ L 0 m g/L 川の 様 子 両岸 コンクリート 今まで 下水 道 両岸 コンクリート 両岸 コンクリート 水温 が お風呂 自然 が 豊か 。 だと思 って い 自然 が 豊か 雑草 に おお わ のよ う に高い 水も き れい 。 た。 動植 物 多い 。 れて い る。 うき 草 、水草 流れ が 速い 。 が多 い 。 スジ エ ビ オタマジャクシ 20mg / L 0m g /L 両岸、 川底 コンク 上流 よ り川 幅 水辺 の 生き 物 アメリカザリガニ リート が広 く 流れ が 水がく さい 。 ゆる や か。 タニ シ スジ エ ビ (水 質 階級 Ⅳ ) (水 質 階級 Ⅲ ) コオニヤンマのヤゴ コイ 、 ヤゴ 見付 け たう き 草 水草 メダカ p H6.2 p H6.2 0m g /L 100mg/ L (水 質 階級 Ⅱ ) (水 質 階級 Ⅱ) フナ ハグ ロ トン ボ ウキゴリ、 アメンボ オタマジャクシ ハグロトンボ、メダカ ハグ ロ トン ボ オオ フ サモ コナギ オオ フ サモ オオ カ ナダ モ ウキ ク サ ジュ ズ ダマ も類 ジュ ズ ダマ も類 アオ ウ キクサ カン ガ レイ コナ ギ ホソバミズゼニゴケ オモ ダ カ も類 イヌクログワイ -2- 4 考察 調 査 の 結 果 、水 草 や うき 草 のあ る 場所 に は いく つ かの 共 通点 が あ るこ と が分 か っ た 。 ① 川 の流 れ がゆ る や かな こ と。また は 田ん ぼの よ うに ほ とん ど 流 れが な い こ と。特 にう き(浮 漂植 物 )は 川 では 見 付 けら れ ない 。 ② 川 底が 石 や砂 、 泥 にな っ てい て 自然 の ま まで あ るこ と 。コ ン ク リー ト では だ め。 ③ 生 き物 が すん で い るこ と 。 ④ 水 辺に 植 物が 生 え てい て 、生 き 物が す め る環 境 があ る こと 。 ⑤ 水 質が 弱 酸性 か ら 弱ア ル カリ 性 であ る こ と。 ⑥ 川 の水 の アン モ ニ ウム や 亜硝 酸 の値 が 高 くな い こと 。 つま り 化 学肥 料 が多 く 川に 流 れ込ん でい な いこ と 。 意 外 に も 水 のき れ い さ( 透 明度 の 高さ ) と 水質 の 良さ は あま り 関 係が な く、 同 じ 東 神 田 川であ って も 、上 流 の水 質 が 悪い ( CO D の値 が 高 い) こ とに は おど ろ か さ れ た 。近 く に水 が わ き出て いる の にな ぜ だろ う 。 その 原 因を さ ぐっ て み ると 、 まず 住 宅が 近 く に あ る こと が 考え ら れ る。家 庭排 水 が流 れ 込ん で い るの だ ろう 。 さら に 調 べて み ると 、 農地 の 下 流 に わ き水 が 出る 場 所 がある 場合 は 、雨 に よっ て 農 地か ら 窒素 や リン な ど 、C O Dの 値 を高 く す る 物 質 が流 れ 込む 場 合 がある こと が 分か っ た。 私 は 東神 田 川の 上 流に 行 っ たと き 、川 の 水が と て も き れ いだ と 感じ た 。 それな のに ア メリ カ ザリ ガ ニ を見 付 けお ど ろい た 。 アメ リ カザ リ ガニ は 指 標 生 物 の中 の 水質 環 境 Ⅳ(大 変き た ない 水 )の 生 物 にぞ く する 。 「こ ん な に水 が きれ い なの に な ぜ 。 」 と思 っ たが 、 水 質検査 をし て みる と CO D の 値が 高 かっ た 。生 き 物 はち ゃ んと 分 かっ て い る の だ 。生 き 物の び ん 感さに 感心 さ せら れ た。 そ れ でも 東 神田 川 の場 合 、 中流 に いく と 水質 が 改 善 さ れ る。 そ れは 、 上 流で発 生し た よご れ がだ ん だ ん分 解 され て 、水 が き れい に なっ た から だ と 考 え ら れる 。 東神 田 川 には自 浄作 用 が働 く 環境 が あ ると 感 じた 。 川の よ ご れは 石 にく っ つい た り 、 川 底 に生 息 する 微 生 物が分 解し て くれ た りす る 。 そこ で 、川 底 に石 を し きつ め たり 、 よご れ を 食 べ て くれ る 微生 物 の すめる 環境 を 作っ た りす る こ とが 大 切に な る。 そ の ため に 、微 生 物の す み か と な る水 草 やう き 草 があっ たり 、微 生 物の 異 常繁 殖を お さえ て く れ る 生 き物 が いた り する 環 境 はと て も重 要 だ。東神 田川は、 その 環 境が 整 って い る とい え る。 境 川も 同 じ だ。 前 年度 の 研究 か ら 、 う き 草が 増 える た め には生 き物 が いる 環 境は と て も大 切 なこ と が分 か っ てい た が、 こ の研 究 に よ っ て 、神 久 呂地 区 に は、自 然の 生 態系 が 整っ た 川 とそ の 環境 が ある こ と が分 か り、 と ても う れ し く 思 った 。 5 感想 こ の 研究 を して み て 、わ た しが 一 番う れ し かっ た のは 、 自分 の 身 の 回 り に自 然 がい っ ぱ いの川 があ る と分 か った こ と だ。 東 神田 川 には 4 年 生の と き、 学 年全 員 で 生 き 物 探し に 行っ た こ とがあ った 。 その と き、 「 水 辺を 愛 する 会 」の 方 が 来て く ださ り 、魚 の と り 方 や 魚の 種 類に つ い て教え てく だ さっ た 。私 た ち がと っ た魚 の 中に 外 来 種の 魚 がい て 「こ れ は 肉 食 の 魚だ か ら、 も と もとこ の川 に すん で いる 魚 を 食い 殺 して し まう か も しれ な い。 調 べさ せ て ほ し い 。」 と 魚を 回 収 してい った 。 こう や って 東 神 田川 の 生態 系 を守 ろ う と活 動 して く ださ る 方 が い る おか げ で、 東 神 田川の 自然 は 守ら れ てい る と 確信 し た。 美 しい 川 を 守っ て いく そ のか げ に は 「 水 辺を 愛 する 会 」 や「水 神の 森 を守 る 会」 の よ うに 川 の生 き 物を 守 り 、す ば らし い 自然 を 暮 ら し に 生か そ うと 活 動 を続け る方 た ちの 努 力が あ る こと を 知っ た 。私 も 1 年生 か ら、 神 久呂 地 区 の ク リ ーン 作 戦に 参 加 してい る。 そ のと き 、東 神 田 川上 流 にあ る 神明 宮 の ごみ 拾 いを し たこ と が あ っ た 。私 は ただ 町 に ごみが なく な るこ と が気 持 ち よく て ごみ を 拾っ て い たが 、 この 研 究で ご み を 拾 う こと も 川を 守 る 大切な 活動 で ある こ とを 知 っ た。 私 は今 年 も、 そ し てこ れ から も 、ク リ ー ン 作 戦 への 参 加を 続 け ていこ うと 思 う。 そ して そ れ だけ で なく 、 川や そ こ にす む 生き 物 や植 物 を 守 る た めに 、 自分 に で きるこ とを 考 え、 実 行し て い きた い と思 う 。 -3-
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