リレー随想 日々感懐 患者の目から見たヘルスリサーチ 東海大学法科大学院 教授 宇都木 伸 医療に関わる法律学の領域(のみではないようだが)においては、保健医療者がいかに適正に 業務を行うかという視点(義務論・業務論)から、患者の権利が充分に守られるかという視点(権 利論)への変化、ということが20世紀最大のポイントといわれる。IC、QOL といったキーワー ドがこれをよく示している。むろん専門家は、自らの視点を捨ててしまっては専門家たり得ない。 ただ、どんなに患者のことを配慮した視点のつもりであっても、詮ずるところ自らの視点でしか なかったことを認めざるを得なかった、というところに現代の状況がある。 ヘルスリサーチは、あたかも自動車のクラッチがエンジンの稼働力を車軸に伝える接点である ように、医学・医療の成果が患者に結実する領域を対象とするらしい。そこに は独特の原理を持った専門領域があるわけではなく、関わる人すべてが、自分 の専門の畑から眺め・発言しそれを共通の財産にしてゆこう、という体のもの であるらしい。 そうであるとすると、もう少し患者・市民を巻き込んだヘルスリサーチとい うものがあって良いような気がする。アンケート調査の「対象」としてでなく、 むしろ研究を担い、方向付ける主体として。
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