超低周波音って幽霊? 中野有朋(音の話8- 2015/4) 超低周波音問題は、すでに解決されている問題であるが、未だに一部で、超低周波音が出 ている、人体に悪影響あり問題だ、などと騒がれている。 しかし、超低周波音が出る、問題だ、問題だと言っているだけで、問題になるような超低 周波音が本当に出ているのかは、全く明らかではない。出たというので調べてみても全く そうではない。 今、騒がれている超低周波音問題は、出る、出ると言って誰も見たことがなく、出たと言 っても違っていたという、幽霊問題と同じだ、などと言われているのはこのためである。 聞こえる音の場合、出ている音が止まった時、「音が出ていますか」と聞くと、「出てい ない」と言う。「どうして?」と聞くと、「音が聞こえないから」と言う。 聞こえる音の場合は、音が出ているか、いないかは、音が聞こえるか、聞こえないかとい う耳を通した我々の聴感によって判断される。音が出ているというのは、感覚的にでてい るということである。 それでは超低周波音の場合はどうだろう。出ているか、出ていないかを何で判断するのだ ろう。 超低周波音は聞こえない縦波であるから、出ていても誰にも聞こえない。しかしその音圧 レベルが非常に大きい場合に、人体に分布する振動受容器を通して圧迫感や振動感として 人体に感知されることが知られている。そこで超低周波音の場合は出ているということは、 人体に感知されるということ、つまり体感で判断されるということになる。出ているとは、 音波の場合と同様に、感覚的に出ているということなのである。したがって出ていても音 圧レベルが小さく感知されない場合は出ていないということである。 筆者は長年、超低周波音問題に係わってきたが、超低周波音が感知されたのは、特殊な環 境で過去50 年間に2 回、生活環境においては今まで一度もない。 出ている、出ていると言っている人達は実際に超低周波音を感知して言っているのであろ うか。 聞こえる音の場合、我々の耳を通して聞こえる音波の最小可聴値の大きさは、よく知られ ているように音圧レベル0 ㏈である。0 ㏈を超えると聞こえるが、0 ㏈以下は聞こえない。 超低周波音の場合は、我々の体に感知される最小の大きさ、即ち最小可覚値の大きさは、 ISO規格により、音圧レベル100 ㏈である。100 ㏈を超えると人体に感知されるが、100 ㏈ 以下は感じられない。 音圧レベル80 ㏈の超低周波音が出ていると言っても、100 ㏈以下であるから、人体には 感知されず、出ていないのである。レベルの数値が大きいので、この点が理解されず、大 きな低周波音が出ていると思ってしまう。 以前、報道ステーションで報道された伊方町の風力発電装置の超低周波音問題で、周波数 1Hz、70 ㏈の超低周波音で人体に悪影響あるなどと報道されたが、これなどは、全くの誤 りである。 我々の生活環境には、レベルの低い感知されない超低周波音は至る所に存在しているが、 感知され、人体に悪影響ある超低周波音など存在しないと言ってよいのである。これは理 論的にも証明されていることでもある。 超低周波音は、まさに幽霊、と見て間違いのないところである。
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