私がまだ小さかったころ、おばあちゃんは元気でした。前住んでいた家は、今の家よりは小さ いけれど長いろうかがあって、たたみの上でくつろぐことができました。みかんやバナナ、ぼん たんの木がある庭には、小さな小屋が建っていました。小屋からはいつも、 「トン、トン、トン。」 と音が聞こえてきます。おばあちゃんがはたを織っている音です。 私は毎日おばあちゃんと、はた織りをするための糸をまく作業をしていました。家の前は、大 きな道路が無かったので、はた織りの音はひびきました。私は、その音がリズムよく聞こえるの でおもしろくてずっとおばあちゃんといっしょにいました。 でも、五年生の夏休み、私たちはおばあちゃんとおじを残して、今の家に引っこしました。 目の前には道路があって、窓からは住宅が見えました。おばあちゃんがはたを織る音の代わりに、 車の走る音や、子どもの声が聞こえてきます。私は少しさみしい気持ちになっていたので、引っ こしてからもおばあちゃんの家によく行っていました。 ある日弟たちとおばあちゃんの家の庭にある小屋に行くと、織り機はどこにもありませんでし た。おばあちゃんは、年をとって私よりも身長が小さくなりました。病気がひどくなり、病院に入 院しました。だからはた織りをすることができなくなり、織り機をあげてしまったのです。 おばあちゃんはその後何ヵ月かして退院しました。それからも何回か入退院を繰り返してい ます。 私はおばあちゃんに早く元気になてもらいたいです。そして、私ももう一度おばあちゃんとい っしょに、 「トン、トン、トン。」 と音を出し、はた織りをしたいです。 おばあちゃんとのはた織り楽しみだな。
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