「特別支援教育」分科会 「小学校、中学校、高等学校の連携(1年次)」 テーマ 栃尾地域での具体的な連携を目指した取組 (分科会参加人数34人)発表者3人含む 1 昨年度までの取組と今年度以降の取組 県立教育センター 小野 英明 指導主事 ・第1~3回「高等学校における特別支援教育の推進」(文部科学省指定校及び先進校の取組) ・第4回「つなぐ、つながる特別支援教育」(小・高・特の先進事例に学ぶ) ・第5~7回「中・高のしなやかな連携を考える」(新発田市胎内市地域) ・過去の経緯を踏まえ、今年度は、小・中・高の連携に関する取組として、長岡市栃尾地域を取 り上げた。(県立栃尾高等学校の現状として、多様な生徒(総合学科)、定員割れが生じてい る、特別支援教育に関する取組の遅れがあること。今年度実践力向上研修等として、小野指導 主事が職員向け研修会、生徒向け講演会を行ってきたこと。職員向け研修では、対応の仕方や 考え方、システムの構築についての提案をし、学校として取り組めるところから始めてもらっ たこと。)現段階では、小学校から中学校へは、確実な情報の引継ぎがあり、小学校からのフ ォローがある。中学校から高校へは、「中高連携シート」の活用前調査や意見交換をし、高校 の特別支援教育コーディネーター(以下、特支Coと略す。)が中学校の授業参観を行った。 高校としては、実態把握、情報交換会、「アセス」の実施、「生徒支援データファイル」の活 用、小・中の特支Coが高校の校内研修会や講演会参加などをすることで、顔を合わせた情報 交換が日常的に行える状況になってきた。 ・来年度に向けて、中学校区の小中連携強化、実践が必要。「栃尾地区小中高特支Co会議(仮)」 の開催、高校の「出口」を意識した実践、「栃尾モデル」の洗練と発信を考えている。 2 実践発表 (1) 県立栃尾高等学校 南雲 徹 教諭 (H26年度特別支援教育コーディネーター専門研修受講者) 「県立栃尾高校の取組」 ・今年度1年生の出身地域割合(栃尾地区47%、見附地区33%、 旧長岡市地域20%)。中高の連携を、栃尾地域だけでなく、見附 ・旧長岡市地域まで広げられるといい。 ・特別支援教育推進委員会はあるが、特支Coとの組織内の役割分担が明確になっていないた め、学校全体としての取組を進めづらい。 ・今年度は、「中高の連携」と、「生徒の状況把握と情報の共有化」を中心に取組を行った。 ・中高の連携:「中高連携シート」の作成と活用も含めて、中高特支Co間で情報交換(中学校 訪問)を行った。小中特支Coの高校校内研修会への参加。秋葉中学校教員及び「あきば学 級」生徒対象授業参観・学校説明会の開催。 ・生徒の状況把握と情報の共有化:新入生対象情報交換会の開催、「アセス」の実施、「生徒 支援データファイル(参考:長岡明徳高校)」による生徒情報の共有化。 ・校内体制づくり:現在は保健環境部が主体となり、校内研修会と生徒向け講演会等を開催。 ・校内職員研修会等で理解が深まったが、どこまで支援したらいいのか?という質問も出た。 (2) 長岡市立秋葉中学校 峰村 恵利子 教諭 (H25年度特別支援教育コーディネーター専門研修受講者) 「特別支援教育コーディネーターとして見つめたビフォーアフター」 ・特支Co1年目(H24年度):実態を客観的に把握する雰囲気は 作れたが、個人レベルでの実践で、学校全体を動かす力もスキルも なく、相談できる仲間もいないため、孤独感が強かった。 ・特支Co2年目(H25年度):特支Co専門研修の受講と小中連 絡会での「発達障害啓発ポスター作成」全戸配布。次年度に向けての特別支援学級の教育課 程の改編(市教委、管理職の理解と助言)により、多様な学びの場づくりが進んだ。臨床心 理士資格を持つ養護教諭の転入によりスクールカウンセラーのよりよい活用ができた。発達 障害通級指導教室担当者との連携を図ることができた。 ・特支Co3年目(H26年度):管理職の理解と協力、他校で特支Coを経験した職員の転 入もあり、校内委員会の活性化、全校体制の整備等、周りの協力を得ながら特支Coとして 本格的なスタートとなった。 ・特支Coは、何をどうすればいいか?悩んでいる人が多い。具体的な方策を得られる場づく りは大切だと実感した。小中連絡会が特支Coの相談の場になるといい。課題や悩みを打ち 明け、具体的方策を話し合えると、救われる先生がいるはず。 (3) 実践発表③長岡市立栃尾東小学校 古田島 恵津子 教諭 (2年前に発達障害通級指導教室が開設。特別支援教育コーディネー ター専門研修の講師) 「小中の発達障害通級指導から考える通常学校で取り組むべき課題」 ・通級指導教室が設置され、利用したことで、通級指導教室を理解し てもらえた。秋葉中学校区職員を対象にUDL研修を行ったこと で、職員の意識や認識が変わった。 ・通級指導教室利用の主訴の内訳として、小学校では、授業参加の課題が多いが、指導により ほぼ全員が改善される。中学校では、学力とコミュニケーションの課題が多い。行動面が改 善されても学力的な落ち込みや集団参加が困難な場合は就学相談(特別支援学級への在籍異 動)を検討する。 ・自閉症スペクトラムの児童生徒は、地道な練習や繰り返しが苦手であるため、小1・2の頃 に宿題をうまくできなかったりやらなかったりすることを見過ごしていることが多い。読み 書き計算、授業態度、集団行動の習得がよければ、集団適応もよくなる。これを土台として、 コミュニケーションや集団行動への支援が行える。さらに、自己理解を深める支援へとつな がる。 ・中学校の課題として、学習支援のほかに、学習障害や対人トラブル、不安・緘黙、不登校な どの課題が多くなり、問題そのものも重くなる。 ・早くからの通級指導教室利用の場合は、その後の適応状況がよい。それぞれの段階で、「こ こまでやって送り出そう」ということがはっきりしているとよい。 ・問題の先送りを防ぐ方略として、①各発達段階における支援が必要な具体的な判断基準の明 確化と支援内容の明確化・周知徹底(ひらがなが読めるか、一定時間座っていられるか等) ②就学10か月前のプレ学習スキルの有無や通級指導教室での支援が必要と思われる児童生 徒、特別支援学級での支援が必要と思われる児童生徒の判断基準の明確化③通級指導教室や 特別支援学級での支援内容の明示、支援内容の多様性や質の向上等が考えられる。 3 質疑応答、意見交換 ・高校から中学校へ、中学校から小学校へ「やるべきこと、身につけ ておくべきこと」を示してほしい。 ・入学するまでは知ることができるが、その後どうなったかを知るこ とができない。その後のことや姿を共有できるといい。 ・保護者が持っている「すこやかファイル」の情報の共有が必要。 ・「中高連携シート」に保護者は入っていないが、今後保護者も入れ るといい。この「中高連携シート」と個別の教育支援計画とは異な るものなので、今後検討が必要。 ・小中は進んでいると思っていたが、今回のように1から始めていたのはすごい。どうしていい かわからない状況だったり、素人がやっていたりするので「やれるところからでいいんだよ」 と言ってくれると安心する。 ・個々の学校や対応する人によって異なってくる。 ・高校は履修と修得の関係から、義務教育とは違うということで、どこまで何をやったらいいの か?が分からない。→「障害を理由とする差別の解消の推進」を考えると、できないとは言っ ていられない。 4 参加者からの感想 ・今まさに試行錯誤しながら小・中・高の連携の質を高めていく取組に大変感動しました。 ・これからこの視点で連携することの必要感を感じました。また、地域での連携を中学校区で参 考にしたいと思いました。 ・特別支援教育が義務教育において多くの課題を克服しながらも進んでいることがよくわかりま した。高校の教員の意識をもっと高めていく必要があると感じました。 ・学校で生かせる取組を数多く紹介していただきました。やれるところから少しずつ実践してい こうという気持ちになったことが最大の収穫でした。 ・「小・中・高のつながり」まではだいぶ形ができつつありますが、「高」の次の「大学、社会」 とのつながりが今後もっと大切になると思います。支援の必要な子どもたちが、社会参加し、 自立していくためには、あきらめないことが大切ですね。
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