Title Author(s) Citation Issue Date Type 宗教経験論と脱文脈化 : シュライアマハー『宗教につい て』をめぐって 深澤, 英隆 一橋社会科学, 7(別冊): 97-124 2015-03-26 Departmental Bulletin Paper Text Version publisher URL http://hdl.handle.net/10086/27126 Right Hitotsubashi University Repository 一橋社会科学 第7巻別冊〈特集:「脱/文脈化」を思考する〉 2015年3月 [要旨] 宗教経験論と脱文脈化 ―シュライアマハー『宗教について』をめぐって― 深澤 英隆 シュライアマハーの『宗教について』 [1899]は、さまざまな意味で宗教思想史上の画期をな す業績である。同書においてシュライアマハーは、それまでキリスト教的伝統において、 「神の 経験的認識」 (cognitio dei experimentalis)としてキリスト教的文脈に埋没していた経験概念を、 キリスト教的文脈から切り離して論じた。またシュライアマハーにとって第一義的に問題であっ たのは、キリスト教でもキリスト教的神でもなく、「宗教」という一般概念で表される生の領域 であった。そこでは宗教の概念が、キリスト教から決定的に切り離されて脱文脈化されていると 言うことができる。しかしこうした一方で、これらの脱文脈化の操作は、シュライアマハーにとっ ては同時にキリスト教の新たな形での正当化の試みでもあった。その意味で、宗教や宗教的経験 の理念は、シュライアマハーによってキリスト教の伝統へと再文脈化されることになる。『宗教 について』にはこのように、近代における宗教伝統の脱文脈化/再文脈化の複雑な動態をうかが うことができる。 − 125 −
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