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物語り論的アプローチによる自由意思擁護論の再検討 :
諸コンテクストはそもそも/どの程度統合されねばなら
ないのか?
井頭, 昌彦
一橋社会科学, 7(別冊): 167-189
2015-03-26
Departmental Bulletin Paper
Text Version publisher
URL
http://hdl.handle.net/10086/27123
Right
Hitotsubashi University Repository
一橋社会科学 第7巻別冊〈特集:「脱/文脈化」を思考する〉 2015年3月
[要旨]
物語り論的アプローチによる自由意思擁護論の再検討
―諸コンテクストはそもそも/どの程度統合されねばならないのか?―
井頭 昌彦
本論文では自由意思と決定論を巡る古典的な哲学的問題に対する、物語り論的アプローチによ
る解決の吟味検討を行う。そのための足がかりとして、まず第一節において、野家啓一の物語り
論による自由意思擁護論の再構成を行う。第二節では、野家の論証の問題点として、ある行為を
必然化する原因の同定不可能性はその行為の必然化を妨げるものではないこと、および、野家が
指摘できているのはある行為を必然化する原因の同定不可能性であって、そのことが仮に示され
たとしても、当該行為が必然化されていないことを示したことにはならないということをそれぞ
れ指摘する。上記の分析を踏まえた上で、第三節では、物語り論者が行為の必然化を回避するた
めにとりうる方策を模索し、その過程で物語り論による自由意思擁護戦略一般が抱える致命的難
点を指摘する。物語り文の主張可能性条件は、言及されている過去の出来事だけでなく、出来事
群を繋ぐプロットもまた、《現在受容されている法則を含めた現在入手可能な証拠リソース》と
整合的であることを要請する。そして、この「受容されている法則」の内に物理法則が含まれる
なら、それとの整合性要求によって、因果関係を物語り相対化することで物理主義的統合を回避
するという物語り論者の戦略は失敗に終わるのである。物語り論による自由意思擁護論に対する
本論文での診断結果は、この致命的難点を回避する唯一の選択肢は《物語り横断的/文脈横断的
な様相概念の適用を拒否する》というものだが、この道は様相概念についての更なる吟味検討を
要する、というものである。最後に、第四節において、特集のテーマである「脱/文脈化」と本
論の検討結果との関係について説明を行う。
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