Title Author(s) Citation Issue Date Type 難しく危険なコミュニケーション : ネパールのプロテス タントの間で観察された不信の言説 丹羽, 充 一橋社会科学, 7(別冊): 17-37 2015-03-26 Departmental Bulletin Paper Text Version publisher URL http://hdl.handle.net/10086/27129 Right Hitotsubashi University Repository 一橋社会科学 第7巻別冊〈特集:「脱/文脈化」を思考する〉 2015年3月 [ 要旨 ] 難しく危険なコミュニケーション ̶ネパールのプロテスタントの間で観察された不信の言説̶ 丹羽 充 ネパールのプロテスタントの間では、コミュニケーションにおいて、お互いが不誠実である可 能性を見出させる不信の言説が流通している。それは、お互いの発話や行為に対する解釈を方向 付けたり提供したりするという意味で、コミュニケーションを文脈化している。本稿では、まず、 不信の言説がこうした意味においてコミュニケーションの文脈として作用する様態を明らかにす る。 また、不信の言説は、もう一つ異なった意味でもコミュニケーションを文脈化している。より 厳密には、コミュニケーションを文脈化しているのは不信の言説そのものではなく、むしろ不信 の言説が広く流通しているという事実の方である。この事実は、実際のコミュニケーションにお いて、自分の発話や行為が不信の言説に基づいて解釈されてしまう可能性を示唆している。それ だけでなく、相手もまた、相手自身の発話や行為が不信の言説に基づいて解釈されてしまう可能 性を考慮に入れていることをも示唆している。コミュニケーションに臨む際には、それらの可能 性を引き受けねばならない。本稿の後半部では、不信の言説が通しているという事実が、このよ うにして再帰性を高め、その結果、コミュニケーションを難しく危険なものへと仕立て上げてい く様態を描き出す。 − 39 −
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