法学部 140 回講演会 2016 年 9 月 30 日 三くだり半の世界―ものの見方・考え方 髙木 侃 (法学部元教授) 離縁状の多く(4 通に 3 通)が、三行半に書かれたので、離縁状のことを「三くだり半」 と俗称されています。徳川時代、幕府法『公事方御定書』下巻では、離縁状は夫から妻へ交 付するもので、妻はこれなくして再婚すると「髪を剃り、親元に相帰す」と規定され、妻は 離縁状を貰わないと再婚できなことはよく知られており、夫が妻を一方的に離婚できた、夫 の「追い出し離婚(法制史では「夫専権離婚」という) 」といわれています。しかし、夫も 妻へ離縁状を交付した証拠なく再婚すると「所払」の刑罰が科されました。だから夫は妻に 離縁状を渡しながら離縁の証拠に領収書(「返り一札」という)をもらう場合もあったので す。 離縁状に書かれた離婚理由のなかで、最も多く、代表的離縁状とされる「我等勝手につき」 があります。これを夫が勝手気まま(自由)に妻を離婚できたと理解するか、「勝手」は都 合として、離婚は夫の都合によった、つまり妻の所為(せい)ではないことを表明したもの と解するか、1つの資料をどう読み解くか。 また、最近、発見し、入手した離縁状の表題「休状」をめぐって、離縁状がなぜ三行半に なったのか。 「七去影響説」 (石井説)と「休書模倣説」 (髙木説)をめぐる学説についても、 解説します。さらに、所蔵する離縁状の原物、250 通余あるうち、10 通ほどご覧に供し、 学問・研究の楽しさ、面白さを感得していただけるように講義するつもりです。
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