日本株はまだ割高ではないという海外の評価(PDF;pdf

リサーチ TODAY
2015 年 3 月 25 日
日本株はまだ割高ではないという海外の評価
常務執行役員 チーフエコノミスト 高田 創
日経平均株価は15年ぶりに19,000円台を回復した。米国では利上げを控えて米株が高値もみあいにな
って神経質な状況が続くのとは対照的に、金融緩和が進む日欧株については堅調な推移が続いている。
みずほ総合研究所は、「日経平均株価2万円が視野に」と題するリポートを発表した1。下記の図表にあるよ
うに、アベノミクスが始まる前の2012年11月には8,000円台にあった日経平均株価は、2年余りの短期間で2
倍以上と大幅に上昇した。2014年に入ってからは秋口まで上値が抑制された展開が続いたが、2014年10
月31日の日銀の追加緩和を契機に日経平均株価は一気に高値を更新した。今年になってからの展開を
振り返れば、特に日本株の堅調さが目立つ状態にある。2月は先物による海外投資家の買いが株価上昇
に寄与しており、海外投資家は日本株に強気になっている可能性がある。海外投資家が日本株に対して
強気になった要因として、みずほ総合研究所は好需給、業績改善期待、日本企業の変化への期待の三つ
をあげた。海外投資家は、日本株が相対的に割安にあるとみているようだ。
■図表:日経平均株価推移
(円)
22,000
20,000
18,000
16,000
14,000
12,000
10,000
8,000
(年)
6,000
00
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
(資料)Bloomberg よりみずほ総合研究所作成
海外投資家が日本株に強気な要因の第一は需給の良さである。公的年金を中心にした年金のポートフ
ォリオの見直しが注目されているが、加えてその他の年金にも変化がみられる。また、従来のTODAYでもス
トーリーラインとしてきた運用者の「LED戦略」にあるように2、日銀も含め世界の中央銀行の金融緩和による
世界的な「金利水没」の影響で、投資家の運用資金が株式市場にシフトする動きが続くと展望される。第二
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2015 年 3 月 25 日
の要因は、日本企業の業績改善期待とそれに伴うバリュエーションの変化である。みずほ総合研究所では、
原油安と円安によって2015年のマクロベースで見た大企業の利益は3.8兆円押し上げられると試算してい
る。次の図表は、日米独のPERを示す。日本株のPERは歴史的にみても割安な水準にあること、米国と比
べても日本株は割安な水準にある。今後の業績見通しの上方修正を踏まえれば、さらに日本株の上昇余
地も生じうる。
■図表:日米独のPER推移
80
(倍)
日本
70
米国
ドイツ
60
50
40
30
20
10
0
90
92
94
96
98
00
02
04
06
08
10
12
14
(年)
(注)各国主要株価指数の 12 カ月先予想PER。
(資料) Datastream よりみずほ総合研究所作成
第三は、海外投資家が日本企業への変化の兆しを感じていることである。例えば、海外投資家は安倍政
権の成長戦略に沿って行われている日本企業のコーポレートガバナンスへの取り組みが本格的だと認識
し始めている。また、日本の企業行動にも変化が生じていることも評価されつつある。これまでのキャッシュ
を溜め込む行動から、M&Aの増加等キャッシュの活用に向けた変化が生じたこと、リストラ一辺倒からベア
にも前向きな動きが生じたことが評価されているのだ。TODAYでも「ベアがブル」になったと指摘したが 3、
海外投資家は日本企業の着実な変化を意識している。こうした着実な変化は筆者が月初にシンガポール
を訪問した時にも意識させられた点であった4。
今年になってからの日本株の上昇スピードが速いことで、一部には過熱感もある。ただし、ここで見た要
因を勘案すれば、日本株がグローバルで見て割高とまで言い切れないだろう。しかも、世界的な金融緩和
のなか、日米欧の相対関係のなかでも日本株が海外投資家から見直しされやすい面が多いのではないか。
また、これだけの異例な金融緩和の下では、株式市場の水準感を底上げする必要もあるだろう。
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武内浩二 「日経平均株価 2 万円が視野に」(みずほ総合研究所 『みずほインサイト』 2015 年 3 月 16 日)
「金利『水没』、金融機関戦略は LED に集約」(みずほ総合研究所 『リサーチ TODAY』 2015 年 2 月 24 日)
「今年の転換は、『ベアがブル』になったこと」(みずほ総合研究所 『リサーチ TODAY』 2015 年 3 月 24 日)
「シンガポール出張メモ:日本への関心高まり、訪日客増・投資増」(みずほ総合研究所 『リサーチ TODAY』
2015 年 3 月 12 日)
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