イスラエル:国会選挙でリクードが勝利(2) イスラエル選挙

2015 年 3 月 20 日
No.275
イスラエル:国会選挙でリクードが勝利(2)
イスラエル選挙管理委員会は、3 月 18 日までに国会議員選挙の開票作業はほぼ終了した。
17 日の投票終了後、即日開票が行なわれ 18 日朝までに大勢が決まった。その後、兵士、囚人、
在外勤務の外交官などが事前に投票した約 23 万票の開票作業が行なわれた。その結果、リク
ードが 1 議席増の 30 議席、メレッツも 4 議席から 5 議席になった。反対にシャスは 7 議席か
ら 6 議席になり、
「統一アラブ・リスト」も 1 議席減の 13 議席になった。3 月 18 日、大統領
府は各政党党首に書簡を送り、首班指名の協議を 22 日から開始すると伝えた。ネタニヤフ首
相はすでに組閣協議を始めたと報道されているが、大統領が 25 日に公式な開票結果を受け取
り、首班指名をした後に、正式に組閣が開始される。組閣の期間は 28 日間で、最大 14 日延長
することができる。ネタニヤフ首相は、数週間で安定政権を作ると発言している。
2015 年選挙結果
政党名
リクード
イスラエルベイテヌ
「ユダヤの家」
クラヌ(新党)
極右・右派計*(1)
2013 年選挙
2015 年選挙
42
30
6
8
10
54
イェーシュ・アティド
「シオニスト・ユニオン」
メレッツ
カディマ
中道・左派計*(1)
19
21
6
2
48
11
24
5
0
40
シャス
統一トーラー・ジュダィズム
宗教政党計*(1)
11
7
18
7
6
13
12
120
67.77
34
13
120
72.3
25
「統一アラブ・リスト」
計
投票率*(2)
参加政党
31
11
*(1)政治的区分はおおまか、*(2)2015 年投票率は暫定
「シオニスト・ユニオン」のヘルツォグ党首は、野党に留まると明言しており、リクードと
「シオニスト・ユニオン」の大連立の可能性は低い。クラヌのカハロン党首は、ネタニヤフ内
閣に財務相として入閣する意向だと報道されており、ネタニヤフ首相が極右・右派及び宗教政
党による新内閣を組閣する可能性が高い。
対外関係では、すでに米国のオバマ政権が厳しい対応をしている。選挙から 2 日後の 19 日
にネタニヤフ首相に選挙での勝利を祝う電話をしたオバマ大統領は、首相に直接、米国の中東
和平政策を見直すことを伝えたと報道されている。また同大統領は、イランとの包括的な核交
渉を進めることも伝えた。ネタニヤフ首相は、18 日に米国の複数のテレビ局と会見し、選挙直
前に自分の任期中はパレスチナ国家を実現させないと述べたことについて釈明し、2 国家構想
支持を表明した 2009 年のバアル・イラン大学の演説から自分の立場に変化はないとした。し
かし、米国はネタニヤフ首相の説明を受け入れておらず、首相は 2 国家構想を否定したと理解
する立場を変えていない。
評価
世論調査の予想に反してリクードが 30 議席を獲得して勝利したことが注目されているが、
第 2 党の「シオニスト・ユニオン」が 24 議席を獲得したことも重要である。リクード主導の
内閣が倒れた場合には「シオニスト・ユニオン」が組閣できる体制ができており、かっての労
働党とリクードによる 2 大政党時代に近い形になった。4 党の寄り合い政党である「統一アラ
ブ・リスト」が、選挙戦の最中に分裂することなく選挙を戦い抜き、第 3 党の位置を占めた。
これは前例のないことであり、イスラエル・アラブ政党に対する極右・右派政党からの反発が
強まるであろうが、彼らの国会での発言力は強まるだろう。また物価高や住宅費・家賃高騰に
対する中産階級の不満は、同問題を重視する右派政党クラヌに 10 議席、中道政党イェーシュ・
アティドに 11 議席を与えた。経済社会問題に、次期内閣がどう対処するかも内政上の焦点で
ある。
中道政党を含まない可能性が高い次期ネタニヤフ政権は、前内閣以上に右寄り・内向きの内
閣になるだろう。国際社会とのさらなる摩擦は避けられない。2 国家構想によるパレスチナ問
題の解決構想を明確に否定したと見なされつつあるネタニヤフ首相に対する米国及び国際社
会、パレスチナの対応は、以前とは異なる次元でいっそう厳しくなるだろう。
『ニューヨーク・
タイムズ』紙(18 日)のトーマス・フリードマンは、
「Netanyahu Will Make History」と題す
るコラムで、2 国家構想によるパレスチナ問題の解決を許さないネタニヤフ首相は、1 国家解
決構想の父としてイスラエルの歴史上の大物になろうとしていると酷評した。フリードマンは、
イスラエルが、非民主主義のユダヤ国家(パレスチナ人が差別される国)あるいは民主主義の
非ユダヤ国家(パレスチナ人が国民の多数を占める国)になることへの強い懸念を表明した。
(中島主席研究員)
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