KAMIYAMA Reports「高金利国の債券を買う意味」

2015年3月
04
高金利国の債券を買う意味
チーフ・ストラテジスト
神山 直樹
●高金利国の債券を為替ヘッジなしで保有する時のリターンは高い傾向に
●これはリスクの報酬で、ボラティリティと関連するとの実証分析がある
●ファンダメンタルズやセンチメントを見極めて機動的に対応することで、
バリュー投資のような成果を獲得したい
高金利国の債券を買う
高金利国の債券を為替ヘッジなしで保有すると、長期的かつ平均的にリターンが高い傾向にある。これはいろ
いろな実証分析でも示されていて、「頑健」な(簡単に言うと、確からしい)事柄だ。
ある国の金利が他の国より高いことは、財政不安、景気サイクルが強い、インフレ予想が強い、などと関係があ
る。財政に不安があることと景気が強いことは逆向きの現象だが、インフレは経済が弱い国でも強い国でも起こ
りうる。つまり、一般にある国の国債などの金利(利回り)が高いことは、良いとも悪いともいえない。その後の利
回りが上昇するのか下落するのかも状況次第のはずだ。
一方、例えば日本の金利が0.1%で、米国の金利が2%であれば、日本でお金を借りて米国の国債を買えば
儲かるはずだ(これをキャリー取引という)。すでにお金があって借りないで済む投資家でも、日本の国債を
買ってほぼリスクなく得られる低い金利を捨てて、より高い金利を得ようとすることは、一種のキャリー取引と考
えてもよい。
さて問題は、「誰でもこんなことは分かっている」ことだ。経済学が考える完全な経済社会では、こんな簡単な
取引で継続的に儲かることはない。上の例であれば、日本の資金が米国へ向かい、米国の国債価格は上昇
(利回りは低下)する一方で、人気のなくなった日本の国債価格は下落(利回りは上昇)するからだ。ところが、
最初に述べたように、さまざまな実証分析により、高金利の債券(あるいは通貨)を保有すると、平均的にリ
ターンが高いことが報告されている。これはつまり理論的に「パズル」(不思議なこと)だったのだ。
同じことを為替の金利パリティで説明できる。いま日本で0.1%で1年間借りることが出来て、米国で1年間2%
で運用できるとしよう。仮に1年後に円に戻す為替レートを今日(先物で)決めてしまうとしたら、今日すべて決
まるのでリスクがないのだから、円で0.1%で運用する人と同じリターンにならなければおかしい。今日の米ドル/
円相場が120円(スポット)だとすると、1.9%(2%と0.1%の差)で運用した結果を円に戻すことを今日決める
人と、日本で0.1%で運用した人が同じリターンになる必要があるので、1年先の米ドル/円先物価格は118円く
らいになるだろう。つまり、米ドルの高い金利で運用した結果は、円相場が対米ドルで円高となることで、ずっと
円で持っていた人と同じ(パリティ)になるはずだ。ところが、キャリー取引で長期的に儲けられるということは、こ
の先物価格より円安でスポット為替が安定し続けることを意味しており、金利が高い国への資金流入と金利の
低い国からの資金流出が、理論通りには起こっていないと解釈できる。
■当資料は、日興アセットマネジメントが投資環境などについてお伝えすることなどを目的として作成した資料であり、特定ファンドの勧誘資
料ではありません。また、当資料に掲載する内容は、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。■投資信託は、値動きの
ある資産(外貨建資産には為替変動リスクもあります。)を投資対象としているため、基準価額は変動します。したがって、元金を割り込むこと
があります。投資信託の申込み・保有・換金時には、費用をご負担いただく場合があります。詳しくは、投資信託説明書(交付目論見書)をご
覧ください。
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右グラフをみると分かるように、
主要先進国の債券利回りは、
大体似たような動きをする傾
向にあるため、金利水準が変
わっても、それぞれの金利格
差はおおむね安定的に推移す
る傾向にある。つまり、金利格
差はそれほど簡単に縮小・拡
大してはいない。ここに挙げて
いる先進国間で財政の信頼性
があまり変わらないと仮定する
と、例えば、低金利の日本から
資金が流出して金利が上昇し、
豪州やニュージーランドへ資金
が流入して金利を低下させる
ような収斂の動きがあってもよ
さそうなものだが、実際はそう
なってはいない。
主要先進国の10年国債利回りの推移
(%)
10
9
8
(2009年12月末~2015年2月末)
豪州
ニュージーランド
米国
カナダ
スウェーデン
英国
ドイツ
ノルウェー
日本
7
6
5
4
3
2
1
0
09/12
10/6
10/12
11/6
11/12
12/6
12/12
13/6
(信頼できると判断したデータをもとに日興アセッ トマネジメントが作成)
13/12
14/6
14/12
(年/月)
最近のドイツと日本の金利格差は急に縮まっているなど関係が変化するケースもあることには注意が必要だが、
世界的に見れば、金利格差をそのまま享受できる機会(パズル)がしばらく続いてきた。
リスクをとって割安を買うから平均的にリターンが高い
最近の研究では、高金利通貨での運用リターン(長期的にキャリー取引のリターン)が高いことが、リスクの報
酬だとされるようになってきた。パズル(不思議なこと)扱いよりだいぶ進展があったと言える。主成分分析とい
う統計手法で為替を動かす成分を取り出してみると、まず全体が同じに動く(レベル)要因がある。これは株式
のベータなどと同じで、基軸通貨の米ドルが動けば全体が動くことを意味する。そして、二番目の成分を探って
みると、高金利通貨ほどリターンが高いという「要因」があることが見えてきた。高金利である通貨ほど先物価
格が想定する価格にならない傾向がある。つまり、高金利国の債券に為替ヘッジなしで投資すると、(あくまで
も長期的かつ平均的に)リターンが高い傾向にあるというのだ。
こうしたことから、投資家は低い金利の国の通貨を空売りし、高い金利の国の通貨を買い持ちすればリターン
が期待できる。これを「キャリー取引プレミアム」と呼ぶ。そして、これまでいくつかの学問的研究で分かったこと
がある。高金利通貨のリターンが高い傾向にあることは、国別の景気サイクル、期待インフレ率、財政への懸
念などの分かりやすい要因と直接的な関係はあまり明確ではないようだ。また、長い目で見れば金利格差は
資金の動きで縮まるはずだが、そうなっていないということは、どうやら何らかのリスクに対する報酬のようだとい
うことだ。これは、別の言い方をすると、高金利通貨に投資することは、PERやPBRが低い株式に投資するバ
リュー投資に似ている。両者は、割安に放置されている資産を買うリスクをとることで、高いリターンが期待でき
るからだ。
※上記は過去のものであり、将来の市場環境などを保証するものではありません。
■当資料は、日興アセットマネジメントが投資環境などについてお伝えすることなどを目的として作成した資料であり、特定ファンドの勧誘資
料ではありません。また、当資料に掲載する内容は、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。■投資信託は、値動きの
ある資産(外貨建資産には為替変動リスクもあります。)を投資対象としているため、基準価額は変動します。したがって、元金を割り込むこと
があります。投資信託の申込み・保有・換金時には、費用をご負担いただく場合があります。詳しくは、投資信託説明書(交付目論見書)をご
覧ください。
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ファンダメンタルズやセンチメントの総合的見極めが重要
為替変動を説明する第一の要因である(すべての通貨に対する平均的な)米ドルの動きとの連動性は、世界
景気のサイクルを意味しているようだ。では、第二の要因である高金利であることはどういったリスクのせいで割
安なのか。これまでの研究によれば、高金利通貨の高いリターンは、金融市場の「リスク・オン/オフ」センチメン
トなどを幅広く織り込んだ「ボラティリティの高さ」に依存したリスクによるもののようだ。ただし、実証分析で使わ
れたボラティリティは世界の株価指数のボラティリティであって金利のぶれではないことが興味深い。ここで分
かったことは、世界株価のぶれが大きい時期には、高金利通貨のリターンは低い傾向にあるということだ。
しかし、分析結果は、為替の変動を世界株価の変動で説明すればよいというほど単純ではなかった。為替変
動を説明する力は株価変動そのものより金利差のほうが大きい。金利が高いほど為替リターンが大きいことが、
「ある程度」株式のボラティリティが低いほど明確になるにすぎないのだ。
まとめ
(1)為替ヘッジなしで日本より高金利の国の債券を買うことは、平均的に円金利以上のリターンを期待できる。
(2)そこではある程度リスクをとっており、グローバル金融市場のセンチメントはこのリターンに影響を与えること
がある。例えば、世界株価のボラティリティが大きい時にはリターンが低い傾向にある。
(3)高金利通貨への投資では、国別の景気サイクル、期待インフレ率の変化など経済ファンダメンタルズの動
向に加え、市場センチメントなどを見極めて機動的に対応していくことが重要である。
参考: Lustig, Roussanov, and Verdelhan, “Common Risk Factors in Currency Markets,”
The Review of Financial Studies, volume24,Issue11 2011.
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