「TOEIC高得点でも、無知で世間知らずな英米語学科生」と言われない

「TOEIC高得点でも、無知で世間知らずな英米語学科生」と言われないために」 —
目から鱗の教養本 その2 (4 年生染矢優香さんが薦めるベスト自己啓発本)
『夢をかなえるゾウ』水野敬也著、飛鳥新社文庫、2011 年 5 月、700 円+
―今度こそ、自分を変えたいと望むあなたへ
こんな経験ありませんか?
「今度こそ、やってやる!」、
「今度こそ変わってやるんだ!」
初めのうちは、意気揚々と張り切りやる気に満ち溢れている。だが、悲しいことにどん
なに固く決意しても、モチベーションは次第に衰退し結局いつも続かない。いつもその
繰り返しで、自分にも嫌気がさしてくる。そう悩むあなたにぴったりな最高の本がある。
水野敬也著「夢をかなえるゾウ」だ。本嫌いな人も虜になること間違いなしのこの本を、
悩めるあなたに贈る。
●これが自己啓発本?
本書は、俗にいう自己啓発本だ。自己啓発本というと堅苦しいイメージがあるが、この
本はその常識を覆す魅力が詰まっている。
まず、「ストーリー仕立て」が特徴だ。一般的な自己啓発本は、著者の言葉がただ並べら
れているため淡泊な印象を受ける。本書は小説を読むように楽しめる。
登場人物は自分を変えたいと願うも、ただ何となく日々を過ごすサラリーマン。突如ゾ
ウの姿をした神様ガネーシャが現れる。
「歴史上のキーパーソンを育てたのは全部ワシやで」
と豪語するガネーシャを疑いながらも、彼は毎日、神様が出す課題をこなし、自分を変え
るために奮闘する。
文章は2人の会話が中心で、テレビドラマを見るかのようにスラスラと読み進められる。
アマゾンのレビューでも次のように絶賛されている。
「笑いと教えがバランスよく書かれており、飽きない。小説としてのおもしろさもありつつ、
きちんと成功するための方法が書いてあるのが素晴らしい」。
「若い人がただの読み物として一読しても、心の何処かに留まるような、きっと人生の肥やし
になるのではと思える」
。
●これが「神」の言葉?
もう一つの魅力は、「ガネーシャの口巧者な関西弁」である。ガネーシャの言葉は、軽薄
な関西弁だが、ひとつひとつ胸に突き刺さる。実は、これらは偉人が残した名言・教えを
言い換えたものだ。
「『後悔しないように生きろ」この言葉、自分も聞いたことあるやろう。なんでこの言葉、
こんなぎょうさん世の中に溢れてるか考えたことあるか?みんな自分の人生に後悔したま
ま死んでいくからや。もしみんなが後悔のない人生送ってるんやったら、こんな言葉必要
あらへんやろ」。
「松下の幸ちゃんがこんな言葉を残しとる。『すべての責任は自分にある』。他人が起こす
出来事、身の回りの環境で起きる出来事は全部自然の法則どおりに発生しとる。だとした
ら自分の望む結果を出すには、自分を変えるしかあらへん。でも本質的に理解しとるやつ
なんてほとんどおらへん」。
これが標準語だとしたら、説教臭くてたまったものではない。ガネーシャの気さくな関
西弁が、うまくオブラートの役割を果たしている。
●課題の実践
本書のさらなる魅力は、
「ガネーシャの出す課題を読者も実践する」スタイルだ。他の自
己啓発本は、具体的にどう行動するかまで面倒を見てくれない。
読者は登場人物のサラリーマンと共に毎日、一つずつ課題をこなしていく。誰もが今す
ぐ始められる簡単なものばかりだ。中には「靴を磨け」、「人を笑わせろ」など一見、頭に
ハテナが浮かぶようなものもある。
ガネーシャはそこに隠れている大切なことを偉人の名言・教えを用いて説明してくれる。
読み進めていくと、課題を実践してみたいと体がうずうずしてくるはずだ。
私が実践した課題で最も印象深かったのが、「プレゼントをして驚かせる」である。
ガネーシャ曰く、お金は自分の欲を満たすために使うのではなく、人を喜ばせて幸せに
した分だけもらうもの。サプライズは、これを実践するのに最も適した行動だと言う。
私はイベントや誕生日以外で人にプレゼントをした経験がない。お金は自分の欲を満た
すものと勘違いしていた。だが、この本を読むうちに、相手を思いやる気持ちが薄いと気
づき、この課題に挑んだ。さっそくその日の夜、会う約束をしていた友人にプレゼントす
ることにした。
「別にこることあらへん。ちっちゃいもんプレゼントされたら、意外と嬉しいもんやがな。
言葉かてプレゼントになるんやで」
。
ガネーシャの言葉を信じ、シュークリームを買った。友人は、ありがとう、すごく嬉し
い!と想像以上に喜んでくれた。
自分の物を買う時には得られない幸福感でいっぱいになり、人にプレゼントする楽しさ
を初めて知った。それ以来、私は人にプレゼントするのにハマっている。
プレゼント選びを通して、以前よりも相手のことを考える機会が増えた。今までいかに
自分のことしか考えていなかったのかをこの課題で思い知らされた。
些細な行動で、自分の意識が変わるとは驚きである。
●すべては自分次第
この本は他の自己啓発本とは違う「何か」を読者に与えてくれる。しかし、読むだけで
満足しているようでは、一生変われない。
「自分は今、
『座っている』だけや。何かを学んで、知識を吸収して、成長しとる思てるか
もしらんけど、成長した気になっとるだけなんや。人間が変われるのは、
『立って、何かを
した時だけ』や」。神様ガネーシャより。
(2014 年度4年
染矢
優香)