PDF版 - 飛翔会グループ

全日本男子バレーボールチームのフィジカルコーチを務める、飛翔会グループ株式
会社メディウイングの大石博暁トレーナーが、様々なトレーニングについて解説し
ます。第 3 回は、より高いトレーニング効果を得るために必要なことについてご
紹介します。
くし、2〜3月で筋力やパワーを高め、
て大会がある場合、まず1月は筋を太
えば【図1】のように4〜6月にかけ
はしっかりと考えておかなければなり
すからトレーニングと休養のバランス
が下がってしまうこともあります。で
毎日同じ部位を鍛え続けていると
オーバーワークになり、結果的に能力
ニングを組まなければなりません。例
4月以降は維持をする、といった計画
介しました。その次の段階で必要とさ
呼びます。年間を通じて同じプログラ
このようにトレーニングの内容を時
期によって変えることを『期分け』と
部分を、どのくらいまで高めるのかを
めません。具体的にいつまでに、どの
うだけでは高いトレーニング効果は望
漠然と現状より数値を高めたい、とい
てプログラムを作ることは大切です。
ります。
手は、強化以前の準備期間も必要にな
復期や、体のバランスが崩れている選
もちろんこれはトレーニングが順調
に進んだ場合の例です。怪我からの回
とても重要です。
ムを続けていると、筋力の伸び方も頭
数値で明確にしておくことによって、
オリンピックを目指す選手ならば4
年周期、高校生ならば3年周期、といっ
時に色々なトレーニングを行うことは
期間内に目標まで到達できなければト
た長期に渡った計画も立てた方がいい
打ちになりやすくなるため、期分けは
レーニング法を変える、などといった
できないため、目標と方向性を見定め
評価もしやすくなります。
し、最終年ではトレーニング効果を自
でしょう。1年目は体力の基盤を構築
目標を定めた後は、その目標に即し
た年間計画を立てましょう。学生であ
分の競技に結びつける内容に変えるこ
とによって、効果的に競技力を向上さ
せることができます。
具体的に日々のトレーニングを行う
際に考えておきたいのは『超回復』の
原理です。トレーニングを続けていく
と体力レベルは開始の水準から、疲労
によって次第に落ちていきます。しか
しここでしっかりと休養をとれば、元
の水準より高いレベルまで筋力が回復
するのです。この最大値が高まったと
ころで次のトレーニングを開始すれば、
筋
力
養
成
期
筋
肥
大
期
維
持
期
ません。
パ
ワ
ー
養
成
期
その他にも、トレーニングを始める
にあたって知っておきたい原則をまと
筋
力
養
成
期
を立てることができます。
れるのが「目標設定」になります。同
競技 ・ 試合日程
第 1 試合期
第 1 準備期
夏
期
合
宿
西
日
本
学
生
リ
ー
グ
戦
さらに力をつけることができます。
形態 ・ 体力測定
第3回 より高いトレーニング効果を得るために
全
日
本
学
生
リ
ー
グ
戦
ピ
ー
キ
ン
グ
期
維
持
期
パ
ワ
ー
養
成
期
第 2 試合期
第 2 準備期
10 11 12
9
8
7
6
5
4
3
2
1
月
めると、次のようになります。
筋
肥
大
期
方法を紹介していきたいと思います。
以上のようなことを踏まえ、いよい
よ次回からは具体的なトレーニングの
ない。
ようなプログラムを組まなければなら
右と左など、全身のバランスが取れる
7、全面性の法則…上半身と下半身、
ればならない。
状態に応じたトレーニングを行わなけ
6、個別性の原則…選手個々の能力や
て、効果は高まる。
鍛える体の部分を意識することによっ
5、意識性の原則…トレーニング時に
のみである。
が得られるのは、目的に適合した部分
4、特異性の原則…トレーニング効果
継続的に行わなければならない。
るとトレーニング効果は低下するため、
3、継続性の原則…一定期間を経過す
果は高い。
階的に増加させた方がトレーニング効
けるよりも、筋力の伸びに合わせて段
2、漸進性の原則…同じ負荷をかけ続
力は増加しない。
るよりも強い負荷をかけなければ、筋
1、過負荷の原則…日常で発揮してい
期分け
前回は、トレーニングを開始する前
の準備として「自己分析」について紹
【図1】年間計画表(例)∼ある学生競技チームの場合∼
れば大会などの日程を踏まえたトレー
大石 博暁
(おおいし ・ ひろあき)
1970 年 広 島 市 出 身。
1992 年東海大学卒。ト
レーナーとして数々の
チームを指導し、現在
は全日本男子バレー
ボールチームのフィジ
カルコーチを務める。
競技者としても円盤投
げで国体優勝、ボブス
レーでは 2 度のオリン
ピック出場を誇る。