第 2 回 ト レ ー ニ ン グ を 始 め る 前 に

全日本男子バレーボールチームのフィジカルコーチを務める、飛翔会グループ
株式会社メディウイングの大石博暁トレーナーが、様々なトレーニングについ
て解説します。第 2 回は、トレーニングを始める前に大切な目的意識と自己分
析について、説明します。
第2回 トレーニングを始める前に
から、トレーニングを始める第一歩と
ニングの方法を変えることもできます
トル、 メートル、5メートルの計
というものです。距離にすると5メー
メートルを走ることになります。この
切り返しを伴う メートルと、直線距
しては欠かせません。
離を走る メートルのタイムの差を比
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自己分析の内容は、大きく2つに分
けられます。1つは胸囲や胴囲などの
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トレーニングを開始するに当たって
まず大切なのは、目的をしっかりと持っ
もう1つは筋力や持久力、敏捷性など
に脂肪率や骨密度といった形態面で、
周径囲、腕や下肢のなどの長さ、さら
ことができます。
較することによって、能力を評価する
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て取り組むことです。成長期の中高生
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メートル走の平均値は約3秒、P
ATは4秒5〜7です。測定した結果、
プロアジリティテストの様子
よって、強化の必要なポイントが明ら
自己の体の状態を把握しておくこと
も大切です。自分の特徴を知ることに
確にしておく必要があります。
ニングの内容も大きく変わるため、明
でしょう。目的が違えば、当然トレー
なく、リハビリを目的とする人もいる
グの目的は異なります。鍛えるのでは
と一般のアスリートでは、トレーニン
のを太くさせることはできます。太さ
のですが、トレーニングで筋肉そのも
きく変化させることはなかなか難しい
性質は持って生まれたものがあり、大
股を鍛えなければなりません。筋肉の
りと走ることが目的ならば、臀部や太
ことはとても大切です。例えばしっか
するため、ある程度の太さを確保する
形態面の測定の1つに、筋肉の太さ
があります。筋力は筋肉の太さに比例
といった機能面です。
見受けられます。個々の選手や指導者
このようなことを考えずに、ただ漠
然とトレーニングを行う選手も数多く
とが考えられます。
体をうまく使うことができていないこ
しに必要な筋力が低下していることや、
が遅いのです。原因としては、切り返
発力はあっても、切り返しのスピード
敏捷性が劣っている、と言えます。瞬
9の選手がいたとしたら、その選手は
メートル走が2秒8、PATが4秒
かになります。自分の認識と測定の結
だけでなく体の使い方にも問題がある
まり効果が上がらないときは、トレー
トレーニングの効果も分かります。あ
ます。
ようなトレーニングをすることになり
肉の持つ潜在能力を、最大限引き出す
場合は、神経との伝達を向上させ、筋
行うことで、効率よく競技力を向上さ
トレーニングというものはないのです
するようなものでなければ、間違った
柔軟性を損なったり、障害を招いたり
によって考え方も異なるため、筋肉の
垂直跳び、立ち五段跳び、 回連続ジャ
ティテスト(=PAT、敏捷性テスト)
、
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トルを置き、まず右のペットボトルを
PATは、スタートラインから左右
それぞれ5メートルの地点にペットボ
ンプなどのテストがあります。
ング前にきちんと測定するとよいで
つだけでも構いませんから、トレーニ
般に共通する項目と言えます。この3
スポーツが重心移動を伴う競技で、走
測定は、それぞれの競技に合わせた
評価が必要です。しかし、9割以上の
タッチして、次に左のペットボトルを
しょう。
る、切り返す、跳ぶ、という3つは全
タッチ、そしてスタートラインに戻る、
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が、しっかりと考えてトレーニングを
機能面では、現在全日本男子バレー
ボールチームで行っているものを例に
せることができるのです。
あることです。継続的に測定を行えば、
果が違ったということも、実際はよく
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挙げると、 メートル走、プロアジリ
大石 博暁
(おおいし ・ ひろあき)
1970 年 広 島 市 出 身。
1992 年東海大学卒。ト
レーナーとして数々の
チームを指導し、現在
は全日本男子バレー
ボールチームのフィジ
カルコーチを務める。
競技者としても円盤投
げで国体優勝、ボブス
レーでは 2 度のオリン
ピック出場を誇る。