スライド 1

P2-1
たばこ対策における歯科資源活用の
経済効果推計手法の確立
○小島美樹1
埴岡
隆2
1大阪大学大学院歯学研究科予防歯科学教室 2福岡歯科大学口腔保健学講座
背景と目的
医科外来での禁煙治療に対する保険給付が開始
されたが、現時点で歯科は適用ではない
歯科禁煙治療の普及は、わが国の禁煙試行者や
禁煙成功者を増加させるかもしれない
医療技術評価申請においては、予想される医療
費への影響の記載項目がある
本研究では、広く地域のたばこ対策における歯
科資源の活用による経済効果の推計手法を確立す
ることを目的とした
歯科たばこ対策の効果の推計
歯科資源活用スケールの試作
健康日本21・たばこ
参考:国別タバコ対策規制点数化
参考:日本公衆衛生学会
(1) 21世紀の公衆衛生研究戦略委員会 22.たばこ
(2) 過去3年間の喫煙関連研究演題のまとめ
健康日本21・歯の健康
中間評価
・喫煙と歯周病の関係を知る国民は35.9%と少ない状況が続く
・成人期の歯周病の重症化予防の観点から禁煙指導・支援の推進必要
参考:都道府県歯科医師会禁煙対策調査項目
地域のたばこ対策における歯科資源活用スケール
1.
2.
3.
4.
対策貢献全体目標と歯科目標
少項目わかりやすい項目設定
重みづけ 各項目点数の負荷
効果的対策の効果の評価
項目
基本点数
追加点
合計点数(評価点)
知識普及
歯周病
歯の喪失
歯科治療
その他
40点(25点+10点+評価
有の場合+5点)
禁煙支援、禁煙 講演会、指導者
定期性
指導
講習
30点(20点+5点+
評価有の場合+5点)
喫煙防止、未成 学校歯科保健活
定期性
年者
動
10点(7点+3点)
妊産婦、母子、 健康教育、健診
定期性
職域
の場
10点(7点+3点)
職種連携、地域 歯科医療、地域
定期性
対策
保健
10点(7点+3点)
地域活動への適用例
項
目
A町=65点
B市=80点
知識の普及
喫煙と歯周病の関係の記事を
町だよりに掲載、住民の知識
の評価はしてない25点
喫煙と歯周病、歯の喪失、歯
科治療の関係掲載、定期的に
喫煙の知識を評価40点
禁煙支援、禁煙
指導
喫煙と歯周病の関係の講演会
を2年前に開催した20点
喫煙の口腔への影響、禁煙指
導の講習を毎年開催、受講者
を記録している30点
喫煙防止、未成
年者
禁煙推進グループで歯科医師
が学校で講演会を定期的に
行っている10点
活動はしていない
妊産婦、母子、
職域
活動はしていない
職場歯科健診で歯周病と喫煙
の啓発を毎年行っている、妊
産婦健診で歯周病と喫煙の関
係、十党喫煙とう蝕との関連
文献を紹介している10点
職種連携、地域
対策
保険適用と禁煙医療機関の情
報の提供10点
活動はしていない
禁煙成功者数の増加と医療費削減効果の推計
歯科禁煙治療による禁煙成功者増加数の推計
・歯科疾患の受療率では、比較的若い年代含めて幅広い年齢層が歯科を受診する
・禁煙希望者や試行者の数を推定できるか
・医科禁煙治療との連携効果が考えられるか
歯科禁煙治療費の推計
・行動変容を伴う歯ブラシ指導を日常的に行っていることから、全ての喫煙者に動機づけを目的とする指導管
理料(加算など)は考えられるか
・歯科治療の一環として行う場合は、対象(適用条件)をどう設定するか(準備期、難治性の重度歯周疾患、
術前管理など)
喫煙による超過歯科医療費と禁煙による歯科医療費減少の推計
・歯周治療の点数のみでは、再治療かメインテナンスか区別できない
・残存歯が多いと歯周治療の医療費が増加するが、歯周疾患が進行して歯が死亡(喪失)すると、歯の補綴の
ための医療費が増加する
・従来の報告では、喫煙者と非喫煙者で歯科受療行動には差がない
・歯の喪失リスクは歯の補綴は喪失歯数や状態によって治療費が違う
・歯周疾患リスク(RRやOR)は、集団の対象年齢、有病率、疾患定義、測定方法に依存してかなり幅がある
・青年期はう蝕や歯内治療、壮年期は歯周治療、高齢期は歯の補綴に医療費が多くかかる
医科医療費への影響の推計
・歯科疾患は死亡には直接関連しないが、口腔の健康保有歯数、歯周状態)が良好である場合は良好でない場
合に比べて、医科医療費が低いという報告がある
・歯科診療所では、全身疾患が著明ではない段階で禁煙治療ができるかもしれない
・歯科治療効果の改善による歯科医療費の削減のみならず、医科医療費の削減効果も加算されると予測される
医療費推計モデルの概要
既存データ
歯科医療機関数
喫煙人口構成
歯科医療従事者数
歯科受診者数
根拠に基づく推定か
全国調査が必要なデータ
第1次推定値
禁煙指導の実施率
歯科受診患者の喫煙者率
第2次推定値
最終推定値
禁煙指導サービス提供者数
提供機関数
歯科受診喫煙者数
ステージ分布
歯科禁煙治療費
3
禁煙による減少する
全身疾患の超過医療費
禁煙により減少する
歯科疾患・治療の超過医療費
禁煙により減少する
歯科治療の超過医療費
一人当たり年間
2
歯科禁煙導入率
禁煙希望者数
歯科禁煙成功率
年間医療費削減額=1×(3-2)
医科禁煙治療
受療者数
禁煙実行者数
禁煙成功者数
1
歯科たばこ対策の効果の推計に必要な基礎データ
1.歯科禁煙治療の導入による禁煙成功者数の推定
項目
数値
データ元
1)歯科受診喫煙者数(性、
年齢別)
既存データを用いた歯科受診患者の喫煙者率の推定値
受療率(人口10万対):う蝕247,歯周疾患249,その他276 有訴者率(人口千
対):歯ぐき21.2,歯痛20.9,咬合20.8 通院者率:男-う蝕35.9,歯ぐき22.2
女-う蝕41.5
人口動態統計、喫煙と健康問題に関する実態調査(性年
齢別)、患者調査、国民生活基礎調査
歯科医師会を通じた全国的調査
2)歯科受診喫煙者の喫煙ス
テージの分布
歯科受診喫煙者
禁煙導入前 無関心期:21%,関心期1:55%,関心期2:16%,準備期:7%
禁煙導入後
介入 無関心期:10%,関心期1:53%,関心期2:21%,準備期:8%,実行:8%
非介入無関心期:30%,関心期1:53%,関心期2:12%,準備期:1%,実行:4%
年間移行率 無関心期→関心期:5%, 関心期→準備期8%
Hanioka et al. Patient feedback as a motivating
force to quit smoking.Community Dent Oral
Epidemiol, 2007, 35(4):310-7.
3)歯科での禁煙導入による
喫煙ステージの進行率と禁
煙実行率(介入,非介入)
進行(介入vs非介入)
全体:23% vs 18%,準備期以外:23% vs17% OR=3.1(1.3-7.5)
無関心期:39%,33%,関心期1:19%,12%,関心期2:23%,0%,準備期:21%,44%
実行(介入vs非介入)
全体:12% vs 5%, 準備期以外:9% vs 3% OR=2.1 (1.3-3.4)
無関心期:12%,6%,関心期1:5%,2%,関心期2:18%,3%,準備期:36%,44%
Hanioka et al. Patient feedback as a motivating
force to quit smoking.Community Dent Oral
Epidemiol, 2007, 35(4):310-7.
5)歯科での禁煙サービス提
供者数、提供機関数
歯科医療機関数、歯科医師数・歯科衛生士数を用いた、歯科禁煙サービス実
施率の推定値
歯科診療所数 66,732、人口10万対歯科診療所数 52,2 (2005)
人口10万対歯科医師数 74.6人、就業歯科衛生士数 79,695人 (2004)
医療施設調査、医師・歯科医師・薬剤師調査、衛生行政
報告例
歯科医師会を通じた全国的調査
6)歯科での禁煙治療による
禁煙成功率
国内データ(介入vs非介入)
治療終了後 3ヶ月:52% vs 11%, 6ヶ月:36% vs 11%, 3ヶ月:30% vs 11%,
海外データ:約10-30%
厚生労働省がん助成金研究田中班研究「歯科検診・歯科
診療施設受診者を対象とした禁煙支援方法の開発と評価
に関する研究」報告書
口衛学会禁煙推進委員会報告 口衛誌,埴岡ら,2007
7)他職種との連携
歯科禁煙希望者の経路(自院で指導、医科への紹介、薬局紹介)の実数
阪大歯学部予防歯科から医科禁煙治療の紹介者 4人(2006.4~)
歯科受診者 TDS5点以上:80% BI200以上:84%
歯科医師会を通じた全国的調査
厚生労働省がん助成金研究田中班研究報告書
健康おおさか21中間評価実態調査
2.歯科禁煙治療費の推定
項目
数値
データ元
1)禁煙治療の費用(準備期対象)
医科のニコチン依存管理料は5回で926点。
薬剤はOTC薬
診療報酬点数:ニコチン依存管理料
2)指導回数と禁煙継続率
1回=3%、2回=15%、3回=9%、4回=9%、5/6回=64%
5回受診者の禁煙継続率は約90%
厚労省がん助成金研究田中班研究報告書
3)禁煙導入の指導費用(全ての喫
煙者対象)
歯周疾患指導管理料は100点
歯科衛生実地指導料は80点
診療報酬点数:歯科の指導管理料
4)禁煙実行までの平均禁煙導入実
施回数と期間
介入回数14回、介入期間17ヶ月
(月1回で約1年半)
小島ら.歯科患者の喫煙への継続的介入に伴う禁煙
ステージの移動 日本公衛誌,2005,52:796-801.
3.喫煙状況別(非喫煙、喫煙継続、禁煙)の1人当たり年間歯科医療費の推定
項目
数値
データ元
性年齢別喫煙人口
33,629(男:26,420 女:7,209)千人,15-29歳:8,692,30-39歳:6,728, 40-49
歳:6,867,50-59歳:5,489, 60-歳:5,852千人
喫煙と健康問題に関する実態調査
人口動態統計、国民健康栄養調査
喫煙率の減少率
47.4%→43.3%、年間約1%
2000年から2004年までの男性喫煙率の減少傾向
歯科疾患の相対危険度、オッズ、
寄与危険
人口寄与危険
歯周病 RRかOR 1.4-10以上,日本の状況:歯周病 OR=1.4(40歳以上), う
蝕 OR=1.6(20-39歳)歯の喪失(20-39歳:喪失有り,40歳以上:20本未満、
60歳以上:無歯顎 いずれもオッズ比は2前後)
歯周病有病の内訳,喫煙:41.9%,前喫煙:10.9%,,非喫煙:47.2% (米国)
A Report of the Surgeon General, USDHHS, 2004
Ojima et al,JPR, 2006, BMC Public Health, 2007,
Hanioka et al, 2007
Tomar & Asma, JP, 2000
歯科診療の1日当たり点数
診療行為別1日当たり点数599点 構成割合 歯冠修復及び欠損補綴45.4%、
処置16%、傷病分類別1日当たり点数 一般 歯の補綴855点、むし歯601
点、歯周炎530点、老人も歯の補綴が最も多い
患者調査、社会医療診療行為別調査
歯の健康状態と医療費の関係
歯の状態が良好であると特に医科医療費が少ない
地域歯科医師会の歯の健康状態と医療費の調査
歯周病の治癒遅延と自然進行
1年で歯周病の治癒がなかった者の比率:喫煙者19%,非喫煙者9%、自然進
行率はほぼ同等
歯石除去、歯周手術、メインテナンス治療は喫煙者は非喫煙者の40-80%の
治療効果
40-70代 10年間の喪失歯 非喫煙:男1.3 禁煙2.2 喫煙3.2)
Faddy et al, JP,2000
Heasman et al., JCP, 2006
口衛学会禁煙推進委員会報告
Krall et al, JDR, 1997
歯周病10年、歯の喪失15年で非喫煙者と同レベル
非外科的歯周治療1年後の歯周ポケットの深さの減少
喫煙継続者:1.12mm 禁煙者:1.57mm
Tomar & Asma, JP, 2000, Krall et al, 2006
Preshaw et al, JCP, 2005
口衛学会禁煙推進委員会報告 口衛誌,埴岡ら,2007
歯周治療の効果
歯の喪失速度
禁煙による歯科疾患リスクの低減
歯周治療効果の回復
口衛誌,埴岡ら,2007
喫煙による超過歯科医療費の推計方法
① 喫煙状況別に実際の歯科医療費の積算
レセプト等を利用して、個人別の喫煙データと受療データを連結して、喫煙状況別
に実際の歯科医療費を積算する
② 歯科疾患リスクと既存調査から推定
喫煙関連疾患に関する疫学データ(相対危険度、オッズ、寄与危険度)と、歯科医
療費(国民医療費や社会医療診療行為別調査)、受療率(患者調査)、喫煙率など
の統計データを用いて、モデルにより試算する
③ マルコフモデルなどの推計モデルの作製
歯周病重症度の分布、喫煙状況別の治療の成功率、喫煙状況別の歯の喪失速度
齢の影響を加味した変化
④ 口腔状況と診療報酬点数から推定
健診データなどから診療報酬点数で治療費を推定
⑤ 歯の状態別の医療費と喫煙状況別の歯の状態から推定
歯科医師会の歯の健康と医療費の調査と歯科疾患実態調査のデータを用いて推定
加