共創・共育・共感 尾鷲市教育長だより 2015.3.13.(金) 第116号 感謝の気持ちを忘れない! 3月 9日 ( 月 )、 尾 鷲 中 学 校 と 輪 内 中 学 校 で 卒 業 式 が 行 わ れ 、 尾 鷲 で 153名 、 輪 内 で 13名 の 卒 業 生 が 、 慣 れ 親 し ん だ 学 舎 に 別 れ を 告 げ 、 新 た な ス テ ー ジ に 向 け 、 第 一 歩 を 踏 み 出 し ま し た 。 来 る 3月 20日 ( 金 ) に は 、 市 内 各 小 学 校 の 卒業式が挙行されます。心よりお祝い申しあげます。 私 が 卒 業 生 に 式 辞 を 贈 っ た 最 後 は 、 東 日 本 大 震 災 の 直 後 2011( 平 成 23) 年 3月 18日 に 行 わ れ た 卒 業 式 で し た 。 こ う し た 状 況 下 で あ り 、 ま た 、 教 職 生 活 38年 間 を 締 め く く る に あ た っ て 、 卒 業 し て い く 子 ど も た ち に 贈 っ た 式 辞 は 、「 感 謝 の 気 持 ち を 忘 れ な い 」 と い う 内容のものでした。 6年間の小学校生活を終え、学舎から巣立つ93名の子ども一人ひとりの 心に、親や教師、出会った人々の深い愛情と、子どもたちが親や教師、出会 った人々に抱く感謝の思いを、最後の式辞で伝え合うことができれば、子ど もたちを慈しみ育ててきた親や先生方へのねぎらいになるのではないだろう か。そういう思いから、式辞のテーマを「感謝」に決めました。 子 ど も た ち に 贈 っ た 、「 感 謝 の 気 持 ち を 忘 れ な い 」 と い う メ ッ セ ー ジ の 内 容 を一部紹介します。 <前略> 一つめは、大学卒業間近の青年の話です。 青年は、地元で就職試験の面接を受けました。面接官がたずねました。 「 あ な た は 、 親 の 背 中 を 流 し て あ げ た こ と が あ り ま す か ? 」。 青年は予想外の質問に戸惑いながら、 「いいえ、ありません」と答えました。 面接官は、 「それでは、今日の面接はここまでにします。家に戻り、親の背中を流して あ げ て く だ さ い 。続 き は 、明 日 に し ま す 。」と い っ て 、面 接 を 打 ち 切 り ま し た 。 青年は家に戻って、母親に 「かあさん、背中を流させてくれないかな」と頼みました。 年老いて、病弱な母親は、 「背中まで流さなくていいから、足だけでも洗っておくれ」といいました。 青年は、母親の足を洗いながらあらためて見つめると、丸まってしまった 指や黒くなってしまった爪、そして、シミやタコもたくさんありました。 「こんなにも、かあさんの足は、細く小さくなってしまったんだ・・・」と 感じながら、母親の足の指、一本一本を、ていねいに洗いました。 そうしていくうちに、青年の汗が涙に変わり、顔はクシャクシャ、目は涙 でかすむほどになりました。 母親の細く小さくなった足を見つめながら、青年は、子どもを育てるため に、昼も夜も働いてきた母親への「感謝」の気持ちで一杯になりました。 二つめは、今回の大震災で、壊滅的な被害を受けた南三陸町の病院で、最 後まで治療を続けながら3日目に救出された医師の菅野さんのお話です。 5 階 建 て の 病 院 は 4 階 ま で 浸 水 し ま し た 。 14 0 人 ほ ど の 患 者 の う ち 、 4 2人 を何とか5階まで避難させ、最後まで治療にあたりました。 3日目にやっと救助されたのですが、医療器具も無く、救助までに、低酸 素・低体温のために7人の患者が亡くなってしまいました。 菅野さんは救助されたあと、出産のために仙台市の病院にいる妻と再会し、 3月 16日 に 、 男 の 子 を 授 か り ま し た 。 菅野さんは 「多くの人々が亡くなっている中で、私が生きていることも、新しい命が与 えられたことも、手放しでは喜べないのですが、こうして今、命があるとい うこと自体、与えられた奇跡だと思うのです」と話していました。 菅野さんは、新しい命と、そして今、命あることに、新たな希望と勇気を 与えられたのです。 みなさんのお父さん、お母さんもまた、みなさんが生まれ、新しい命を授 かることで生きがいをもらったと思います。 そして、元気でやさしい子に育ってほしいと願いながら、一生懸命に働い て、みなさんを育ててくれました。 先生方もまた、みなさんの成長をしっかりと見守ってくれました。 さらにスクールガードや中陽会のみなさんなど、地域の多くの人々の支え により、みなさんは明るく、やさしい人に成長してきたのです。 そして旅立ちの今、こうしてこの場に、尾鷲小学校の立派な「花」として、 堂々と咲き誇っているのです。 この学舎を巣立つにあたり、 お父さん、お母さん、先生方をはじめ、これまで出会った多くの人々への 「感謝」の気持ちを忘れないでください。 いつも心に「ありがとう」の気持ちをもって、いつも心から「ありがとう」 と言える人であってほしいと思います。 「感謝」の気持ちを忘れずに、 やさしさと強さをもって、 さまざまな困難を乗り越えていってください。 そして、素晴らしい中学校生活を創り上げてください。 私も、みなさんから、本当にたくさんの元気をもらいました。 君たちとの出会いに「感謝」いたします。ありがとう! 私も、これからの第2の人生を 「感謝の気持ちを忘れずに生きていきます!」 <後略> 卒業式直前にインフルエンザのために学級閉鎖が相次ぎ、緊急事態で全体 練習ができなくても、子どもたちは、立派な卒業式を創り上げてくれました。 卒業していく6年生 93名、全員出席でした。胸にこみ上げるものがあり ました。子どもたち、保護者、地域の皆様への感謝の気持ちがこみ上げてき ました。この気持ちをいつまでも忘れない、感謝の気持ちはいつまでも持ち 続けていたいと思っています。
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