1月雇用統計

経済分析レポート
2015 年 2 月 27 日
全4頁
Indicators Update
1 月雇用統計
失業率は悪化も、内容は悪くない
エコノミック・インテリジェンス・チーム
永井 寛之
[要約]

労働力調査によると、2015 年 1 月の完全失業率(季節調整値)は、前月から 0.2%pt 上
昇し 3.6%となった。雇用者数は、前月差▲3 万人と 2 ヶ月ぶりに減少し、自営業主・
家族従業者を含めた就業者数を見ても、同▲2 万人と 2 ヶ月ぶりの減少であった。単月
では悪化した形だが雇用者数・就業者数は前月大幅に増加しており、均してみれば雇用
の拡大傾向が続いている。

一般職業紹介状況によると、2015 年 1 月の有効求人倍率(季節調整値)は前月と同水準
の 1.14 倍となった。また、新規求人倍率も前月と同水準の 1.77 倍であった。1 月の求
人倍率の内訳を見ると、求職については、新規求職申込件数、有効求職者数ともに 2
ヶ月ぶりの増加となった。他方、求人側を見ると、新規求人数は 3 ヶ月連続の増加、有
効求人数は 4 ヶ月連続の増加となり、労働需要の拡大が続いている。

失業率のヘッドラインは悪化したものの、内容はそれほどネガティブなものではなく、
1 月の雇用関連統計を総じて見れば、雇用環境の改善が続いていることを確認させる内
容であった。完全雇用に近づきつつあることから、就業者数の増加や失業者数の減少ペ
ースが鈍化する可能性もある。しかし、緩やかに景気拡大が進む中、原油安の影響も手
伝い、企業の収益環境が改善していることもあり、失業率や有効求人倍率に見る労働需
給はさらにタイトになると筆者は見込んでいる。
雇用関連指標の推移
2014年
8月
労働力調査
完全失業率(季節調整値)
%
一般職業紹介状況
有効求人倍率(季節調整値)
倍
新規求人倍率(季節調整値)
倍
毎月勤労統計
現金給与総額
前年比、%
所定内給与
前年比、%
9月
10月
11月
12月
2015年
1月
3.5
3.6
3.5
3.5
3.4
3.6
1.1
1.65
1.1
1.68
1.1
1.69
1.12
1.69
1.14
1.77
1.14
1.77
0.9
0.2
0.7
0.4
0.2
0.1
0.1
0.0
1.3
0.2
(出所)総務省、厚生労働省統計より大和総研作成
株式会社大和総研 丸の内オフィス
〒100-6756 東京都千代田区丸の内一丁目 9 番 1 号 グラントウキョウ ノースタワー
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2015 年 1 月完全失業率:3.6%と前月から上昇
労働力調査によると、2015 年 1 月の完全失業率(季節調整値)は、前月から 0.2%pt 上昇し 3.6%
となった。雇用者数は、前月差▲3 万人と 2 ヶ月ぶりに減少し、自営業主・家族従業者を含めた
就業者数を見ても、同▲2 万人と 2 ヶ月ぶりの減少であった。失業者数は同+7 万人と 4 ヶ月ぶ
りの増加となったが、これは就業者数が減少したことに加えて、非労働力人口が同▲4 万人と減
少したためである。単月では悪化した形だが雇用者数・就業者数は前月大幅に増加しており、
均してみれば雇用の拡大傾向が続いている。
失業者数を求職理由別に見ると、「自己都合」による失業者数が前月差+3 万人と 2 ヶ月連続
で増加したこと、「新たに求職」による失業者が同+3 万人と 4 ヶ月ぶりに増加したことが失業
者増加の主因。企業側に起因する「非自発的な離職」による失業者は同+1 万人と、わずかに増
加したものの、低水準で底這いの動きが続いており、1 月の失業者数の増加は数字ほどネガティ
ブなものではない。
産業別に就業者(原数値)の動向を見ると、
「製造業」では前年差+12 万人と 6 ヶ月ぶりの増
加に転じた。足下で製造業の生産は持ち直しつつあり、こうした動きを反映したものとみられ
る。一方、個人消費関連では、
「卸売業、小売業」
(同+4 万人)で 2 ヶ月連続の増加となったも
のの、増加幅は前月から縮小し、
「宿泊業、飲食サービス業」
(同▲1 万人)は 2 ヶ月ぶりの減少、
「生活関連サービス業、娯楽業」
(同▲6 万人)では減少幅が拡大するなど、総じて低調な結果と
なった。また、いわゆる人手不足と言われている業種に関しても、「医療、福祉」は同+1 万人
と就業者の増加基調が弱まり、「建設業」では同▲2 万人と 11 ヶ月ぶりの減少に転じた。
就業者数・完全失業率、求職理由別完全失業者数
就業者数・完全失業率
求職理由別完全失業者数
(万人)
(%)
(万人)
6.0
120
5.5
100
6,400
5.0
80
6,350
4.5
60
6,300
4.0
40
6,250
3.5
20
6,500
就業者数
6,450
6,200
完全失業率
(右軸)
3.0
2005 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15(年)
(注)季節調整値。
(出所)総務省統計より大和総研作成
自己都合
新たに求職
勤め先都合
定年・雇用契約満了
0
2010
11
12
13
14
(年)
15
3/4
2015 年 1 月有効求人倍率:前月から横ばい
一般職業紹介状況によると、2015 年 1 月の有効求人倍率(季節調整値)は前月と同水準の 1.14
倍となった。また、新規求人倍率も前月と同水準の 1.77 倍であった。
1 月の求人倍率の内訳を見ると、求職については、新規求職申込件数、有効求職者数ともに増
加した。求職者(≒失業者)は単月の動きだけを見ると増加しているが、低い水準をキープし
ている。他方、求人側を見ると、新規求人数は 3 ヶ月連続の増加、有効求人数は 4 ヶ月連続の
増加となり、労働需要の拡大が続いている。
雇用環境の改善ペースは鈍化しつつも、労働需給はひっ迫した状況が続く
失業率のヘッドラインは悪化したものの、内容はそれほどネガティブなものではなく、1 月の
雇用関連統計を総じて見れば、雇用環境の改善が続いていることを確認させる内容であった。
完全雇用に近づきつつあることから、就業者数の増加や失業者数の減少ペースが鈍化する可能
性もある。しかし、緩やかに景気拡大が進む中、原油安の影響と企業の収益環境が改善してい
ることもあり、失業率や有効求人倍率に見る労働需給はさらにタイトになると筆者は見込んで
いる。
有効求人倍率と新規求人倍率、求人倍率の内訳
有効求人倍率と新規求人倍率
(倍)
2.0
1.8
新規求人倍率
(万人)
95
90
1.6
260
新規求人数
85
1.4
230
75
1.0
70
0.8
65
0.6
60
0.4
有効求人倍率
0.0
200001 02 03 04 05 06 07 08 09 09 11 12 13 14 15
(年)
(出所)厚生労働省統計より大和総研作成
220
有効求人数
(右軸)
210
有効求職者数
(右軸)
45
200
190
55
50
250
240
80
1.2
0.2
求人倍率の内訳
(万人)
新規求職申込件数
180
170
123456789101 1 2123456789101 1 2123456789101 1 21
(月)
2012
13
14
15(年)
4/4
雇用・所得概況
有効求人倍率と新規求人倍率
完全失業率と欠員率
6.0
(%)
2.0
5.5
完全失業率
1.8
5.0
1.4
4.0
1.2
3.5
1.0
3.0
0.8
2.5
2.0
0.6
欠員率
1.5
0.4
有効求人倍率
(年)0.2
(年)
2000 01 02 03 04 05 06 07 08 09 09 11 12 13 14 15
2000 01 02 03 04 05 06 07 08 09 09 11 12 13 14 15
(注1)欠員率=(有効求人数-就職件数)/(雇用者数+有効求人数-就職件数)
(注2)2011年3月~8月は補完推計値。
(出所)総務省統計、厚生労働省統計より大和総研作成
(出所)厚生労働省統計より大和総研作成
求職理由別失業者数
世代別完全失業率
(%)
12
新規求人倍率
1.6
4.5
1.0
(倍)
20
15~24歳
25~34歳
10
(前年差、万人)
10
その他
定年・
雇用契約満了
収入を得る
必要が生じた
自己都合
勤め先都合
0
8
35~44歳
55~64歳
-10
6
-20
4
-30
2
45~54歳
0
失業者数
-40
65歳~
-50
(年)
2000 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15
(注1)2011年3月~8月は補完推計値。
(注2)2011年以前は平成17年国勢調査を基準とする推計人口を基準としており、
2012年1月以降の数値とは必ずしも比較可能ではない。
(出所)総務省統計より大和総研作成
(注)2011年3月~8月は補完推計値。
(出所)総務省統計より大和総研作成
所定内給与の要因分解
現金給与総額の要因分解
(前年比、%、%pt)
1.2
3.0
2.5
1.5
(前年比、%、%pt)
一般労働者
賃金要因
0.8
2.0
現金給与総額
学卒未就職
1 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 (月)
2012
13
14
15(年)
所定外給与
パートタイム労働者
賃金要因
0.4
1.0
0.0
0.5
0.0
-0.4
-0.5
所定内給与
特別給与
-1.0
-0.8
-1.5
-2.0
所定内給与
-1.2
1 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 9101112(月)
(年)
2012
13
14
(出所)厚生労働省統計より大和総研作成
パートタイム比率要因
1 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 9101112(月)
2012
13
(出所)厚生労働省統計より大和総研作成
14
(年)