当面のブラジル株式とレアル相場の注目点

<マーケット・レター>
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2015年3月10日
レッグ・メイソン・アセット・マネジメント株式会社
当面のブラジル株式とレアル相場の注目点

ペトロブラスの汚職問題は政治家への捜査に発展するも、ブラジル株式市場では業種間の選別色が強まる傾向。

ブラジルの干ばつ問題は改善に向かい始める。ダム貯水率の回復により大規模な電力危機は回避される公算浮上。

主要国と比較してブラジル株には割安感。ルセフ政権の構造改革路線が海外投資家の信認回復を左右する要因に。

レアル相場は節目となる1米ドル=3レアル台へ下落。当面はブラジル中銀が一段のレアル安を容認するかに注目。
図1:ブラジル・ボベスパ指数の推移
こう着状態にあるブラジル株式市場
ルセフ大統領の再選が決定した2014年10月の大統領
選挙以降、軟調な推移が続いてきたブラジル株式市場で
すが、2015年に入ると株価に下げ止まりの兆しが見えつ
(ポイント)
65,000
2014年10月26日
ブラジル大統領選挙 決選投票
(ルセフ大統領の再選決定)
62,500
つあります。ただし、主要株価指数のボベスパ指数は足元 60,000
でも50,000ポイント前後での推移が続くなど、ブラジル株
は依然こう着状態を脱しきれていません(図1)。
57,500
55,000
財政健全化政策への期待がブラジル株を下支え
52,500
市場からの信認が厚いジョアキン・レビィ財務相が2015
50,000
年1月5日に正式就任して以降、ブラジル政府による財政
健全化政策への期待がブラジル株式市場の下支え要因
となってきました。一方、足元では、国営石油会社ペトロブ
47,500
45,000
2015年1月5日
ジョアキン・レビィ財務相
が正式就任
ラスの汚職問題や、干ばつ深刻化による電力供給への不
42,500
安などが株式市場の懸念材料として浮上しています。
40,000
13年1月
政治問題へ発展したペトロブラスの汚職問題
へ問題が発展しています。ブラジル最高裁は3月6日、上
14年1月
14年7月
図2:ブラジルの業種別株価の推移
(2012年末=100)
150
下両院議長を含む一部政治家への汚職捜査を認める決 140
定を下しました。ルセフ政権が進める緊縮財政策の実行 130
金融株
には政権と議会との対話が不可欠なため、今後の汚職問 120
題の先行きは注意深く見守る必要があると考えられます。 110
ブラジル株は業種間の選別色が強まる傾向に
もっとも、汚職問題の渦中にあるペトロブラス株は2014
年9月の高値から半値以下の水準へ急落しているものの、
金融株や消費関連株などの内需株は2014年後半からの
相対的な高水準を維持しています(図2)。ブラジル株式
市場ではペトロブラスの汚職問題の他業種への波及は限
定的に留まり、業種や銘柄による選別色が強まる傾向に
あります。
15年1月
(出所)ブルームバーグ (期間)2011年1月1日~2015年3月9日
ペトロブラスの汚職問題は、経営陣交代や米格付会社
による格下げから、足元では政治家による汚職関与疑惑
13年7月
消費関連株
100
90
ボベスパ指数
80
素材株
70
60
50
40
13年1月
ペトロブラス株
13年7月
14年1月
14年7月
15年1月
(出所)ブルームバーグ (期間)2013年1月1日~2015年3月9日
(注)すべて配当込みのトータル・リターン。
●当資料は、説明資料としてレッグ・メイソン・アセット・マネジメント株式会社(以下「当社」)が作成した資料です。●当資料は、当社が各種データに基づいて
作成したものですが、その情報の確実性、完結性を保証するものではありません。●当資料に記載された過去の成績は、将来の成績を予測あるいは保証す
るものではありません。また記載されている見解、目標等は、将来の成果を保証するものではなく、また予告なく変更されることがあります。●この書面及びこ
こに記載された情報・商品に関する権利は当社に帰属します。したがって、当社の書面による同意なくして、その全部もしくは一部を複製し又その他の方法で
配布することはご遠慮ください。●当資料は情報提供を目的としてのみ作成されたもので、証券の売買の勧誘を目的としたものではありません。
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図3:ブラジル南東・中西部のダム貯水率
干ばつ問題は徐々に改善に向かいつつある
45
一方、昨年来のブラジル経済のリスク要因となってきた
干ばつ問題に関しては、降水量の増加等によって状況は
徐々に改善に向かい始めています。
(%)
ONS予測
40
35
32.6%
28.0%
30
電力当局(ONS)によれば、ブラジル南東・中西部のダム
25
貯水率は2月末の20.4%から、3月末には28.0%、4月末
20
には32.6%へ上昇が予測されています(図3)。干ばつ問
15
題が完全に終息するかはなお慎重な評価が必要なものの、
10
ダム貯水率が回復し始めたことで、大規模な電力危機は
5
回避される公算が浮上しつつあります。
0
20.4%
14年1月
ブラジル株のバリュエーションには割安感
主要国株式市場では、世界的な金融緩和の拡大によっ
17倍台、日本株が16倍台へ上昇するなど、バリュエー
ション面での割安感が薄れつつあります。一方、ブラジル
15.93
日本
TOPIX
15.53
16.06
17.45
13.56
14.41
ドイツ
DAX指数
8.90
中国
上海総合指数
12.68
11.36
11.17
ブラジル
ボベスパ指数
ベース)が維持されており、海外投資家は依然としてブラ
また、国際収支統計上の資金フローでも、海外投資家
15年4月
17.41
米国
S&P500指数
海外投資家はブラジル株への強気姿勢を維持
ジル株への強気姿勢を継続しています(図5)。
15年1月
15.31
インド
SENSEX指数
主要国株式と比べてなお割安感があります(図4)。
ンを見ると、3月6日時点で約9万枚の買い持ち(ネット・
14年10月
図4:主要株価指数の12ヵ月先予想PERの比較
株の予想PERは足元で11倍台と相対的に低水準にあり、
また、海外投資家によるボベスパ指数先物へのポジショ
14年7月
(出所)ブラジル全国電力オペレーター機構(ONS)
(注)南東・中西部のダム(水力発電所)は、ブラジル全体の発電能力
の約70%を担っている。
て株価上昇が顕著となっています。主要株価指数の12ヵ
月先予想PER(株価収益率)は、米国株およびインド株が
14年4月
(倍) 8
10
12
2013年末時点
2015年3月9日時点
14
16
18
20
(出所)ブルームバーグ
(注)12ヵ月先予想PER=株価÷12ヵ月先予想EPS(一株当たり利益)
は2014年11-12月と2ヵ月連続でブラジル株を売り越した 図5:海外投資家によるブラジル株先物へのポジション
ものの(2ヵ月合計で-9.2億米ドル)、2015年1月には
+16.7億ドルの買い越しに転じました。
ボベスパ指数
よって低成長が続く公算が高く、ペトロブラスの汚職問題
や干ばつの動向などのリスクにも引き続き注視が必要と言
えます。こうした中、ルセフ政権が国民や議会との対話の
中で、財政健全化のための構造改革路線を今後も維持
できるかどうかが、海外投資家によるブラジル株への評価
を左右する要因になると考えられます。
60,000
55,000
ルセフ政権の政策が海外投資家の評価を左右
2015年のブラジル経済は、緊縮型の財政・金融政策に
65,000
2014年10月26日
大統領選挙
決選投票
(千枚)
50,000
150
100
50
ボベスパ指数
先物買い持ち
45,000
40,000
0
ボベスパ指数先物への
海外投資家のネット・ポジション
-50
-100
-150
-200
13年1月
ボベスパ指数
先物売り持ち
13年7月
14年1月
14年7月
15年1月
(出所)ブルームバーグ
(期間)2013年1月1日~2015年3月6日(株価は3月9日時点)
●当資料は、説明資料としてレッグ・メイソン・アセット・マネジメント株式会社(以下「当社」)が作成した資料です。●当資料は、当社が各種データに基づいて
作成したものですが、その情報の確実性、完結性を保証するものではありません。●当資料に記載された過去の成績は、将来の成績を予測あるいは保証す
るものではありません。また記載されている見解、目標等は、将来の成果を保証するものではなく、また予告なく変更されることがあります。●この書面及びこ
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レッグ・メイソン・アセット・マネジメント株式会社
図6:ブラジル・レアルの対米ドル、対円相場の推移
1レアル=39円台へレアル安が進行
(円)
ブラジル為替市場では、ペトロブラスの汚職問題が政治
52.5
問題へ発展したことや、ブラジル経済の見通し悪化が続い
50.0
ていることなどを背景に、レアル相場の下落基調が続いて
47.5
います。足元では、予想を上回る米雇用統計を受けて米
ドル高・レアル安圧力が高まったこともあり、レアル相場は3
月9日には1米ドル=3.12レアルへ下落しました(図6)。一
方、レアルの対円相場も、2012年12月以来となる1レア
ル=39円台へ調整しています。
金利差は引き続きレアル相場の下支え要因
ブラジル中央銀行は3月3-4日の金融政策委員会
(COPOM)で0.5%の利上げを決定し、政策金利は2009
(レアル)
1.6
対円相場
(左軸)
2.2
42.5
2.4
40.0
37.5
2.6
39.46
2.8
レアル高
対米ドル相場
(右軸)
35.0
レアル安
32.5
12年1月
14年1月
のレアルの購買力平価は1米ドル=2.89レアルの水準に
あると推定され、足元での1米ドル=3レアル台の実勢相
場はブラジル・米国間のインフレ格差の観点から見た均衡
点を下回り始めているとみられます。
2015年3月末にはブラジル中銀の為替介入プログラム
図7:海外投資家によるブラジルへの証券投資
株式投資
債券投資
証券投資
14年1月
14年7月
15年1月
(出所)ブラジル中銀 (期間)2013年1月~2015年1月
図8:レアル相場の購買力平価
(レアル)
0.0
購買力平価
(消費者物価基準)
0.5
1.0
+20%
1.5
2.0
レアル高
米ドル安
2.5
レアルの
対米ドル相場
(実勢相場)
3.0
が期限切れを迎えることから、当面は為替介入プログラム 3.5
の継続の是非を含めて、ブラジル中銀が一段のレアル安 4.0
の進行を容認するかどうかに注目が集まりそうです。
15年1月
(出所)ブルームバーグ (期間)2012年1月1日~2015年3月9日
図8は、為替相場の長期の均衡水準を推定する際に一
ル相場の均衡水準を推定したものです。2015年1月時点
3.0
3.12
3.2
13年1月
(10億米ドル)
ラジル2年国債利回りも足元では13%前後と高水準にあり、 12
10 ブラジルへの
海外との金利差は引き続きレアル相場の下支え要因と
資金流入
8
なっていると考えられます。
6
4
実際、2014年末にかけて一時的に流出がみられた海
2
外投資家による証券投資は、2015年に入ると資金流入
0
に回復の兆しがみられます(図7)。
-2
-4
-6
当面のレアル相場は新たな均衡点を探る展開へ
-8 ブラジルからの
資金流出
足元でレアル相場が節目となる1米ドル=3レアル台まで -10
13年1月
13年7月
下落したことで、当面のレアル相場は新たな均衡点を模
般的に用いられる「購買力平価」の理論に基づいて、レア
2.0
45.0
年以来の高水準である12.75%へ引き上げられました。ブ
索する展開が続くものと想定されます。
1.8
レアル安
米ドル高
92
94
96
98
00
02
2.89
3.12
-20%
04
06
08
10
12
14 (年)
(出所)ブルームバーグ、CEICよりレッグ・メイソン・アセット・マネジメント作成
(期間)1992年1月~2015年1月(実勢相場は3月9日が直近値)
(注)購買力平価はレアル相場と長期平均が一致するように調整。
●当資料は、説明資料としてレッグ・メイソン・アセット・マネジメント株式会社(以下「当社」)が作成した資料です。●当資料は、当社が各種データに基づいて
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