4820 EMシステムズ

(株)日本ベル投資研究所
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ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
4820 EMシステムズ
~調剤薬局と診療所を繋ぎ、EHR(電子ヘルスデータ)の独自活用を目指す~
2015 年 3 月 11 日
東証 1 部
ポイント
・3 月に医薬品卸トップクラスのメディパルホールディングス(コード 7459)に対して、
第三者割当増資を行う。当社のシステム開発力を活かしつつ、販売代理店としての強化
を図るためである。10.9 億円をファイナンスし、持株比率も 2.8%から 10.2%に上がる。
これによって、2016 年 3 月期の当社の販売力はかなり強化されよう。
・中期計画 1 年目の 2015 年 3 月期は、薬価や診療報酬の改定もあり、当社の販売は苦戦
しており、目標は未達となろう。この影響で経常利益は 1730 百万円(前年度比-24%)
へ落ち込もう。しかし、過去 2 年の M&A や第三者割当の効果も逐次出てくるので、2016
年 3 月期からは挽回し、経常利益で 2260 百万円(同+31%)が期待できよう。
・当社は調剤薬局向けレセプトコンピュータ(レセコン)のシステム販売で業界トップ、
国内シェア 30%強を握る。従来のシステム売り切り型フロービジネスから、処方箋の処
理枚数に従って利用料金が課金されるストック型ビジネスに業界で初めて転換し、2014
年 3 月期は 2 期連続で最高益を更新した。しかし、業績は踊り場にある。
・調剤システムではシェア 40%に向けて、他社システムのリプレースや新規顧客の開拓
を進める。医者とのネットワークを強化する電子カルテは、シェア 10%を獲得すること
を目指して、電子カルテに強いユニコンを買収、2014 年 4 月に営業体制を統合して拡販
に入っている。また、2014 年 10 月にデータホライゾン(コード 3628)の子会社コスモシ
ステムズを買収した。2600 件の顧客を有するので、販路拡大に直接結びつこう。
・國光社長が目指す本命のビジネスは、EHR(Electronic Health Record、電子的健康記
録)、PHR(Personal Health Record、個人健康記録)にある。アベノミクスで EHR が促進
される。新大阪ブリックビルにある本社のデータセンターには、業界トップの薬局デー
タ、患者服薬データが蓄積されている。これを電子カルテと結び付けることで、患者の
健康を守る PHR まで持って行く構想である。医科システムはまだ先行投資期にあるが、
電子カルテがどこまで収益化してくるか。その先に当社のデータセンターの活用による
新ビジネスモデルの確立がある。新たな成長軌道をめざす勝負の局面にあるが、勝算は
十分ある。株式市場での評価も、電子カルテの収益向上とともに高まってこよう。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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目 次
1.特色
調剤薬局向け処方箋処理システム(レセコン)で業界トップ
2.強み
他社に真似のできない課金システムの確立で収益は安定
3.中期経営計画
4.当面の業績
5.企業評価
電子カルテの拡大で、医者と薬局を結ぶ EHR を推進
新中期 3 ヵ年計画の 1~2 年は踊り場
電子カルテの黒字化のタイミングに注目
企業レーティング B
株価(15 年 3 月 11 日)
PBR 1.55 倍
1816 円
ROE 11.2%
時価総額
PER
13.7 倍
148 億円
(8.169 百万株)
配当利回り 2.5%
(百万円、円)
決算期
売上高
営業利益
経常利益
2007.3
11395
1740
1763
2008.3
11288
1010
2009.3
8776
2010.3
当期純利益
EPS
配当
995
125.8
23.0
997
496
62.6
23.0
-1316
-1355
-1241
-156.2
13.0
9818
-720
-493
-516
-65.0
13.0
2011.3
8202
86
318
1149
145.3
18.0
2012.3
9013
835
977
447
58.0
21.0
2013.3
10257
1209
1766
1076
140.1
30.0
2014.3
11369
1672
2284
1420
182.3
37.0
2015.3(予)
11500
1200
1730
1060
132.3
45.0
2016.3(予)
12700
1740
2260
1450
167.2
45.0
(14.12 ベース)
総資産 17241 百万円
純資産 9444 百万円
自己資本比率 54.3%
BPS 1168.8 円
(注)ROE、PER、配当利回りは今期予想ベース。
担当アナリスト
鈴木行生
(日本ベル投資研究所 主席アナリスト)
企業レーティングの定義:当該企業の、①経営者の経営力、②事業の成長力・持続力、③業績下方修正の
可能性、という点から定性評価している。A:良好である、B:一定の努力を要する、C:相当の改善を要す
る、D:極めて厳しい局面にある、という 4 段階で示す。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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1.特色
調剤薬局向け処方箋処理システム(レセコン)で業界トップ
調剤薬局向けレセコンでシェア 30%
医療事務用のオフィスコンピュータの販売からスタートして、自社でソフトウェアを開
発する実力を養い、現在では調剤薬局向け処方箋処理システム(レセコン:レセプトコンピ
ュータシステム)で業界シェア 30%強と、No.1 である。
調剤薬局向けシステムは、全国 5.5 万件の薬局中、当社は 1.6 万件を顧客としており、
当社のようなシステムを必要とする薬局の中でのシェアは約 30%である。今後は 2 万件に上
げることを目指している。2 位はパナソニックメディコムネットワークス(旧三洋メディコ
ム)
、3 位三菱メルフィン、4 位ユニケソフトウエアリサーチである。
薬局側から見ると、日本調剤は自社開発、アインファーマシーズはパナソニックのシス
テムを使っている。当社もさまざまな大手薬局を顧客としている。また、メディカルシス
テムネットワーク(MSNW)(コード 4350)とは、調剤薬局向けシステムといっても直接競合
しているわけではない。薬剤の仕入れ・発注・在庫管理などのシステムと、処方箋処理シ
ステムでは内容が異なっている。MSNW もレセコンを扱っているので競合する部分は多少あ
るが、むしろ顧客の紹介で協調している。
EMシステムズの事業内容
(百万円、%)
調剤システム
2013.3
2014.3
売上高 (構成比) 売上高 (構成比)
7449
72.9
7631
66.6
内
容
調剤薬局向け医療事務処理コンピュータシステム
自社開発のソフトウエアを市販のパソコンに導入
クリニック、診療所向け電子カルテシステム及び医療事務処理コンピュータシステム
合弁企業のメデファクトからOEM供給、M&Aしたユニコンのシステムも含む
ASPによるインターネットを利用した調剤レセプト支援システム
グループ薬局間の情報共有を支援
調剤システム、医科システムで使用するレセプト用紙、薬袋、プリンターインクなど
医科システム
346
3.4
969
8.5
ネットワークシステム
266
2.6
217
1.9
1657
16.2
1910
16.7
保守サービス
431
4.2
506
4.4
提供するシステムの保守サービス
その他
175
1.7
217
1.9
新大阪ブリックビルの運営管理、スポーツジム、保育園などの経営
100.0 11369
100.0
サプライ
合計
10257
(注)売上合計には、調整額-68百万円(2013.3期)、-84百万円(2014.3期)を含む
電子カルテも自社開発であるが、開発力を強化するために連携をとってきた。2010 年に
ビー・エム・エル(BML、コード 4694、臨床検査)と合弁で、電子カルテ開発の企業メデファ
クトを設立し、診療所やクリニック向けの電子カルテシステムに本格参入した。後発なの
でまだ市場開拓期にあるが、将来は第 2 の柱にしようと力を入れてきた。
BML 社との開発共同会社メデファクトへの出資率は 50:50 で、社長は当社から出してい
たが、このメデファクトは所期の目的を達成したので、2014 年 7 月に解散した。さらに、
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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この分野では、2013 年にユニコンを買収し、強化を図った。
國光浩三社長(69 歳)は、当社創業のオーナーとして常にリーダーシップを発揮してきた
が、医療ビジネスに第 2 の発展期となるチャンスが到来したと確信し、大いなる情熱を持
って新たな挑戦を開始した。
EMシステムズの主要商品
調剤システム Recepty Next
Type1
(保険請求機能)
Type2
(電子薬歴機能)
ユニファーマシー (保険薬局)
医科システム MRN
カルテスタイル
クラークスタイル
ユニカルテ
ユニメディカル
常にデータセンターでバックアップ対応
保険薬局システム
(電子カルテ)
(医事会計システム)
(電子カルテ)
(レセコンシステム)
ASPサービス お薬できましたサービス
NET-α
SHIFT Manager
Mobility
Net-Core
介護
ランシステムNEXT
ユニケア・ネオ2
その他
NEXTチャージ (薬袋印刷モード付複合印刷機)
常にデータセンターでバックアップ対応
拡張性とパフォーマンス
診療所向け電子カルテシステム
診療所向けレセプトコンピュータシステム
患者に調剤完了をメールで知らせる
グループの情報共有、本部統括管理用
チェーン店の勤務シフト管理
スマホ、タブレットで医薬品、患者データを閲覧可能
調剤チェーン薬局のリアルタイム売上・在庫管理
薬剤師向け在宅医療支援ソリューション
介護業務支援システム
従量課金型プリントサービス
(注)ASP:アプリケーション・サービス・プロバイダー。ユニはM&Aしたユニコン社の製品。
医療用パッケージソフトで発展
國光社長の父もビジネスマンであった。銀行は大事にせよ、しかし銀行に頭を下げるよ
うなことはないように、という姿勢であった。ホンダのディーラーを経営しており、当時
兵庫県のスーパーカブの総代理店であった。
國光社長は大学(青山学院)を出た後、輸入車販売のヤナセに入ってベンツを販売した。
売り先は事業主や医者であった。その後、父の会社に入って、ホンダ N360 など車の販売を
10 年ほどやった。根っからの営業マンである。しかし、三男であることもあり、いずれ独
立して事業を起こすことを考えていた。
その時、信州精器(今のセイコーエプソン)が医者向けのパッケージソフトを販売して
おり、その販路拡大を目指していた。人のやらないことをやる、というのが信条なので、
このビジネスで会社を立ち上げた。
医療機関はオフコン導入の時代であった。その後、医療用のソフトが PC(パソコン)に入
っていくという局面を迎えた。その頃、信州精器はプリンターに特化しており、医療向け
パッケージソフトをやめることになった。そこで、当社はソフトの販売だけでなく、当時
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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市場が拡大していた調剤薬局向けの分野で、ソフト開発を自ら手掛ける決断をした。
当時 500~600 万円(リースで月 9 万円程度)のシステムに対して、当社は自社開発で 300
万円という廉価な価格で市場を開拓した。これを東京にも展開し、この分野で業界№1と
なる地歩を固めた。
当社の歴史を正式にみると、
1980 年に兵庫県姫路市において MCS(当時の社名)を創業し、
医療事務処理専用オフィスコンピュータの販売を開始した。84 年に MCS とエプソン販売の
合弁で、関西エプソンメディカルを大阪に設立、その後 90 年に合弁を解消し、エプソンメ
ディカル(EM)に社名変更した。そして、91 年に調剤薬局向け保険請求事務処理システム
「Recepty」(初代)を発表した、という流れである。
社長の長男、國光宏昌氏は現在常務取締役で 40 歳、チェーン薬局(5 店以上)の新規開
拓に力を入れている。中国の大学に留学経験があり、中国でのシステム開発拠点作りで実
績を上げてきた。
フローからストック型へ事業モデルを転換
2000 年にジャスダックに上場し、2003 年に東証 2 部に上場した。
その頃から國光社長は、
毎月の売り上げ目標を立て、システムを一から売って行くのはしんどいと考えていた。フ
ローの売り切りビジネスから、ストック型のネットワークビジネスに切り替えていくこと
を考えていた。
フロー型からストック型に切り換えるには勇気がいる。顧客基盤はあるとしても、スト
ック型はシステムのイニシャルフィーとランニングフィーを分けて課金し回収するので、
切り替えが順調に行ったとしても、しばらくの間収入は減少する。業績が一時的に大幅に
落ち込むことになるが、それを覚悟でビジネスモデルの転換を図った。本社ビルへの大型
投資と課金ビジネスへの転換を準備した。そのデータセンターがスタートした 2008 年に、
リーマンショックにぶつかったので、その後数年は実に苦しい思いをした。
その後、ストック型ビジネスに変えて黒字も定着、収益は安定してきた。おかげで次年
度の 4 月には、年度売上げのかなりの部分は読めるようになった。そこで東証 1 部に行く
決断をし、2012 年 11 月に実現した。
本社ビルの効用
2008 年に本社ビルが完成した。新大阪ブリックビルという名称で、新大阪駅のすぐ近く
にある。ブリックという名前がついているように、こだわりのレンガが使われている。EM
システムズの本社やグループ企業が入っているだけでなく、テナントとして多くの企業も
利用している。
國光社長は、このビルこそ当社のビジネスモデルのシンボルであると強調する。エレベ
ーターを降りると、オフィスの玄関受付が通しガラスで、向こう側が見える。オフィスで
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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働く人々の仕事の状況が総て見える。外部の来訪者が受付に来て、オフィスの中が丸見え
になる会社は普通ない。
実は、ここにコールセンターが置いてある。当社のユーザーのメンテナンスを行うため
の対応窓口である。薬局やクリニックからさまざまな問い合わせがくる。きめ細やかな対
応が求められる。当社は、システムの売り切りからストック型ビジネスに、仕事のやり方
を変えた。このビジネスモデルの転換において、最も大事な機能を担っているのがコール
センターである。それを、どこか離れた場所に置くのではなく、本社の入り口正面に配置
したというわけだ。来訪する顧客と働くスタッフへの明確なメッセージである。
また、本社ビル内にサーバー室がある。ここもネットワーク型ビジネスにおいて、最も
大事なデータセンターの核である。相当の投資をしてある。システム開発は本社で行うと
ともに、中国(上海、南京など)も活用しているが、データセンターは免震構造に優れた
本社ビルに設置した。ビルには医療モールや薬局、保育園、スポーツジムも入っている。
このビルの建設は、
2003 年に東証 2 部に上場し、
業績が好調だった 2005 年頃に構想した。
そして、2008 年 3 月に完成した。その年の秋にリーマンショックがきた。その期の総資産
186 億円に対して、投資不動産(テナント向け不動産賃貸)99 億円、短期借入金 75 億円と
いう状況であった。銀行の対応には厳しいものがあり、薬局事業を三井物産に売却する中
で、資金的には凌いでいった。
感染症の流行をいち早く察知することにも応用
「感染症流行探知サービス」では、当社のデータセンターに集結している医薬品データ
からインフルエンザの状況に役立つデータをデイリーで情報センターに送っている。医療
機関からのウィークリーデータより早く、地域の変化を知ることができる。これらの情報
を薬局にも送っており、その利用薬局は 1 万件にもなりつつある。当社のプラットフォー
ムが、ビッグデータとして活用されている事例である。
2.強み
他社に真似のできない課金システムの確立で収益は安定
業界トップの調剤薬局向けレセコンは独自の課金システムで一段と強みを発揮
当社のビジネスモデルは、かつてレセコン(レセプトコンピュータ)の販売であった。300
万円ほどのレセプトコンピュータを調剤薬局に販売する、処方箋のデータをこのコンピュ
ータに入力すると、国に提出する書類が作成される。このコンピュータは買取りでもリー
スでもよい。当社はメンテナンスも含めて、サービスを直接提供する。この分野で当社は
業界トップになっていた。請求書類はオンラインになり、保存書類以外の紙の需要も減っ
ていた。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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これに対して、2008 年 11 月からスタートしたレセプティネクスト(Recepty Next)という
システムでは、課金システムが導入された。従来の半額程度でレセコンのハードとシステ
ムを購入してもらう。リースもありうる。後は、月 8000 円の基本料金と従量課金となる。
つまり、処方箋 300 枚までは基本料金だが、それ以上は処理した枚数に見合って薬局サイ
ドが支払うというシステムである。
従来のやり方は、レセコンのシステムを販売して、5 年保証をつけた。その間、薬価改定
時のソフトの更新も含め、メンテナンスサービスをした。粗利は高いが、値引きもあった。
一方、新課金システムは初期費用が安いので、150 万円の価格に対して値引きはない。処
方箋枚数に応じて課金収入が入る。買い替え期間が 5 年から延びても、課金による収入は
きちんと入る。ハードというシステム販売への依存を減らし、処方箋枚数の利用に応じて
稼ぐという仕組みである。
長期的にみて当社の収益性は上がり安定化する。顧客の薬局サイドも、利用に応じて支
払いというのは、収入見合いなので合理的と納得できる。しかも、従来の 5 年保証と違っ
て、システムとしての機能は毎月でもバージョンアップしていく。常に最新のシステムに
なっている。
薬局チェーンは、通常、数多くの薬局を抱えている。従来の 5 年保証だと、購入がばら
ばらであると、5 年間は十分な機能アップができないので、会社全体では古いもの、新しい
ものが混在していた。それが常に新しいシステムで統一されることになる。5 年の買い替え
ではなく、6~7 年使えば、それは薬局にとってメリットは大きい。
EMシステムズのビジネスモデルの転換
~調剤薬局システム(レセコン)~
2008年3月期まで
2009年3月期より
フロー型ビジネス
ストック型ビジネス
5年無償保証付
システム販売プラン
月額課金方式(従量または定額)
+ハードウエア初期費用
・毎回売り切り
・5年後の入れ替え需要
・年間販売件数依存
(億円、%)
売上高(売上高営業利益率)
2004.3
62 (9.2)
2005.3
54 (7.0)
2006.3
73 (17.4)
2007.3
87 (18.9)
2008.3
83 (10.3)
・当初の収入は大幅ダウン
・月額課金で将来収益は安定
・累計販売件数に依存
(億円、%)
売上高(売上高営業利益率)
2009.3
56 (-25.8)
2010.3
63 (-14.0)
2011.3
72 (0.5)
2012.3
89 (9.0)
2013.3
101 (11.5)
2014.3
107 (15.0)
(注)単体の業績推移
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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当社も従来は 5 年経つと一生懸命買い替えを促進して売上げを立てようとしたが、今で
は、課金によって利用料金がコンスタントに入ってくる。このような課金システムを持っ
ているのは当社のみで、他社は従来通り、レセコンの売り切り(半分はリース)である。
他社はなぜできないのか。当社でも切り替え時は、初期の売上げが 1 件あたり半分にな
るので、会社としては大幅赤字になった。いずれ課金で稼ぐといっても最初の数年は収益
的には苦しい。他社はこれに耐えられないので、当社と同じ方式はなかなかとれない。
全国に直営サービス体制を敷く
2014 年 5 月に、国内 51 番目の池袋サテライトを開設した。当社はこのビジネスのサービ
スを直営で行っている。他社は代理店を使ってきた。代理店はハードの販売と保守料を収
益源としてきたので、彼らに課金システムのメリットを十分与えることは難しい。
当社の顧客に対するセールストーク(強調したいメリット)は 3 点ある。1 つは、毎月機能
が更新されるので、システムがいつも新しい状態を保つことができる。2 つ目は、使用期間
が 5 年を超えて 7~8 年になると、トータルでコストが安くなるので、メリットは大きい。
他社は 5 年でトータルいくらとなるので、それに比べても安い。3 つ目は、当社自身でデー
タセンターを有しているので、レセプトのデータが全て保存されており、これを調剤薬局
サイドでも今後は利用の可能性が広がる、ということである。
当社は、システムの販売に当っては医薬品卸と連携してきたが、メンテナンスサポート
は全て自社で直接やってきた。ここが他社と異なる。当社は営業に強い。全国に 51 の営業
拠点を持つが、将来は 47 都道府県に1つは持ちたいと考えている。
もともと当社は販売代理店からスタートし、開発力も強化してきた。社長自身、営業タ
イプである。しかし、かつてエプソンの撤退で主力商品を失いかけた経験があり、自社で
顧客の要望に応えることのできる開発力の確保には拘ってきた。
医科向け電子カルテでもシナジーを追求
当社の社員数はグループで 682 人である。その内訳をみると、営業に 97 人、開発に 108
人(国内 48 人、中国 60 人)
、サービス 83 人(納品、点検、修理)、インストラクター100
人(システムの教育指導)
、コールセンター50 人などである。
営業は、薬局向け(レセコン)と医科向け(電子カルテ)を兼務で活動している。医科
向けの営業時間は、昼の 1~2 時間、夜の 1~2 時間と限られている。医者の診察時間外が
勝負である。それ以外では薬局を回った方が効率的である。
その中で営業、サポートの専業化も進めている。医科向けの営業で、もう少し詳しく知
りたいというような局面に入ったら、専門の営業担当を同行させ、導入後は医者や医院、
病院の事務担当者が使いこなせるように、インストラクターが徹底的に教えるという方式
である。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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医科向けのレセコン融合型の電子カルテシステムは、ハード部分のみ 5 年保証付きでシ
ステムを 200 万円程度から販売し、その他に定額の月額使用料 2.5 万円(パソコン端末 2
台目以降 0.5 万円/台)を支払ってもらうという仕組みである。
BML との電子カルテ共同開発会社を発展的に解散
BML と共同で運営してきた電子カルテの開発会社メデファクトは、2014 年に解散した。
電子カルテシステムを開発するという当初の目的は達成しており、今後の展開については、
互いに独自に活動した方がよいと判断した。
BML は臨床検査の会社なので、臨床検査との連携において電子カルテの機能を強化すると
いう方向である。一方、当社は電子カルテと薬局のレセコンをどう結びつけていくかに力
を入れたいと考える。
人員は 15 名程度であった。もともと両社からの出向であったので、特に問題はない。こ
れまで開発した電子カルテのシステム(ソフトウェア)は両社が自由に使うことができ、
独自に改良を加えていくことになろう。電子カルテの開発に関しては、十分自力でできる
ので、全く支障はない。当社にとっては BML との JV(合弁事業)が切れるので自由度が増し、
SRL やファルコ HD といった検査会社とも付き合い易くなるとみられる。
3.中期経営方針
電子カルテの拡大で、医者と薬局を結ぶ EHR を推進
変革期と認識 ~ 10 月より純粋持ち株会社体制へ再編
2015 年 10 月より、当社グループは組織再編を行って、純粋持株会社体制とする。その傘
下に調剤システム事業会社、医科システム事業会社などグループ会社をおいて、事業の業
務効率を追求すると同時に、M&A などによるグループ企業の拡大にも対応しやすくする。
國光社長は、創業以来 35 年間の中で、今が最も変革期であると認識している。医療費の
抑制に向けて、病・診・薬(病院・診療所・薬局)の連携が求められており、それに対し
て、当社はクラウドで対応できる能力をすでに有している。
業界再編の中で、リーダーシップをとっていく覚悟を持って、作戦を練っている。2013
年はユニコンを買収し、2014 年はコスモシステムズを買収した。今後も M&A を軸にステッ
プアップを図っていく方針である。
新中期 3 ヵ年計画を推進
2014 年 5 月に中期計画を見直した。今後 3 年間の利益の伸びはさほど大きくない。調剤
システムで、
この 6 年間進めてきたストック型ビジネスへの転換がほぼ一巡してきたので、
次の医科システムの拡大と医療 IT 化への布石を進める局面にある。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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2014 年 4 月から消費税のアップと薬価改訂は調剤薬局にとって負担となる。そうなると
目先、システムの更新や新規投資には慎重になる。薬価改定では、大型病院前の薬局(門
前薬局)の点数が条件によって相対的に下げられた。在宅についても幅広く行わないと加
点されないようになった。薬価の抑制、サービスの向上、経営努力に力点をおいて、改定
が進められている表れである。
中期3ヵ年計画
(百万円、件数))
2014.3 2015.3(計) 2016.3(計) 2017.3(計)
11369
12096
12732
13432
1672
1673
1740
2040
2284
2200
2256
2576
1420
1410
1445
1651
2012.3
9013
835
977
447
2013.3
10257
1209
1766
1076
調剤システム事業
売上高
初期売上高
課金売上高
(課金売上比率)
7024
5132
1892
26.9
7716
5212
2504
32.5
7849
4907
2941
37.5
7547
4247
3299
43.7
7256
3767
3489
48.1
7406
3767
3639
49.1
販売件数
自社リプレース
他社リプレース
新規開拓
2681
1837
469
375
2594
1813
304
477
1920
1068
336
516
1500
300
600
600
1200
0
600
600
1200
0
600
600
9111
11159
12334
13010
13237
13495
14037
14295
14737
14995
152
130
22
14.5
346
300
46
13.3
969
868
100
10.3
2237
2003
234
10.5
2904
2463
440
15.2
3219
2464
754
23.4
42
42
0
144
144
0
410
211
199
1000
660
340
1300
960
340
1300
960
340
103
243
460
1115
2070
3025
売上高
営業利益
経常利益
当期純利益
累計課金ユーザ-数
調剤薬局ユーザー数
医科システム事業
売上高
初期売上高
課金売上高
(課金売上比率)
販売件数
EM製品
ユニコン製品
累計課金ユーザー数
(注) (計)は計画。ユニコンは2013年10月より計上。
チェーン薬局本部を設置
調剤薬局市場については、①北陸など分業の低い地域があるので、医薬分業の比率はま
だ上がっていく、②高齢化と共に、処方箋枚数は増えていく、③大手チェーンへの集約に
進む、という方向にある。
当社にとっては、ドラッグストアを攻めることが一段と重要になる。調剤システムの課
金の源が増えていくので引き続き利益成長に寄与してくる。そこで、2014 年 5 月に國光宏
昌常務取締役執行役員(社長の長男)が担当するチェーン薬局営業部を本部に格上げし、
人員も 2 倍に増やした。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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データの活用に向けて
個人情報保護法が医療情報との関連で、どのように規制緩和されるかはビジネスに影響
してくる。緩和されると、一定の顧客データが利用可能となり、サービスの向上につなが
る。処方箋の電子化も進む。紙中心から 3 年後に電子化が進めば、EHR や PHR 化が促進され
ることになる。薬局は対面が基本であるが、そこにネットがどのように組み入れられてい
くのか。ここを獲得できるかが鍵を握ることになろう。
一方で、電子カルテは思ったほど伸びていない。クリニック(診療所)による電子カルテ
の普及率はまだ 23~24%程度である。年間 4000 件の新規開業のドクターは当然電子カルテ
を使うが、年配のドクターは義務化されない限り、さほど積極的ではない。しかし、医療
の効率化には、待ったなしで進める必要がある。
2013 年に買収したユニコンは、医科向け電子カルテやレセコンが得意である。既存のレ
セコンのリプレースの強みが生きる、2014 年 4 月には、ユニコンの営業部と EM の営業部を
統合した。互いの強みを生かして、医科向けシステムの需要を開拓していく。
医療情報連携において、例えばお薬手帳を見ても、まだ統一化は図られていない。e-お
薬手帳(スマホ型)
、電子お薬手帳(サーバー型)などバラバラである。どのように顧客を
囲い込んでいくか、いかに全体としての効率化を図るかという点で、プラットフォーム作
りの戦いは本番を迎えつつある。
電子カルテ業界の動き
全国の病院の数は少しずつ減っている。2014 年の病院数は 8499 件で、10 年前の 9078 件
から 6%減少した。
このうち電子カルテの入っている病院は 2142 件で、普及率は 25%である。
この病院向けでは富士通がトップでシェア 35%、2 位が NEC グループ(NEC とその傘下に
ある CSI)で 20%強、ソフトウェア・サービスが 3 位で 18%である。そのほかに 30 社ほどが
病院向けの電子カルテを手掛けているが、いずれ上位 5~10 社グループ程度に再編されて
こよう。病院も電子化しないと、地域連携についていけなくなる。病院の建物が 40~50 年
経って、病床が 100 床程度の中小病院はリニューアルが難しくなり、ここも再編に追い込
まれることになろう。
一方 2016 年よりマイナンバーがスタートし、2018 年頃からは医療分野においても情報の
共有化が進むことになろう。病院の電子カルテ化は 2018~20 年頃にはほぼ普及するものと
みられる。一方、全国に医者は 30 万人ほどおり、このうち開業医の医院(クリニック、診
療所)は 10 万件である。このクリニックでも 2020 年頃には大半のところで電子カルテが
使われるようになってこよう。当社はこのクリニックの電子カルテを狙っている。
調剤薬局システムと電子カルテで医者と薬局を繋ぐ
調剤薬局のシステムは、既存客 1.6 万件のうち 1.2 万件はストック型に変わっており、
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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一巡感はある。今後は新規や他社の顧客開拓が重要になる。
次は電子カルテである。調剤薬局は全国 5 万件に対して、クリニックは同 10 万件ほどあ
る。そのうち 8 割の診療所、クリニックにはまだ電子カルテが十分入っていない。医療に
は検査の重複、薬の過剰など 6 兆円の無駄があるといわれる。これをネットワークで結べ
ば、無駄が相当減らせるはずである。
今回のアベノミクスの成長戦略として、規制改革がかなり進むとの期待が大きい。1)電
子処方箋が使えるようになれば、年間約 9 億枚(年間処方箋枚数 7.5 億枚)の紙がいらな
くなる、2)IT の活用で薬剤師の調剤過誤が減少する、3)クリニックへのフィードバックが
スムースになる、などメリットは大きい。また、TPP の一環として混合診療が認められるよ
うになれば、医療の実力が目に見えるようになり、患者にとってのメリットも大きい。
EHR(Electronic Health Record、電子的健康記録)
、PHR(Personal Health Record、個
人健康記録)など、オンラインサーバー上でデータをしっかりコントロールしていく必要
が出てくる。当社のデータは全てサーバーに入っている。一方、他社はまだデータがネッ
トワーク化されていない。
社長は社員教育に力を入れている。創業以来、朝会で論語を読んでいる。仕事柄、患者
や薬局、医者の気持ちを理解する必要があり、病気というと、ネガティブになりがちであ
る。そうではなく、人の痛みがわかるようにすべく力を入れている。現在、社員の半分近
くが女性である。その他、中国にシステム開発の要員を 60 名ほど抱えている。日本の本社
にも中国人は 10 名ほどいる。
当社の課金システムは値引きをしないので、客が増えてくると利益率は高まっていく。
営業利益率で 20%は十分狙えるビジネスモデルである。今後のビジネス展開において、M&A
もかなり発生してこよう。
当社の電子カルテは後発である。2014 年 12 月末の医科システムのユーザー数は 2349 件
で、このうち電子カルテは 546 件である。日本の電子カルテの普及は 2 万件、20%強である
が、これから普及率が上がってくる。当社の目標はシェア 10%、1 万件の獲得である。あと
1~2 年で 1000 件を超えてくれば収支トントンになり、2000 件を超えてくると収益事業に
なろう。
ユニコンの株式取得で医科向けを拡大
2013 年 9 月にユニコンの株式を取得し、100%子会社とした。ユニコンは医療システムの
開発、販売を行っており、従業員 70 人で、電子カルテを含む医科システムに強い。同社 2
代目の鶴田社長以下、全員が当社の傘下に入って、連携を強めることにした。売上高は 10
億円、営業利益も 0.5 億円と黒字であった。株式の取得金額は 22 百万円と少ないが、借入
金 5 億円の肩代わりも含めて対応した。
ユニコンの社長と國光社長はもともと知り合いであり、大手取引先の経営トップからの
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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紹介もあった。ユニコンにしても自力で次の展開を図るより、当社と組んだ方が大きく発
展できると考えた。当社は電子カルテを一気に拡大できるので、その効果は大きい。
ユニコンの主要商品
事業分野
商品名
製品内容
医療事務
ユニ・メディカル
レセプトコンピュータシステム
電子カルテ
ユニカルテ
診療所向け電子カルテシステム
保険薬局
ユニ・ファーマシシー 保険薬局システム
介護
ユニケア・ネオ2
介護業務支援システム
ユニコンは薬局向けで 200 件、医科向けで 1800 件の顧客を有している。当社は薬局向け
で 1.3 万件、医科向けで 320 件であったから、医科向けへのインパクトが大きい。件数で
いえば 3 年分の市場開拓を一気に手に入れた。
ユニコンの経営については、鶴田社長はそのままで、取締役、監査役を送って強化した。
商品について、現状ではシステムの内容が異なるが、将来はシステムの融合、販売力の強
化がシナジーを上げてこよう。合併によって、従来の顧客を減らさないことを前提に、シ
ナジーを追求していく。客のニーズは優先するが、ユニコンのレセコンであるユニメディ
カルと当社の製品はさほど違わない。リプレースの時には、客に選択してもらいながら双
方の製品を売って行く。将来は当社の新製品に統合していくことになろう。
ユニコンの電子カルテ、ユニカルテを当社のものと比較すると、当社の方が使い勝手が
よい。それは、ユニコン側も認めているので、電子カルテについては、当社の製品に絞っ
て営業を展開していく。ユニコンとは営業の統合によって、双方の営業員が、双方の製品
を売れるように OJT(トレーニング)を進めてきた。
医科システムの販売件数
(件数)
2014.9 2015.3(予)
67
100
2013.9
86
2014.3
125
ユニコン製品
ー
199
120
130
合計
(注)半期ベース
86
324
187
230
EM製品
データホライゾンと業務提携、子会社のコスモシステムを買収
2014 年 8 月に、データホライゾン(コード 3628)と業務提携した。同時に、その子会社
であるコスモシステムズを買収し、当社の 100%子会社にした。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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コスモシステムズの親会社であったデータホライゾンとは、当社が有する 1.6 万件の調
剤薬局に関するサービスについて協業していく。保険証の確認やジェネリックの使用状況
など、情報の共有で互いにメリットのある効率化が進められる可能性は高い。
データホライゾンは、ジェネリック医薬品通知サービスでの先鞭をつけている。厚労省
が推進するデータヘルスにマッチするサービスである。データヘルスは、レセプト、健康
情報等のデータ分析に基づき実施する保険事業であり、当社の目指す、EHR、PHR とも合致
する方向である。
子会社のコスモシステムズは約 1.5 億円で買収した。金額的には少額である。この会社
は、もともと医薬品卸の成和産業の子会社であったが、成和がアルフレッサに買収される
時に、データホライゾンに移った。医療機関及び調剤薬局向けコンピュータシステムの開
発、販売、サポートを手掛けており、最近の業績は低迷していた。
コスモシステムズは従業員 50 人程度で、地元の広島や中部地方で強みを有する。2600 件
の顧客を有しているので、このユーザーを当社グループに取り込める。同社の薬局向けレ
セコンは、最近新しい開発に取り組むことができなかったので、当社の製品と入れ替える
ことができるようになれば、効果は出てこよう。
同社の 2014 年 3 月期の業績は売上高 1094 百万円、経常利益-47 百万円であった。2014
年 10 月から当社の連結に入るので、下期の売上高は 5 億円程度上乗せとなろう。利益面で
は、2016 年 3 月期以降、販売が伸ばせるようになれば黒字化も見えてこよう。
調剤薬局ユーザー数
~コスモシステムズの子会社化で増加~
EMシステムズ
コスモシステムズ
計
(件数)
2014.10始 2015.3末(予)
13172
13740
2014.3末
13010
2014.9末
13172
ー
ー
2390
2560
13010
13172
15662
16300
メディパルHDへ第三者割当増資 ~ 医薬品卸トップクラスのメディシスと連携
3 月にメディパルホールディングス(コード 7459)に対して、第三者割当増資を行う。
メディパル HD 傘下にある医薬品卸トップクラスのメディセオとの業務関係強化が狙いであ
る。目的は 2 つある。1 つは、当社のシステム開発力をメディセオのニーズと合わせること
によって、双方のビジネスモデルを強化する。もう 1 つは、より具体的に当社のシステム
をメディセオに売ってもらうことである。販売代理店としての機能を強化する。
EM システムズの國光社長とメディパル HD の渡辺社長は、渡辺社長がクラヤ薬品の営業部
長であった時からの知り合いである。今回の第三者割当増資で、メディパル HD のよる当社
の持株比率は 2.79%から 10.18%まで上がる。当社がメディパルの傘下に入るわけではない。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
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全く独立した関係ではあるが、業務関係の強化を図るには、10%強の株を持つ主要株主にな
るのが適当であると相互に判断した。
これによって、10.9 億円の資金がファイナンスできる。この資金は EHR のシステム連携
の基盤作りに活用していく。今回のファイナンスで既存株主にとっては 8.1%のダイリュー
ション(株式の希薄化)が生じるが、これはビジネス拡大の中で十分成果を出していけると、
会社側では判断している。実際、十分な成果を期待できるとみてよい。
なお、業務連携の一環として株式を保有するという点では、エプソンも当社の株式の
2.82%を保有する。メディパルとエプソンが当社にとって特別関係が深い 2 社であるという
位置付けである。メディパルとの関係強化で、他の卸やチェーン薬局とのビジネスに影響
は出ないかという点では、メディパルと直接競合する薬局の場合には影響が出るかもしれ
ないが、現状では特に心配する必要はない。
販売チャネルの多様化
コスモシステムズの買収に伴い、販売チャンネルが強化されるように仕組みを変えてい
く。従来、当社は直販モデルで、医薬品の卸や臨床検査会社からの紹介なども含めて直接
営業していた。これに対して、コスモシステムズは代理店システムをとっていた。広島に
本社があったので、近くは直営で対応できるが、全国の地域には代理店を使っていた。
2600 件のユーザーは半分が代理店経由である。その代理店と話し合い、2014 年 11 月か
らは EM システムズのレセコン、レセプティネクストを販売することで話がまとまった。こ
の地域では直販との戦いはなくなるので、互いに戦力アップとなる。実際、宮崎県では調
剤システムでシェア 70%、中国地方や中部地方もシェアが 50%へ上がってくる。苦戦して
いた地域でシェアが上がるので、その効果は大きい。
営業力でいえば、当社の直営 100 人に対して、代理店の 50 人が加わるので、1.5 倍にア
ップするとみることができる。ただ、代理店にレセプティネクストを学んでもらう必要が
あるので、営業が本当にプラスとなってくるのは、2015 年 3 月期からになろう。
代理店として 7 社が入ってくる。この 7 社の代理店は調剤システムについては、コスモ
の製品のみであったので、これが当社の製品となる。医科システムについては、他社の製
品を扱っていた。ここに当社製品も取り扱うようになっていく。医科システムでは、5000
件のユーザーを抱えている。実際、九州地域では、医科システムでも EM システムズと組む
という方向になりつつある。
なお、コスモの代理店販売は、今後コスモを通さず、当社が直接代理店とやり取りする
ことになる。さらに、医科システムの拡大では、この 7 社に限らず代理店網をさらに増や
していく。その時、当社の製品 MRN をいかに差別化していくか。EHR との結びつきが上手く
使えれば有効な差別化にはなる。マイナンバーがどのように利用できるようになるかが、1
つのカギであろう。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
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コスモシステムズの業績改善へ向けて
コスモシステムズは赤字であった。これは現在の自社製品が古いタイプのもので、新製
品への対応が資金面からできなかったためである。コスモは売り切り型のビジネスモデル
なので、5 年保証が切れた頃から新モデルの販売を打ちだす必要があった。これが一般的な
売り切りモデルのやり方である。ところが、同社の製品は 7 年前のもので、新製品が準備
できなかったため、リプレース需要が十分とれていなかった。
10 月からは、後継機種として EM システムズのレセプティネクストをベースとした商品を
営業する。両機種のデータのやりとりをするプログラムは現在開発しており、3 月までには
フルコンバートができるようになる。コスモのユーザーは、東北、北関東、中部、北陸、
中国、九州などに多い。
コスモについては、調剤システムについては、EM システムのレセプティネクストが主力
になる。これが売上の半分を占めよう。電子カルテについては、同じく当社の MRN を販売
することになる。それ以外の元々手掛けている病院のシステムや富士通のシステムはその
まま継続する。
電子カルテの展開
EM システムズの医科システムは月 2.5 万円の課金をベースにしている。従量課金ではな
い。医科システムの MRN は電子カルテとレセコンの 2 つの機能を有している。
カルテに重点をおくか、通常の処方箋に重点をおくかによって、カルテスタイル、クラー
クスタイルと使い分けている。
調剤薬局向けシステムは現在売上高が 78 億円で利益率も高い。一方、医科向けシステム
の売上高はようやく 10 億円に達した。これを 3 年後には、30 億円以上に伸ばしていこうと
している。
医科向けのまだ収益性は低いが、トータルユーザーが増えてくれば、2 桁の利益率は十分
望める。調剤向けが 20%の利益率に対して、10%の利益率は確保できよう。そのためには、
トータルユーザー1 万件を目指す必要がある。1 万件になれば売上高で 50 億円を超えてく
る。月額使用料による年商も 30 億円を上回ってくるので安定収益が見込めよう。
当社のデータセンターを EHR(電子健康記録)の核にすべく全力投入
電子化が進むと、メールオーダーができるようになるかもしれない。これはネット薬局
ができることにもなるので、業界の構造を一変させる可能性がある。
安倍内閣でマイナンバー制が導入される。医療への適用は少し先になろうが、マイ病院
構想は進みつつある。つまり、医療情報の電子化による共有が進展する。当社が標榜する
EHR(Electronic Health Record、電子的健康記録)は形になりつつある。現在、いくつか
の実験に参加して、80 組のモニターについてデータを共有、モニターからは好評である。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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医者が診断して薬の処方箋を出す。その患者が薬局に行って薬をもらったかどうかはわ
からない。薬局がジェネリックも含めて、どの薬を出したかが医者にフィードバックされ
ない。その患者は過去にどういう薬を服用していたか、今どういう薬をもらって服用して
いるのかがわからない。このようなことが情報の共有を通してわかるようになる。
当社はデータセンターを所有しているので、このような EHR を速やかに実施することが
できる。これまでは、患者と薬局を結んできたが、電子カルテを通して医者と繋がること
ができると、これは便利になる。個人のデータが PHR(Personal Health Record、個人健康
記録)として記録され、お薬手帳が電子化されていく。
こうした一連のプラットフォームを当社が提供し、そこに新しいビジネスモデルを作っ
ていこうというのが、國光社長の熱い思いである。35 歳で今の会社を起業し、調剤薬局向
けレセコンで業界トップになり、それをシステムの売り切りではなく、利用ごとに課金し
ていくストックビジネスに切り換えた。次は、医者と薬局と患者を繋ぐ新しいビジネスモ
デルでイノベーションを起こそうとしている。現在 69 歳であるが、そろそろ引退という気
持ちを捨て、全権をもって指揮すべく、社内体制を入れ替えた。第 2 の創業に燃えている。
大手調剤薬局では、お薬手帳をスマホに入れることを始めた。記録としてはよいが、デ
ータの共有活用は出来ない。当社はデータセンターを持っているので、もっと有効な調剤
プラットフォームが作れると考えている。
ここを電子カルテで攻めるのだが、電子カルテを売ろうというだけではない。EHR という
新しいプラットフォーム作りを医者に提案していく。そこに賛同してもらった上で、電子
カルテを使いこなせるようになってもらう必要がある。そのためには、インストラクター
の大幅な増強が必要である。
人員の増強について、まず営業では薬局向けの優秀な営業人材を医科向けにシフトさせ
た。医者向けの営業の方が難しいからである。10 万件の診療所に現在電子カルテは 20%し
か普及していない。これから、4~5 年で電子カルテはかなり普及できる。その下地が整っ
てきたと、國光社長はみている。
まず現場の営業がドクターとファーストコンタクトをとり、そこで見込みがありそうな
医者に専任営業が出向く。具体化すれば、インストラクターが丁寧に教える。
第 2 の柱に続く第 3 の領域が本命
2014 年 2 月に元三洋電機メディカル事業本部長(執行役員)の手嶋弘一氏が当社の執行
役員、医療情報連携推進統括部長となった。当社が推進する EHR の仕組み作りにおいて、
有力な人材である。
國光社長は、電子カルテを第 2 の柱に据えるべく全力投球しつつ、第 3 の柱も見据えて
いる。それは医療情報連携基盤としての EHR(Electronic Health Record、電子的健康記録)
との連携である。当社は独自にデータセンターを保有している。調剤薬局とはレセコンで
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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結ばれている。電子カルテシステムで医者とのつながりが一定規模になれば、データセン
ターが相互の情報のやり取りのハブになる。現在、当社のユーザー間のデータのやり取り
について、モニターを募って実験中である。また、PHR(Personal Health Record、個人健
康記録)として電子薬手帳としての連携も十分可能となる。
他社が当社のデータセンターにアクセスするような状況になれば、トランザクションフ
ィーが稼げるようになるかもしれない。こうしたハブ機能の優位性で一歩先んじることが
できれば、薬局システム、医科システムにも相乗効果をもたらす。EHR、PHR への発展をビ
ジネス化することが第 3 の柱であり、國光社長の狙いでもある。
EHR(エレクトロニック・ヘルス・レコード)の事業モデル
(10万件市場)
診療所
処方指示
付帯情報
(送信)
データセンター
電子カルテ
・調剤実施の参照
・服薬状況の参照
EMシステムズ
処方指示
付帯情報
(取得)
調剤実施
情報(参照)
EHR
(5万件市場)
調剤薬局
調剤レセコン
調剤実施
情報(送信)
・まちの健康ポータル
・事務の効率化
・診療所とのデータ連携
服薬情報 (送信)
(電子お薬手 帳データ)
EMユーザー
400件を
↓
1万件へ
利用者
PHR
(パーソナル・ヘルス・レコード)
EMユーザー
1.6万件を
↓
2万件へ
・電子お薬手帳
・服薬状況の連携
EHR がアベノミクスで加速、当社の優位性を活かすべく出番を仕掛ける
EHR については、その推進が徐々に具体化しつつある。当社のデータセンターが上手く利
用されて、ビジネス拡大に結びつけるべく引き続き手を打っていく方向である。
EHR のメリットは、薬局にしても、医者(病院、クリニック)にしても、どちらかが当社
のユーザーになれば、当社のクラウドをハブにして、互いにネットワークを使うことがで
きる。それをセールスポイントに当社はマーケティングを強化して、ユーザーの獲得を増
やしていくことができよう。
國光社長は EHR の推進に一段と力を入れている。
アベノミクスの医療 IT の実行に当って、
その中核の役割を果たす仕組みを作ろうとしている。EHR の推進の要はサーバーである。当
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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社はすでにサーバーを有しているので、これに薬局、医科向けで繋がっている企業に連携
を働きかける。IT 化の核となる会社を作り、そこに各社が IT でつながる。当社はその核と
なる会社にサーバーの利用を提供するという案も有力な方法である。
厚生労働省も全面的に支援する方向である。アベノミクスにとっても、政策を素早く推
進し、実績を上げるには民間の力を活用する方がよい。すでに EHR の実験はなされている
ので、今後の展開には期待できよう。電子カルテの共用利用は、医療費の抑制と患者の利
便性向上には不可欠である。伝統的な方法に固執する医師会をどう説得するかは課題であ
るが、新しい仕組みの方が彼らにとってもビジネスチャンスを広げるという点をアピール
していく必要があろう。
当社としては人材の強化が急がれる。サーバーを持つ強みを活かすべく、医療システム
の経験に富むマネジメント人材やシステムエンジニアの人材を採用している。
3 つの展開に注目
國光社長は 5 つの点を強調する。①新 3 カ年計画は第 2 の創業のスタート台、②女性の
活用を積極的に推進、③社外から有能な人材を入れて、マネジメント層を強化、④M&A に備
えて、ファイナンス人材も強化、⑤電子カルテは医療費抑制の切り札、という点である。
人材では、医療ヘルスケアでトップ企業から事業部長クラスを、大手薬品メーカーから
役員経験者を、そして大手システム開発会社から管理職を入れて、体制の強化を図ってい
る。2014 年 4 月に入社した 34 名の新入社員は電子カルテのインストラクターに育てるべく
教育している。いずれドクターを回るようにして、戦力化する。
医療費抑制のカギは何よりも病気にならないようにすることである。国の施策に合わせ
て、当社が蓄積しているデータをビックデータとして活用する。EHR、PHR として個人の健
康管理の利用していく。その IT システムを担って、医療 IT 企業として一段と飛躍するの
が、目標である。自前のサーバーを軸に、調剤システムで 40%のシェア、電子カルテで 10%
のシェア獲得を目指す。そして、レセコンのトップ企業から医療 IT のトップ企業に躍進す
ることを狙っている。
今後の展開については、次の 3 点に注目したい。1 つ目は調剤システムのシェアアップで
ある。当社は業界トップの営業力を有しているが、営業体制を一段と強化した。既存のユ
ーザーへはフィールドサービス担当が対応することにして、本来の営業部隊は他社システ
ムを攻める体制とした。フィールドサービスが既存客のシステムサポートとして営業も行
う。これによってサービス力は向上する。一方、営業は自社ユーザーの買い替えではなく、
他社ユーザーを攻めることに専念できるわけだ。
2 つ目は、医科システムの知名度アップである。当社のシステムの品質、性能はよいとし
ても、ドクターに EM システムズは知られていない。ドクターとの面談に当たっての知識、
マナーの研修を強化し、デモ(デモンストレーション)まで持っていくようにする。また、
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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医薬品の卸、販売代理店、検査会社へのアピールも高めていく。同時に、ユニコンに続く、
M&A にも力を入れていく。
3 つ目は、当社のデータセンターをパブリックに利用できるようにして、EHR、PHR の普
及を推進することである。薬局とクリニックを結ぶ仕組みは、実証実験を通して好評であ
る。どんな電子カルテシステムやレセコンであっても、当社のデータセンターを介して繋
がるようにできれば、普及を早めることができる。これによって、医療サービスの向上と
コスト削減に飛躍的に結びつく。電子お薬手帳にしても、データセンターで一括すること
ができれば、PHR の実効性を高めることができよう。
ネクストチャージがスタート
2014 年 10 月から新しい課金サービスを追加した。NEXT チャージという診療所と調剤薬
局向けプリント課金サービスである。レセコンからプリントアウトするという点で、これ
までも何らかのプリンターは使っていたが、それに代わって初期費用ゼロで、使った枚数
によってチャージするという複合機のサービスを提供する。
コピーやプリンターのメンテナンスやリース料がいらず、インクも定期的に取り換えて
くれる便利なサービスである。当社にとっては、新たなストック型ビジネスとなり、この
商品は分かり易いので、薬局やクリニックへの営業にとっても、営業の武器となろう。
NEXT チャージは 1 日に 500 枚以上の処方箋が出る薬局に有効である。月 5000 円の基本料
金に加えて、使用量に見合って課金する。当社としては 3 年で回収するモデルである。1 万
台入っていけば、年商 20 億円前後のビジネスモデルになって、一定の利益は見込めよう。
ポイントは、薬局のプリント・コピーニーズをまとめて効率化を図り、同時にこれをツ
ールとして、他社のレセコンシステムを使っているユーザーに営業を強化することができ
るようになることである。
iPad による薬剤師向け在宅療養支援
薬剤師向け在宅療養支援ソリューションとして、ランシステム NEXT のサービスを 1 月よ
り開始した。これは、薬剤師が外出先において、iPad を利用して、患者の処方箋や薬歴等
などを確認記録できるものである。当社のデータセンターを使ったクラウドサービスとし
て行う。在宅ケアの時には利便性を発揮するであろう。1 店当たり初期費用 18 万円、月額
5000 円、1 クライアント(1 台)当たり月額 8500 円(iPad なしの場合は 4000 円)という
料金である。
新大阪ブリックビルは安定収益源
本社のある新大阪ブリックビルの不動産事業について、どのように考えるか。まず、当
社は不動産事業をやるつもりはない。13 階のビルのうち、4 階までを自社で利用している。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
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そもそもこの新社屋は、従来の本社の近くにいい土地がみつかったので建てることにした。
免震構造を入れて、データセンターとして強固なものを作りたいと考えた。
この本社ビルについては、土地の購入に 38 億円、建物に 90 億円の資金を投入している。
テナントの入る部分を投資用不動産として資産計上し(2014 年 3 月期で 78 億円)、収入と支
出を営業外で処理している。その収入が 9.3 億円、支出が 5.0 億円でネットが 4.3 億円の
利益である。利回り 5.5%となる。
当面、大きな資金ニーズはないので、現状のような不動産所有が続こうが、将来何らか
の必要が生ずれば、これをリートなどに売却することも十分可能である。
バランスシートの状況
流動資産
現預金
受取手形・売掛金
固定資産
有形固定資産
無形固定資産
投資不動産
資産合計
流動負債
支払手形・買掛金
短期借入金
1年以内長期借入金
固定負債
長期借入金
純資産
有利子負債
有利子負債比率
自己資本比率
2012.3
4168
1573
1935
11212
1996
284
8371
15381
3236
631
400
480
5577
4296
6567
5176
33.7
42.0
2013.3
4685
1240
2191
11437
2585
226
8097
16122
3897
790
600
480
4776
3316
7448
4396
27.3
45.6
2014.3
6559
2785
2594
11641
2543
548
7849
18200
4304
880
500
660
4691
3032
9205
4192
23.0
50.1
(百万円、%)
2014.12
5815
2620
1834
11425
2274
792
7705
17241
3569
654
600
677
4227
2553
9444
3830
22.2
54.3
祥漢堂薬局の 1 社を取得
調剤薬局の祥漢堂は 21 店を有し、三井物産 90%、当社 10%という資本構成である。当社
がかつて所有していたが、その後三井物産に売却した。今回、三井物産が祥漢堂薬局を総
合メディカルに売却することになったので、その薬局のうち新大阪ブリックビルに入って
いる新大阪店のみを当社が取得することにした。この薬局は EHR(電子医療記録の連携)に
おけるモデルケースとして活用していく。
4.当面の業績
新中期 3 ヵ年計画の 1~2 年は踊り場
2013 年 3 月期の業績は好調であった
2012 年 11 月に東証 1 部に上場した。2013 年 3 月期には売上高 10257 百万円(前年度比
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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+13.8%)
、営業利益 1209 百万円(同+44.8%)、経常利益 1766 百万円(同+80.8%)
、当期
純利益 1076 百万円(同+140.5%)と好調であった。当社の業績を四半期ベースでみると、
4Q に売上げが上がるパターンである。
調剤システムの課金ユーザーと課金売上高は予定通り上昇した。また、2013 年 3 月期の
調剤システムの販売件数も 2594 件(内、自社リプレース 1813 件)と順調であった。他社
リプレースは盛り返している。新規は大きな薬局チェーンへの販売に成功した。
2013 年 3 月期の医科システムは 360 件の目標に対して、144 件に終わった。販売チャネ
ルの開拓には力を入れてきたが、数字には結び付かなかった。
本社ビルの入居率は 100%と高い。2013 年 3 月期の新大阪ビリックビルの不動産収入と支
出は、本社分も入れて収入 917 百万円、支出 529 百万円、ネットでは 388 百万円のプラス
となった。
2014 年 3 月期はピーク利益を更新した
2014 年 3 月期は、売上高 11369 百万円(前年度比+10.8%)
、営業利益 1672 百万円(同+
38.2%)
、経常利益(同+29.4%)
、当期純利益 1420 百万円(同+32.0%)と好調であった。
経常利益で 2 期連続最高益を更新した。課金型のビジネスモデルに転じた成果によって、
かつての収益水準に復帰し、しかも収益の安定性は大きく高まった。
この期は、ユニコンの数値が 5 カ月分(10 月~2 月)入っている。分野別の売上高をみ
ると、調剤システムは伸びが小幅であったが、1)自社リプレースが減っているが、新規や
他社システムの当社への切り換えが伸びた、2)システムの販売件数は減少しているが、サ
ーバー付やアプリ付が増えていることによって、1 台当りの単価は上がっている、3)スト
ック効果で課金ビジネスは順調に伸びている、という点が寄与した。
医科システムは、自社システムが伸びたのに加えて、ユニコンの台数が加わったので、
大幅に増えた、売上高は 969 百万円と、前年度比+180%となった。410 件のうち、199 件が
ユニコンの分であった。ユニコンは従量課金の仕組みを持っていないので、こちらの課金
計上は 100 百万円と多くはない。
ユニコンが連結に入る
2014 年 3 月期 3Q からユニオンが連結業績に入った。ユニコンについては、売上高 11 億
円、営業利益(のれん償却後)で 0.5 億円の効果が見込める。ユニコンは従来 11 月決算で
あったが、今回から 2 月決算に変更した。2013 年 11 月決算の次は、2014 年 2 月決算とな
る。当社の業績への影響という点では、2014 年 3 月期は 5 カ月が入り、2015 年 3 月期はフ
ルに寄与してくる。のれん(2.3 億円)の償却は 5 年で行うので、年間 0.46 億円ほどきい
てくる。
2014 年 4 月より営業体制を一段と強化した。EM システムとユニコンの営業を統合して、
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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医科システムの販売と一体化した、また、フィールドサービスも強化している。ハード機
器の修理は互いにとって手間がかかるので、故障を減らすように早めの対応を促している。
これによって、サービスコストが下がっている。また、システム開発を当社の南京で行っ
ているが、このウエイトを高めている。さらに、事務作業も BPO(アウトソーシング)して
おり、これもコストダウンになった。
新大阪ブリックビルの入居率も上がっている。バランスシートでは、ユニコンの買収が
完了したので、バランスシートに反映されている。ユニコンは総資産 552 百万円、固定負
債 574 百万円、純資産-123 百万円であった。
事業セグメント別業績
2012.3
売上高 利益
システム事業
及び関連事業
8909 822
調剤システム
6702
医科システム
153
ネットワークシステム
321
サプライ
1331
保守サービス
399
その他事業
174
66
調整額
-70 -53
合 計
9013 835
(注)利益はセグメントの営業利益ベース。
2013.3
売上高 利益
10150 1189
7449
346
266
1657
431
175
69
-68 -48
10257 1209
2014.3
2015.3(予)
売上高 利益 売上高 利益
11236 1670
7631
969
217
1910
506
217
79
-84 -77
11369 1672
11320
7510
1300
160
1650
700
270
-90
11500
1190
90
-80
1200
(百万円)
2016.3(予)
売上高 利益
12520 1750
7430
2360
120
1810
800
290
90
-110 -100
12700 1740
ストック効果とフロー効果は半々
現在の収益をストック効果とフロー効果に分けてみると、粗利ベースで半々といったと
ころである。課金売上げは大半が利益である。それ以外のビジネスは粗利率が 5 割程度で
ある。これらを勘案すると、ストック効果が半分を占めていると推察できる。
2015 年 3 月期は電子カルテが未達
2015 年 3 月期の 3Q は厳しかった。診療報酬や薬価の改定、消費税の影響などが一巡して
くるかと思ったが、営業の成果は今一歩であった。会社側では 2015 年 3 月期の業績見直し
について修正は出していないが、4Q を踏まえても、会社計画を下回る公算は高い。
3Q 累計で調剤システムの販売件数は 924 件で計画比-7.9%であった。自社リプレースは
従来のシステムのサポート終了が 12 月末であったから、
その影響もあって計画を上回った。
一方で、新規や他社リプレースの販売は計画を 3~4 割ほど下回った。
医科システムの販売は 269 件で計画比-60.6%と低調であった。ユニコンが 169 件(同-
26%)
、MRN が 100 件(同-77%)であった。いずれも前年の販売件数を下回った。厳しい環
境の中で、新規や他社リプレースを主軸にするので、目標が高過ぎたという面もある。
3Q(10~12 月)より、コスモシステムズが連結に入ってきた。従来型のシステム販売に
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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留まったので、利益面での寄与はほとんどない。調剤システムのリプレースを促進するソ
フトウェアの開発が遅れており、これが寄与してくるのは 2016 年 3 月期からになろう。
業績予想
2012.3
売上高
9013
粗利益
4647 (51.6)
販管費
3811 (42.3)
営業利益
835 ( 9.3)
営業外利益
953
不動産賃貸収入
928
営業外費用
812
不動産賃貸費用
494
経常利益
977 (10.8)
当期純利益
447 ( 5.0)
(注)カッコ内は対売上比の利益率
2013.3
10257
5388 (52.5)
4179 (40.7)
1209 (11.8)
1055
1017
499
454
1766 (17.2)
1076 (10.5)
2014.3
11369
6269 (55.1)
4597 (40.4)
1672 (14.7)
1119
1051
506
437
2284 (20.1)
1420 (12.5)
2015.3(予)
11500
6300 (54.8)
5100 (44.3)
1200 (10.4)
1100
1050
570
450
1730 (15.0)
1060
(9.2)
(百万円、%)
2015.3(予)
12700
7040 (55.4)
5300 (41.9)
1740 (13.7)
1100
1050
580
450
2260 (17.8)
1450 (11.4)
2015 年 3 月期は、4 月に 2 年に 1 回の診療報酬や薬価改定があり、その影響で上期は調
剤薬局や医院(クリニック)
、病院の動きも鈍かった。上期にユニコンの売上高が 3 億円強
入ってきた。下期はコスモシステムズの売上高が 5 億円程度のってこよう。利益面でのイ
ンパクトはまだないが、来期には営業力の強化がきいてくるので、売上、利益面でプラス
効果を生んでこよう。
2015 年 3 月期の会社計画は、売上高 12096 百万円(前年度比+6.4%)
、営業利益 1673 百
万円(同+0.1%)
、経常利益 2200 百万円(同-3.7%)、当期純利益 1410 百万円(同-0.7%)
であるが、実際の業績はこれを多少下回ろう。
減益となる要因は、1)主力の薬局向けシステムで自社リプレースが一巡してきたので、
それを新規や他社からの切り換えで十分カバーできない、2)医科向けは拡販に努めるが、
件数が計画を大きく下回っている、3)人材の強化に向けて新卒が 34 名入っており、その
分のコストが先行する、という理由による。
キャッシュ・フローでは、現在のビジネスモデルでは通常フリーキャッシュ・フローは
常にプラスとなる。大型の投資がない場合、通常の投資は営業キャッシュ・フローで十分
賄える。配当については、配当性向 25%を目途にしているので、前期の 37 円に対して、今
期は 45 円を予定している。
2016 年 3 月期は好転
2016 年 3 月期は、経営環境が好転してくる中で、販売代理を活用した件数も伸びてくる
ものと予想される。調剤システム、医科システムとも販売件数は今期の水準を上回ってく
るので、増益に転換しよう。
コスト削減にも力を入れる。開発では 2014 年 12 月に 2 つのシステムのサポートが終了
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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したのでピークアウト感は出てくる。営業サイドも販売代理店の活用に力が入るので、自
前のインストラクターなどもさほど増やさなくてよい。販管費比率は下がる方向となろう。
キャッシュ・フローの推移
営業キャッシュ・フロー
税引利益
減価償却
不動産賃貸収入
持分法による投資損益
投資キャッシュ・フロー
有形固定資産
無形固定資産
投資不動産収入
フリーキャッシュ・フロー
財務キャッシュ・フロー
借入金の返済
自己株式の取得
配当金の支払い
現預金等の期末残高
2012.3
742
265
748
-684
251
596
-37
-106
685
1339
-899
580
-157
-139
1773
2013.3
865
1235
734
-775
-9
144
-483
-172
759
1010
-1057
-780
0
-237
1740
(百万円)
2014.3
2015.3(予)
1287
940
1366
1060
726
660
-801
-780
-44
0
-118
360
-356
-250
-203
-150
800
760
1169
1300
41
-1000
-203
-660
499
0
-232
-340
2985
3285
業界再編の動きの中で、いかにリードするか
業界環境を見ると、1 つは消費税が上がった影響で、調剤薬局にとっては仕入れコストは
上がっている。ジェネリックや在宅に関する加算をとれるように経営をシフトしないと収
益性が下がってしまう。チェーン薬局においても、格差が出ている。
もう 1 つは、個人情報保護法の見直しが進展するかどうかである。医者と患者と薬局で
データの共有ができるようになれば、クラウドのよる情報の活用ができるようになる。EHR、
PHR の出番がくることになろう。
レセコン業界について、当社はストックビジネスで相対的に安定しているが、売り切り
のところは、収益確保に苦労している。処方箋の電子化について、標準化に関するガイド
ラインが 2015 年中には公表される見通しである。医者と薬局とのビジネスのスキームがメ
ールオーダーのあり方によって変化してくる。2016 年からは電子化が進むことになろう。
2013 年にニューソンから調剤レセコンシステムの顧客を 60 件ほど譲り受けた。12 百万
円の投資である。このように、中小規模のレセコンサービスが少しずつ統合されている。
一方、パナソニックヘルスケアが KKR に買収された。もともと三洋電機の子会社であっ
たが、三洋がパナソニックに買収された。その後パソニックのリストラの中で、このヘル
スケアは主力事業と位置付けられず、売却の対象となった。
具体的には、コンペティターの三洋メディコムがパナソニックに買収され、そのパナソ
ニックメディコムネットワークスが、パナソニックの経営再建の中で切り離され、KKR が買
った。その事業に、当社と競合するレセコンや電子カルテ事業がある。この事業再編がど
のような形で進むかは重大な関心事である。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
当社に直接関連する同社の調剤システム、医科システムはユーザー数で 3~4 万件、年商
で 200 億円以上はある。ここの事業が独立して、どのくらい強くなっていくか。そうなら
ない可能性もあるが、市場における競争条件は当社にとって有利になるかもしれない。
また、2012 年にエムスリーが ORCA 対応の電子カルテでトップの CMS を買収(4 億円)し
たが、当社がここと直接バッティングしているわけではない。地域医療連携については、
大病院については富士通など大手が、地域の診療所(クリニック)については当社の出番
という棲み分けが成り立つといえる。
今後 1~2 年は EHR の進展と、ビジネスとしての立ち上げに腐心する局面となろう。1 つ
の可能性は、当社が得意とする分野を先方が切り出して、連携することである。100~200
億円の資金を要することになろうが、本社ビルを活用すれば、ファイナンス面で対応はで
きなくはない。当社の専門領域なので、マネジメントについても問題ない。そうなれば、
当社グループは、新しいポジションを築くことができるうえ、EHR、PHR の促進にも大きく
貢献できることになろう。
5.企業評価
電子カルテの黒字化のタイミングに注目
業務連携効果に期待
2014 年 3 月に自己株式の処分として、5 億円の第三者割当増資を行った。その相手先の
エプソン販売とは、レセコン周辺機器で取引があるので、その関係の強化を図ったもので
ある。2015 年 3 月には、メディパル HD への第三者割当増資で業務連携の強化を図る。
2014 年 3 月期で、売上高経常利益率は 20.1%、ROE は 17.2%であった。2015 年 3 月期は、
同 15.0%、同 11.2%に下がろう。2016 年 3 月期は、同 17.8%、同 15.3%へ回復するとみて
いるが、今後、医科システムの売上高が増えてくると、プロダクトミックス上営業利益率
は下がる可能性がある。一方で、本社ビル(ブリックビル)の不動産事業の回収が進み、
ウエイトも下がってくるので、総資本回転率は上がってくる。よって、ROE では 14%以上を
確保することは十分可能であろう。
過去の大型投資では、本社ビルへの投資(約 100 億円)があった。今後大型の M&A があ
れば、その時は外部ファイナンスが必要になろう。自己資本(92 億円)の範囲であれば、
問題なく対応できるので、どこまでシナジーが発揮できるかに依存しよう。
医科向けの採算が薬局向けより低いのは、まだ規模が小さいこと、医者向けは 1 件 1 件
訪問して決める必要があり、何件かがまとめてきまる薬局向けより手間がかかるからであ
る。今後は医科システムの中で、ユニコンとのシステムの統一をどのように進め、課金シ
ステムをどのように導入するかである。次の検討課題として手が打たれていくことになろ
う。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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電子カルテの販売成果とアベノミクスの EHR 推進が鍵
調剤システムは、他社が真似のできない課金型ビジネスモデルとして確立したので、キ
ャッシュ・カウ(金のなる木)として、収益力は向上した。そこで電子カルテを軸にした
EHR のビジネスモデルに先行投資をしている。ここには、かなりの M&A や人材投資を行う必
要があり、ビジネスモデルの確立には一定の努力を要するので、全体の企業評価はBとす
る。
(企業評価のレーティングについては、表紙を参照)
直近の株価(3 月 11 日)でみると、PBR1.55 倍、ROE11.2%、PER13.7 倍、配当利回り 2.5%
である。株式市場において一定の評価は受けているが、新中期計画ではこの 1~2 年業績の
踊り場にあるという認識である。電子カルテでは後発であるが、営業面でのシナジーを出
す余地は大きい。本格的普及が見込めることから、一定のシェアをとることはできよう。
電子カルテは今後 2 年で黒字化の展望が見えてくれば、マーケットでの評価も高まって
こよう。データセンターを活かした EHR、PHR への広がりが本格化してくれば、全く新しい
ステージに入ろう。國光社長は大いなるビジョンと情熱を持って、勝負をかけている。期
待できる局面にあるので注目したい。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
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