ブース 番 号 10 問合せ先 テーマ 岡山大学 廣畑 聡 急性低酸素をターゲットにした診断・治療用分子の研究 大学院保健学研究科 検査技術科学分野 生体情報科学領域 【概 要】 ADAMTS1(A disintegrin metalloproteinase with thrombospondin motifs-1)は細胞外マ トリックス分解酵素であるメタロプロテアーゼファミリーに属する。我々はこれまでの研究で、 ADAMTS1 は心筋梗塞などの虚血性疾患の血管内皮細胞に一過性に発現誘導されることを発見し た。ADMTS1 は速やかに血中へと移行するために、例えば臨床面では急性心筋梗塞患者の血中 ADAMTS1 レベルは入院時に健常人より明らかに高値となることを見出し(国内特許取得済 特許 第 4195492 号)、さらに、興味深いことに心臓カテーテルなどによるインターベンション治療で虚 血状態が解除されると4時間以内に血中レベルが低下し、健常人レベルまで戻ることを新たに発見 し、虚血状態のモニタリングにも応用できることを発見した(国内特許取得済 特許第 5651890 号)。 ADAMTS1 の発現誘導は血管特異的であり、少なくとも HIF-1(低酸素状態においてのみ働くメ ジャーな転写因子)が ADAMTS1 の発現誘導を直接制御していることをプロモーター解析により明 らかにし、この原理を応用することで、虚血状態の生体組織へ特異的目的遺伝子を送達するベクター として応用できることを明らかにして特許を取得した(特許第 5493231 号)。この原理はがん組織 における虚血エリアへの遺伝子導入にも応用可能であると考えられ、抗がん剤に抵抗性を持ち、放射 線治療にも抵抗性を持つとされる腫瘍内低酸素領域への遺伝子特異的導入法として利用できる可能 性がある。 【新規性・独自性】 がんの治療補助として放射線療法や化学療法の効きにくい部位へ特異的に遺伝子を一過性に発現 させる方法として有用と考えられる。そのため、副作用が出にくいと考えられ、アポトーシス誘導遺 伝子などを組み込んで効果を検証したいと考えているが、どういった固形がんに対して有効である か、またがん組織内の低酸素状態をモニタリングするのにも応用可能であると考えられるが、どうい ったがん組織が良いターゲットとなるのかスクリーニングが必要である。 sham 6h 12h 12h-BF A C 図1:マウス下肢虚血モデルへ遺伝子導入した緑 色蛍光タンパク(GFP)が 12 時間後に観察される 研究進度 共同研究等 の 意 向 □アイディア段階 □基礎研究段階 ■応用実用化研究段階 あり 37 B 図2:導入された緑色 蛍光タンパクは虚血 組織の血管に局在し ている(A:緑=導入 された GFP, B:赤= 血管内皮細胞, C:A と B を重ねた画像) □試作・実証試験段階
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