旭化成が電池材料事業を2600億円で買収―格付に響かず

NEWS RELEASE
2015年2月24日
旭化成が電池材料事業を2600億円で買収―格付に響かず
旭化成(証券コード:3407、発行体格付=AA-)は 23 日、電池材料事業などを手掛ける米 Polypore
International を買収し完全子会社にすると発表した。Polypore は、これに先立ち医療・工業用膜事業
を約 10 億米ドルで米 3M に譲渡する。この金額を控除し Polypore の純有利子負債を加えた買収額は約
22 億米ドル(約 2600 億円)。各国競争法当局等の承認が必要で買収完了は 2015 年 4 月以降の見込み。
買収対象事業は、リチウムイオン二次電池(LiB)用セパレータ「CELGARD」と鉛蓄電池用セパレータ
「DARAMIC」。ともに一定の市場地位を築いている。旭化成は LiB 用セパレータ、「ハイポア」を擁し民
生ハイエンド分野で世界首位の座にある。旭化成は湿式膜、Polypore は乾式膜を得意とし、技術面での
シナジーを期待できる。今回の買収は、成長が見込める車載用の需要を捕捉していくのが狙いだ。
買収事業の 2013 年の EBITDA(利子・税金支払い前、償却前利益)は約 1.2 億米ドル。それとの対比
で買収金額の負担は重い。ただ、旭化成は大手化学会社の中では資本負債構成が良好だ。買収資金を全
額有利子負債で賄っても、ネット D/E レシオ(純有利子負債の自己資本に対する倍率)は 0.5 倍未満に
とどまり、AA ゾーンとして問題のない資本負債構成を維持できるとみられる。
旭化成は 2015 年度まで 5 年間の中期経営計画で成長の追求を掲げ、1 兆円の成長戦略投資を推進中。
このうち 4500 億円を M&A(合併・買収)に充てる方針で、これまでにクリティカルケア(救命救急医療)
の米 ZOLL 買収などに約 2000 億円を投じてきた。今回の買収はその残りに当たり、投資負担は格付にあ
る程度織り込んでいる。そうした面からも、本件だけをもって格付を変える必要はないと判断している。
LiB 用セパレータは、既存プレーヤーの能力増強や新規参入の活発化で競争が激しくなっている。製
品の価格には下落圧力が強まる一方、需要は、電気自動車市場が大きく成長するかにかかっている。今
回の買収で、同分野での競争優位を高め、グループへの利益貢献を拡大させていけるか、見守っていく。
主任格付アナリスト:鈴木
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