砂防施設点検における熱中症予防対策について 発注者 新庄河川事務所

立谷沢7
砂防施設点検における熱中症予防対策について
発注者
新庄河川事務所
立谷沢川砂防出張所
施工者
株式会社
業務名
立谷沢川流域砂防施設等点検業務
発表者
主任技術者
庄内測量設計舎
飯塚
誠
1. はじめに
本業務は、最上川水系立谷沢川流域における砂防施設等の点検を行い、現地状況および点検結果を
報告するものである。点検対象施設は、立谷沢川流域の砂防施設 47 施設であり、点検箇所は、主堰堤、
副堰堤、水叩、側壁、法面、護岸、周辺地山等、その他主要工作物(流路工、工事用道路及び橋梁含
む)である。点検は、定期点検と臨時点検に区分される。定期点検は、毎年 1 回以上、全施設につい
て実施するものである。臨時点検は、施設の異常時、または基準の降雨量及び地震震度階を超えた場
合に行うものであり、47 施設のうち主要施設 15 施設を対象としている。工期は、平成 26 年 5 月~平
成 27 年 3 月までの 11 ヶ月間である。今年度の砂防施設点検は、1 月末時点で定期点検を 1 回(47 施
設)
、臨時点検を 4 回実施している。
砂防施設は、立谷沢川流域の松の木下沢、板敷川、科沢、丑ノ沢、水沢川、工藤沢、妹沢、御蔵沢、
前の川、角沢、伝五沢、玉川、松沢、赤沢川、本沢、濁沢川、立谷沢川本川等に広く分布する。点検
時は V 字谷に設置された林道及び工事用道路を通行する。近年、工事用道路の路肩崩落や斜面崩壊、
河川による工事用道路の浸食が多く、点検は徒歩で移動する機会が多くなっている。本稿では、点検
時に本業務で実施した安全対策のうち、熱中症の安全対策について紹介する。
2. 熱中症における安全対策
熱中症とは、暑い環境で生じる健康障害の総称で、4つの
種類がある。
暑熱障害の軽いものから順に、①熱失神(めまい、
一時的な失神、顔面蒼白)、②熱けいれん(筋肉痛、手足がつ
る、筋肉がけいれんする)、③熱疲労(全身倦怠感、嘔吐、頭
痛、集中力や判断力の低下)、④熱射病(体温が高い、意識障
害、反応がにぶい、言動が不自然、ふらつき)などの症状があ
る。重度の熱中症になると最悪の場合は、死に至るケースも
「黒球式熱中症指数計」(熱中アラーム)
ある。
高温多湿な作業状況では熱中症のリスクが大きいため、現場での熱中症予防対策が重要である。
現場での予防対策は、主に①WBGT値(暑さ指数)の低下、②熱への順化期間を設ける、③自覚症
状の有無にかかわらず水・塩分を摂る、④透過性、通気性の良い服装、⑤睡眠不足、体調不良等の確
認があげられる。
当社では、WBGT値(暑さ指数)を活用し、現場の作業環境管理に努めた。現場にWBGT値を測
定できる、
「黒球式熱中症指数計」(熱中アラーム)を持ち込み、気温、湿度、WBGT値を測定しなが
ら点検を実施した。
WBGT値は、暑熱環境による熱ストレスの評価を
行う暑さの指標であり、次式により算定される。
表-1「WBGT値と気温、相対湿度との関係」
①屋内、屋外で太陽照射のない場合(日かげ)
WBGT 値=0.7×自然湿球温度+0.3×黒球温度
②屋外で太陽照射のある場合(日なた)
WBGT 値=0.7×自然湿球温度+0.2×黒球温度
+0.1×乾球温度
WBGT値の評価を表-1「WBGT値と気温、相対
湿度との関係」に示す。WBGT値によって、①注意
25℃未満、②警戒 25~28℃、③厳重警戒 28~31℃、
④危険 31℃以上の4 段階の「温度基準域」に区分さ
れる。
砂防施設の点検では、点検ルートによっては、半日
以上徒歩の場合やひと山を越える場合もあり、休憩場
所を確保することは難しい。現場では、WBGT値を
表-2「現場作業労働安全衛生点検簿」
確認しながら、水分・塩分の摂取や木陰での休憩を行
い、身体疲労の回復に努めた。
今回現場で使用した「黒球式熱中症指数計」は、危
険度区分を定期的にブザーで教えてくれる機能がある。
幅 58mm×高さ 108mm×奥行 36mm、重さ 65g とコンパク
トであり、携行して作業を行うことができた。
その他の熱中症予防対策として、表-2に示す「現場
作業労働安全衛生点検簿」を作成し、①健康状態(午前
と午後)、②服装チェック、③装備品の確認を実施し、
予防に努めた。
3.
おわりに
弊社では定期的に労働安全衛生委員会を開催し、労
働災害を防止するための話し合いが行われ、安全につ
いての理解を深めている。日頃から安全教育と安全の意義の理解を根気良く繰り返し行い、作業員一
人一人の安全に対する意識を高め、安全のルールをいつも実行できるよう努めていきたいものである。
最後に、
「黒球式熱中症指数計」よりWBGT値を確認し、熱中症予防対策を行ったことで、点検作
業を無事故で終えることができました。監督職員及び点検員並びに関係諸氏に対し深く感謝申し上げ
ます。