運動を継続する仕組み2 (エネルギー代謝) • 代謝の基礎 • スポーツとエネルギー代謝 • グルコースの調節 消化管の構造 • 消化管からの静脈は門 脈を介して,肝臓へ入る. ただし,直腸の一部を除 く. • 食物は逆行しないが,嘔 吐は例外.延髄からの 指令で起こる.繰り返す と,胃酸のH+やK+が失 われるので,アルカロー シスや低カリウム血症に も注意. 代謝: 異化と同化 • 生体に必要なエネルギーを,炭水化物, タンパク質,脂肪をCO2と水まで酸化分解 して得る(タンパク質は尿素を生じる) • 異化作用:生体に取り込まれた食物が代 謝過程を経て酸化分解される反応. • 同化作用:将来エネルギーとして利用され やすい高エネルギーリン酸化合物などの 形で合成保存する過程. エネルギー • 生体が消費する総エネルギーは以下の総和となる. • 基礎代謝 生命維持に最低限必要なエネルギー – 電気的エネルギー 神経での伝導のため – 運動エネルギー 呼吸循環系・消化器系の運動保持のた め – 熱エネルギー 体温保持のため – 化学的エネルギー 物質合成のため • 安静時代謝 座位や食事摂取のみで安静にしてい るときのエネルギー.特異動的作用などにより基礎 代謝よりも20%程度亢進している. • 活動時代謝 身体活動に必要となるエネルギー 運動を行うためのエネルギー ATP • 筋の収縮を直接引き起こすエネルギー源 はアデノシン3リン酸(ATP).分子量551. • 1分子で約11kcalのエネルギーが遊離する. • 体重70kgで筋が約30kg.筋内には 600mmol程度のATPがある. 11 kcal/mol×0.6 =6.6kcalしかないので,直 ぐに使い果たしてしまう.=直ぐに供給す る必要 運動を行うためのエネルギー クレアチンリン酸 • 筋のATP濃度が低下すると, CP+ ADP⇒ATP+クレアチン という働きでATP が再生される. • この時酸素は必要ない. • CPの蓄積量は20mmol/kg程度.ATP産生 速度は速い(4mol/分)が,計算上わずか 10秒程度で使い切ってしまう. 運動時のATP,CPの変化 運動を行うためのエネルギー 解糖 • 主にグリコーゲンという形で筋に蓄えられてい るブドウ糖(筋1kg当たり 88mmol:CPの4倍) をピルビン酸2分子まで分解する.この際2分 子のATPが産生される. • 筋中のグリコーゲンを使い尽くすまでの時間 は約33秒. • ATP産生速度は2.5mol/分. • ピルビン酸が後述のTCAサイクルへ入れない と,乳酸に変換される. Wikipedia解糖系の項より引用 運動を行うためのエネルギー 有酸素代謝 • ピルビン酸とアセチル補酵素Aとが,ミトコンドリア 内のクエン酸回路に入り,CO2と水に分解される. • サイクルを1回転する度にATP1分子と水素が4分 子作られる.水素を水にする際に酸素が必要. • 1分子のグルコース(実際には2分子のピルビン 酸)から38分子のATPを産生する. • ATP産生速度は遅いが,脂肪(ベータ酸化された 脂肪酸もこの回路に入れる)や糖の貯蔵量は多い ため,長時間にわたってATPを産生できる. Wikipediaクエン酸回路の項より引用 スポーツとエネルギー代謝 • CP – 直ちに筋収縮に用いることが可能. – 容量が小さく,パワーが大きいので,短時間で使い果た す • 解糖 – 酸素を用いず,比較的速くエネルギー産生 – 使い果たすのには数十秒を要する. • 有酸素代謝 – 糖と脂質の両者を水とCO2に完全に分解する. – ATPが得られるのに時間がかかる. – パワーは小さいが,理論的には無限に持続可能 スポーツとエネルギー代謝 血糖値の維持 血糖値を調節するホルモンの働き 体重の維持 体重の維持 メカニズム • 脂肪細胞からレプ チンが産生される. 脂肪が増えると濃 度増加. • 視床下部は,レプチ ン濃度が高いと,食 欲を低下させ,同時 にエネルギー消費 を増やす. 寄生虫について • カイチュウ 卵は糞便と共に体外へ排出される. 成熟卵になり経口感染.卵殻が胃液で溶けると, 子虫が外へ出て小腸に移動する.腸壁を食い 破って体腔内へ出たり,血管に侵入して肝臓を 経由して肺へ行くこともある.0.1cmくらいに成長 すると,気管支を上がって口から飲み込まれて 再び小腸へ戻り,成虫になる.子虫から成虫に なるまでの期間は3ヶ月余りであり、寿命は2年か ら4年である。 • 1日に20万もの卵を産むので,検便で簡単に見 つけられる. 寄生虫 • アニサキス 1~3cmの幼虫はサバやイカ に寄生している. • ヒトの体内では成虫になれないが,消化管 壁にもぐりこもうとする際に,激痛を生じる. O-157,O-111など • 腸管出血性大腸菌による感染は、タンパク 質合成を阻害する毒素たんぱく質(べロ毒 素)を産生する. • 菌の経口摂取によって起こる. • ヒトを発症させる菌数は50個程度と少なく, 強毒性.二次感染が起きやすい. • この菌は強い酸抵抗性を示すので,胃酸 でも生き残り,腸まで達する. 運動を継続する仕組み3 体温調節 • ヒトの体温は比較的一定に 保たれている.この恒温性 は核心温にのみ適用され る.四肢や皮膚は環境温 に影響される. • 核心温を一定にするため に,熱の産生・吸収と熱の 損失とのバランスを取り, 体温調節を行う. 自律性体温調節 • 暑い⇒ 発汗,皮膚血流増加 • 寒い⇒ 皮膚血流減少 行動性体温調節 • 暑い⇒ クーラー,脱衣,扇風機 • 寒い⇒ ストーブ,布団,運動 変温動物 • 自律性体温調節 × • 行動性体温調節 ○ • 持久力 小 恒温動物 ○ ○ 大 • 恒温動物は外部環境から独立しているため, 高い持久力を保つことができる. 熱産生の割合 • 安静時には熱産生の約6割が内臓. • 運動時には9割が筋由来となる. 熱損失のメカニズム • 放射:皮膚の外の物体の温度が皮膚よりも冷たいと,体表面から熱が奪 われる. • 伝導:身体に接触した冷気や冷たい物体に皮膚面から熱が伝わる.奪 われる熱量は対流によって増大する. • 蒸発:汗が蒸発した際の気化熱によって熱が奪われる.水1Lで約 580kcal. • 環境温が36℃にもなると,熱損失は蒸発のみによって行われる.さらに 高温では,放射,伝導,対流によって熱が身体に吸収されるため,より大 きな熱量を蒸発させる必要がある. 末梢の温度受容体 汗腺 • エクリン腺はほぼ全身 に分布し,体温調節性 発汗に関与する. • アポクリン腺は腋下,外 陰部に分布し,種種の 分泌物を含むため,性 行動と関係が深いと考 えられる. 汗腺の適応 • 汗腺全てが発 汗できるわけ ではなく,一部 の能動汗腺の みが発汗. • 能動汗腺の発 達は3歳頃ま でに終わる. 視床下部の役割 • 温度変化に応じて発火が増減する神経が 視床下部内にある. 視床下部での体温調節の統合 熱中症 • かかりやすい環境 • 前日より急に温度があがった日 (特に梅雨明け) • 温度が低くても多湿であれば起こりやすい(25℃で起こることも ある) • 普段室内作業をしている人が、急に外に出て作業した場合 • 屋外作業の初日~数日間が発症しやすい(2週間程度で適応) かかりやすい個人 • 幼児 • 高齢者 • 肥満者 (学校管理下での熱中症死亡事故の7割は肥満者) • 熱中症にかかったことがある人 • 脱水傾向にある人(下痢等) • 発熱のある人 • 睡眠不足の人 熱中症1度 • 四肢や腹筋などに痛みをともなった痙攣 (腹痛がみられることもある) ○多量の発汗の中、水(塩分などの電解質が入っていな い)のみを補給した場合に、起こりやすいとされている。 ○全身の痙攣は(この段階では)みられない。 失神(数秒間程度なもの) ○失神の他に、脈拍が速く弱い状態になる、呼吸回数の 増加、顔色が悪くなる、唇がしびれる、めまい、などが見ら れることがある。 ○運動をやめた直後に起こることが多いとされている。 ○運動中にあった筋肉によるポンプ作用が運動を急に止 めると止まってしまうことにより、一時的に脳への血流が減 ること、また、長時間、あつい中での活動のため、末梢血 管が広がり、相対的に全身への血液量が減少を起こすこ とによる。 熱中症2度 • めまい感、疲労感、虚脱感、頭重感(頭痛)、失 神、吐き気、嘔吐などのいくつかの症状が重なり 合って起こる ○血圧の低下、頻脈(脈の速い状態)、皮膚の蒼 白、多量の発汗などのショック症状が見られる。 ○脱水と塩分などの電解質が失われて、末梢の 循環が悪くなり、極度の脱力状態となる。 ○放置あるいは誤った判断を行なえば重症化し、 Ⅲ度へ移行する危険性がある 熱中症3度 • 意識障害、おかしな言動や行動、過呼吸、 ショック症状などが、Ⅱ度の症状に重なり 合って起こる ○自己温度調節機能の破錠による中枢神 経系を含めた全身の多臓器障害。 ○重篤で、体内の血液が凝固し、脳、肺、 肝臓、腎臓などの全身の臓器の障害を生 じる多臓器不全となり、死亡に至る危険性 が高い。 熱中症の予防 • 運動前に消化管の負担にならない程度に出来るだけ多く の水分を取る.500mL程度が望ましい. • 発汗によって失った水分と塩分の補給を頻繁に行う.1時 間に500~1000mL.冷たい飲み物の方が,胃からの排 出速度が速いため好ましい.逆に,糖分が高いと,この 速度が遅くなる. • 水分のみ補給し続けていると体液のNa濃度が希釈され, ひどくなると水中毒状態になるため,注意を要する. • 十分に休憩を取りながら運動・作業する. • 日射を防ぎ,通風を確保する,冷剤を利用する,水の気 化熱で体温を下げるなどを行う. • 環境に注意する(後述) 熱中症予防のための運動指針 • WBGT(湿球黒球温度)の算出方法 屋外:WBGT=0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度 屋内:WBGT=0.7×湿球温度+0.3×黒球温度 熱中症の応急処置 • 水やスポーツドリンクを飲ませる.ただし,スポーツドリンクでは ナトリウム濃度が低いため,重度の脱水時にこれを与えると低 ナトリウム血症を誘発する(特に乳幼児).その場合,経口補水 塩(水1Lに砂糖大さじ4,塩小さじ1/2)あるいは塩の投与が望 ましい. • 霧吹きで全身に水を浴びせて,気化熱で体温を低下させる.口 に水を含んで吹きかけても良い.同時に,冷たい缶ジュースや 氷枕などを腋下,股などの動脈が集中する部位に当てる. • 涼しい場所で休ませる.木陰やクーラーの効いたところで衣服 を緩める. • 病院などに連れて行く.躊躇せずに救急車を呼ぶ. • 脱水していれば,汗をかくことができないため,汗をかいていな くても,また体温が高くなくても熱中症の可能性はある. • 自覚症状で熱中症だと感じることはない.早めに対処する.
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