「熱中症と水中毒」 熱中症について 【熱中症とは】 その字の通り、 『熱に中(あた)る』ことで、暑熱環境で発生する障害の総称です。スポー ツ種目の中ではランニング時の発生が多く見られます。まだまだ残暑が続いており、ラン ナーの皆さんは特に注意が必要です。 【分類と対応方法】 〈 重症度 I 度:軽症 (熱失神、熱けいれん) 日陰で休み、水分補給をします 〉 症状:めまい、大量の発汗、筋肉痛、筋の硬直(こむら返り)など。 対応:通常は入院を必要としません。日陰で休み、水分補給をしましょう(水と塩分を補給)。 〈 重症度 II 度:中等症 (熱疲労) 病院にかかり、輸液を受ける必要があります 〉 症状:頭痛、嘔吐、倦怠感、虚脱感、集中力や判断力の低下、など。 対応:入院治療が必要なことがあるので病院を受診しましょう。 →まず、涼しいところで足を高くして休養。口から摂取できる場合は、水分、塩分 を補給しましょう。自分で水分を摂れない場合は輸液(点滴)が必要です。 〈 重症度 III 度:重症 (熱射病)救急車で救命医療を行う医療機関に搬送し、入院治 療の必要があります 〉 症状:意識がもうろうとする、話しかけても応答が鈍い、言動がおかしい、意識がない、 けいれん、高体温、汗が止まる、など。 対応:救急車で救命医療を行う医療機関に搬送し、入院治療の必要があります →冷却処置(首、脇の下、足の付け根を氷で冷却)をしながら救急車を呼びましょ う。 【熱中症の予防】 1.水分補給:暑い時にはこまめに塩分の入った水分(スポーツドリンクなど)をとるこ とが大切です。水分が失われて体重が2~3%減ると、運動能力や体温調 節能力が低下し、熱中症になる可能性が出てきます。運動による体重減少 が2%をこえないように水分を補給しましょう。また、大会前には塩分摂 取を少し増やしましょう。 2.飲水休憩:気温の高いときには飲水休憩をとって、体温の上昇を抑えるようにしまし ょう。 3.ウエアの工夫:運動の際のウエアも重要です。素材によって含気性、通気性、保温性、 吸湿性、放湿性などが異なります。走る時の天候に合わせて、気に入 ったものを何種類か準備しておくといいでしょう。 【暑さ指数(WBGT)】 「暑さ指数」という指標があります。環境省熱中症予防情報サイトでは、6 月1日からこの 指数が公開されています。 日本体育協会は熱中症予防のための運動指針を示しています。 WBGT 31 以上:運動は原則禁止。 WBGT28~31:厳重警戒。激しい運動は中止。 WBGT25~28:警戒。積極的に休息。 WBGT21~25:注意。積極的に水分補給。 WBGT21 まで:ほぼ安全。適宜水分補給。 水中毒について ・・・水中毒をご存じですか? 水の飲みすぎにも注意!! 【水中毒とは】 水は摂ればいいというものでもありません。水のとり過ぎにも注意です。大量に汗がでた 時には、水だけを飲むと血液の塩分濃度が下がり、発汗量に見合った量の水を飲めなくな ることがわかってきました。これを自発的脱水と呼んでいます。それでも、熱中症を心配 して水だけを飲み過ぎ、塩分の補給をしないと血液中のナトリウム濃度がさらに低下して しまいます。これが“水中毒”の状態です。めまいや吐き気、息切れ、手足のむくみがみ られ、重症の場合は頭痛(脳の膨張による) 、意識障害をおこします。極度の水中毒になる と昏睡状態に陥り、致命的になることもあります。水中毒の報告は近年急激に増えていま す。 【水中毒の予防】 1.適切な水分をとる ①塩分:水分の組成としては 0.1~0.2%の食塩を含んだものが適しています。市販の飲料 を選ぶ場合は成分表示を見てください。100ml 中にナトリウムが 40~80mg 入 っているものがいいでしょう。 ②糖分:運動量が多い場合は糖分も補給しましょう。4~8%の糖分を含んだものがいいで しょう ③飲む量:普段の練習の前後で体重を計り、運動による体重減少が2%をこえないように 水分を補給しましょう。練習の後に体重が増えているようなら次回の練習では 水の量を減らしてみましょう。レース中に汗の量や体重を測定するのは困難で す。普段の練習の時に、ランニング前後、ランニングの途中などに体重の測定 も行うようにして、水分補給についても練習をしてみてください。 2.適当な塩分をとる ①大会前の食事 汗を多量にかく方、特にシャツが白くなる方は汗に塩分が多く含まれている方です。大 会の数日前から少し塩分を多めにとりましょう。また、朝食は必ず食べましょう。 ②塩飴 レースで 4 時間を超えそうなランナーの方は、 「塩飴」を持参し途中でなめるといいでし ょう。 3.痛み止めの薬を飲んでいる方へ 非ステロイド系の抗炎症薬(イブプロフェンなど)を飲んでいる人は、水中毒になる可能 性が高くなるという報告があります。薬剤が腎臓の機能を低下させるためと言われていま す。内服薬を飲んでいる方は特に注意が必要です。 【まとめ】 水分摂取は、少なければ脱水症になり、多すぎると水中毒になるという、その適量のバ ランスを保つのはなかなか把握しにくいものです。普段の練習の段階で、体重変化を意識 した水分のとり方を考えてみてください。 東京陸上競技協会 医事委員長 三橋 敏武
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