中尊寺本堂

耐震改修優秀建築賞
建築物名称
中尊寺本堂
耐震改修工事竣工年月
2012 年 3 月
耐震改修関係者
宗教法人中尊寺
株式会社大林組
推薦理由
世界文化遺産に登録された平泉中尊寺であるが、この本堂は明治 42 年(1909 年)の建立で、延べ面積
537.70 ㎡の土壁を主な耐震要素とした軸組構造の伝統木造建築物となっていた。
平成 23 年東北地方太平洋沖地震により、土壁の漆喰ひび割れや部分落下、虹梁の抜け出しおよび化粧長
押の落下が生じた状況を踏まえ、耐震性の見直しを行い構造安全性向上のため耐震補強を実施したもので
ある。
改修は、
「外観や使い勝手を変えない、維持保全が容易なこと、使いながら工事を行う」という方針のも
と、RC 造基礎新設、床下木組みに筋交い追加と足固め、内陣床改修、土壁の高耐力壁への変換およびひび
割れの補修、屋根面の水平ブレース追加を実施している。
特に、
「スーパー板壁」と称している耐力壁は、落とし込み板壁工法に、板壁パネル相互を白樫材のダボ
および四周の柱および横架材とを“ほぞ”とビスにより一体化する改良を加え、高耐力壁化を実現した独
自性あるものである。この板壁を内陣三方の既存壁部位および既存小壁部位で置換し、耐震安全性を確保
する設計としている。
改修後の耐震性能は、この板壁の載荷実験から得られた剛性・耐力を適用した限界耐力計算法により、
重要文化材(建造物)耐震診断基準による安全確保水準を満たすことが確認されている。
この改修工事は、伝統木造建築物の美観性・機能性保持に加え、木質構造の特質を生かした適切な耐震
性が確保されており、表彰にあたいする優れたものである。
(文責:木原委員)
耐震改修前外観
耐震改修後外観
1
耐震改修概要
スーパー板壁
スーパー板壁による補強状況
漆喰塗り仕上げ
来迎壁(杉板)
スーパー板壁の仕上げ
2