解答と解説 - 難関私大文系専門 増田塾

2015 入試解答速報
難関私大文系専門予備校
2 月 17 日
慶應義塾大学(総合政策学部)⼩論⽂
解答と解説
解 答
(満点︓200 点)
問1
資料 4
数量的な尺度によるデータの収集・分析は命題を客観的な形で表現し得る。この場合の客観的とは命
題の趣旨に明確な意味を持たせ、複数の命題間の関係を明確に示すことを表す。そしてその結果命題の
真偽を経済的に検証することを可能にし、さらに命題間の論理的関係を明らかにする。以上による意思
決定は個々⼈の主観的感情を排除できる⼀⽅で、議論に⾒せかけ上の正確さを与え、判断を誤らせる危
険も多分にあるという側面もある。
(一九九字)
資料 6
本来戦略策定には帰納法と演繹法の絶えざる循環が必要とされ、どちらの⽅法にも⼀般的法則性とい
うものが不可⽋である。太平洋戦争時の⽇本軍は帰納法的な思考を得意とし、経験した事実に基づくイ
ンクリメンタリズムによる戦略策定を⾏った。それは不確実な状況下では有効なものである。しかし⽇
本軍は主観的な場の空気を尊重し、量数に換算できる⼀般的法則性を軽視したため、科学的な戦略策定
とは呼べないものになってしまった。(二〇〇字)
問2
解答欄①
(1)
解答欄②
指標 1︓⽣活習慣病率(%)=Psic/Ptot×100
Psic=医療機関にて⽣活習慣病と診断された数(人)
Ptot=生活習慣病の検査対象者(人)
指標 2︓医療費負担率(%)=Mmed/Minc×100
Mmed=⼈⼝⼀⼈当たりの国⺠医療費(円)
Minc=⼈⼝⼀⼈当たりの国⺠所得(円)
1
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解答欄③
病気の原因には多種多様なものがあるが、医療機関への過度の信頼が⽣活習慣病を加速させるという
可能性を鑑み、国⺠の医療費負担の割合と⽣活習慣病率を⽐較することを提案する。国勢調査を基に、全
国の⽣活習慣病の検査対象者のうち、実際に⽣活習慣病と診断された数と⼈⼝⼀⼈当たりの国⺠所得の
うちの⼈⼝⼀⼈当たりの国⺠医療費を年度毎に割り出す。それらの推移を⽐較した上で、国⺠所得に対
する保険料とそれに伴う医療費が占める割合が、⽣活習慣病の罹患率の上下にどのような影響を与える
かを調査する。以上により罹患率が下がる、つまり国⺠が健康意識を⾼め⽣活習慣病予防に向かおうと
する適正な医療費について判断を⾏うことができる。(三〇〇字)
問3
意思決定の際に用いられるデータは事実を正確に表すようでいて、実はその場の人々による恣意的な
判断を補強するために歪曲されている場合がある。例えば問 2 の指標は医療費における国⺠負担率に対
する「政府の事前の意図」、つまり保険料の増額を企図した政府が恣意的に活⽤する可能性がある。実際
⽣活習慣病には仕事や⾷事など様々な⽣活形態が要因として挙げられる。それを⼀⾒客観的な数量デー
タを提示することである特定の要因を重要なものとして強調することで、国⺠はまさに「⾒せかけの正
確さ」によって予め企図された目的に誘導されてしまうというのが、数的指標による意思決定の際に加
味しなければならない限界である。
(二九二字)
(※配点は予想配点です)
2
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解 説
SFC⼩論⽂では「各問の解答内容を関連させる」
「SFCの理念である問題発⾒・解決能⼒のアピー
ル」という⼆つの要素が問われる。今年度は数的な指標の提案が求められる問 2 で「問題発⾒⼒」が試
された。設問内の指標例から複雑な数式が求められている訳ではないことが伺える。つまり数学的知識
よりも設問が要求する形式で適切な「問題発⾒」ができるかどうかが評価のポイントとなる。また問 3 で
は「問題解決能⼒」が試されているが、今回は問題解決策を考察する際にその「限界」についても考慮で
きているか(つまり現実味がなかったり矛盾を含むような独善的な解決策になっていないか)を問うと
いう、若⼲⼯夫を凝らした出題となった。とは⾔え通常の解答でも⽭盾のある論述は当然低評価になる
わけだから、特別考え方を変える必要はない。また資料でも数量的データを⽤いる際の限界については
様々に提示されているから、問 2・3 に活⽤できるような資料を問 1 で要約する、という風に考えれば各
問の解答を関連付けられることもできる。解答例では資料 4・6 にて数量データが⼈間により主観的(恣
意的)に活⽤されることによる限界を指摘している点に着目し、これを基に「適正な医療費」を策定する
際に、表面的な病気予防や健康増進とは「別の目的」を満たすようなデータが恣意的に採用される可能性
を取り上げ、以上を問 1〜3 それぞれが関連するような形でまとめた。問 2 でつまずく受験生も多かった
かもしれないが、悩んだ時こそ基本に戻って「各問の解答内容を関連させる」
「SFCの理念である問題
発⾒・解決能⼒のアピール」をいかにすべきか、という観点から解答を作り上げていく、という意識を持
つべき。
3
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