解答と解説 - 難関私大文系専門 増田塾

2015 入試解答速報
難関私大文系専門予備校
2 月 13 日
慶應義塾大学(経済学部)⼩論⽂
解答と解説
解 答
(満点︓70 点)
【設問A】
普遍的な真実の体系としての知恵に⽐べて、知識は常に多様な新しい情報を分節化して組み込み、既
存の知識とも連続させ順序配列のある知の統⼀を形成する。以上は⼈間全体の⾃⼰⾰新には必須であり、
そのため⼤学での知識の学習には意義はあると⾔える。しかし⼀⽅で知識は構造上啓蒙・権威主義的な
要素が強い。また価値基準がなく、需要の平均化も難しいため消費・供給共に困難な性質を持つ。対し
て情報は各自が自主的に収集でき、実用的な価値に富み、また価値を客観的に測定でき、需要予測も容
易く市場にも組み込みやすい。そのため相対的価値観を尊重する現代の消費者は情報をより重視し、知
識の受動的な享受を避けるという現状がある。
(⼆九七字)
【設問B】
知識とは⼈間のみが創造するものではなく、むしろ非⼈間的な存在によってより豊かな知識創造が可
能になると考える。それは特定の⼈間を介さない知識の創造が、知識の持つ負の側⾯である啓蒙的な性
格を払拭するからである。例えば⼈⼯知能によるビッグデータの収集と解析などは、権威的な⼈間の関
与を避けて断片的な情報を統一させることができる。もちろんプログラマーの主義やイデオロギーが新
たな権威となるという問題は残る。しかし明⽂化された論理に基づく知識創造である点で価値基準も明
確であるため検討や修正も容易く、また暴⼒的な衝突も⽣み出さない。以上から私は、非⼈間による知
識創造という観点も含むべきと考える。(⼆九三字)
(※配点は予想配点です)
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2015 入試解答速報
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解 説
【設問A】
例年通り課題⽂の要約要素が強い問題だが、今年度はここに「⼤学教育の目的」という観点から論じよ
という⼀⼯夫が凝らされている。まずは課題⽂から「知識」の特徴を「知恵・情報」との⽐較でまとめ
てみると、以下のようになる。
普遍的な真実の体系としての知恵と同じく、知識は知の統⼀性を求める。しかしその統⼀性とは断⽚
的な情報を分節化して組み込み、常に新たな情報を受け⼊れて⾃⼰⾰新を⾏い、古い知識との連続性も
維持しながら順序配列を設ける、というものである点が知恵とは異なる。このような複雑さをもつ知識
は実⽤性という点で効⽤が⾒えにくいという印象を持たれがちである。また知識は啓蒙的・権威主義的
な要素が強い。そのため相対的価値観を尊重する現代の消費者にとっては各自が自主的に収集し、実用
的な価値に富み、またその価値を客観的に測定でき、需要予測も容易く市場にも組み込みやすい情報に
重きを置き、知識は敬遠されがちになる。(⼆九四字)
「知恵⇔知識」の⽐較から始め、ここで知識のメリットを提⽰する。続いて「知識⇔情報」の⽐較をし、
今度は知識のデメリットについて指摘する。ここに「⼤学教育の目的は知識を授けること」についての
⾒解を織り込むことになるが、独⾃の意⾒提⽰を含むとなるとさらに根拠付けが必要となり、制限⽂字
を⼤幅にオーバーしてしまいそう。そこで解答例では課題⽂の主張に合意し、論を引き継いで「現代⼈
は啓蒙的な知識の教育を敬遠しがちである」という主張を要約に組み込む形で対応した。無理に独⾃の
意⾒を⼊れ込んで要約が不充分になるよりは、こちらの⽅が評価は上がる解答となる。
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【設問B】
解答作成にあたり、まずは設問要求を確認する。まず知識は⼈間のみが創造できるのか、という問い
かけに対しての意⾒表明が求められている。ここはいきなり独⾃の意⾒を設定しようとするよりも、
「⼈
間のみが創造できる/⼈間以外でも創造できる」という問いかけに対する賛成/反対の⽴場を設定する
と論じやすい。その上でもう⼀つの設問要求「意⾒に対する理由づけ」についても、しっかりと「ここ
が理由を述べている箇所ですよ」というアピールができるような表現を⼼掛けたい。解答例では課題⽂
で指摘されていた「知識は⼈間が創造すれば啓蒙的・権威主義的性格を持つ」という知識の「負の側⾯」
に着目した。そして知識は⼈間のみが創造可能か、という問いかけに対しては「非⼈間も創造可能だと
考えるべきだ」と反対の⽴場を取り、その理由として「特定の⼈間を介さない知識の創造が、知識の持
つ負の側⾯である啓蒙的な性格を払拭するからだ」と提⽰した。もちろん非⼈間による知識創造が不可
能であればこの意⾒も無意味となるので、具体例として⼈⼯知能による知識創造を取り上げ、理由の説
得⼒を上げた。⽂字数に余裕があったので、⾃分の意⾒に対する反論を譲歩的に取り上げ、そこに再反
論を加えながら更に非⼈間による知識創造のメリットをアピールした。
以上のような展開であれば、課題⽂を意識しつつ、設問要求に応じた解答となる。短時間で評価の上が
る解答を作成するには、何より「充分な要約・設問の観察」を⼼掛けること。充分な要約からは意⾒論
述の材料が確保できる。設問から「何を答えてほしいのか」を掴めば論の展開が⾒えてくる。⼩論⽂は
「意⾒の独⾃性」をアピールすることにどうしても意識が向きがちだが、無理なく安定して評価を得る
解答を作るには「充分な要約・設問の観察」を最優先にして問題に取り組んでいくと良い。
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