解 答 - 難関私大文系専門 増田塾

2015 入試解答速報
難関私大文系専門予備校
2 月 15 日
慶應義塾大学(文学部)⼩論⽂
解答と解説
解 答
(満点︓100 点)
【設問Ⅰ】
⼈間はあらゆる対象に対し⾃分の感情を投影し類推を⾏う。そのため科学的な知識を擬⼈的な表現で
捉えることは対象全体の反応を予測することができるという実用・実践的な効果をもつ。また科学的知
識を社会⼀般に啓蒙する際にも、具体的な想像をもたらし理解を促進させるために擬⼈的・⽐喩的な表
現が⽤いられやすい。しかし本来科学的に難解な概念や事柄を平易で⽇常的な⽐喩的表現に置換するこ
とは、⾃分が了解できる範囲だけをわかったつもりになるという誤解を⽣みやすい。また科学者は本来
科学の専門用語を厳密に定義して使うが、哲学や人文科学の領域では科学的⽤語が恣意的に援⽤される。
そして各学問分野による特異的な意味付けによって⽤語の本来持つ意味が歪曲されてしまい、結果科学
の正当な理解がより⼀層妨げられる危険性がある事を筆者は主張している。(三五六字)
【設問Ⅱ】
科学的な知識は、あらゆる学問領域を横断しながら構築され、活⽤されるべきだと考える。筆者は科
学的な知識を理解・啓蒙する際の⾔葉の問題を取り上げ、定義の意味変更⾃体は許容しながらも、科学
の本質を損ねるような恣意的な表現に警鐘を鳴らしている。確かに自然科学の専門的な知に対し、他の
学問領域がまさに「権威の傘」を利⽤するような態度は取るべきではない。しかし筆者の主張は、科学
の絶対性に基づいたものにも思える。クローン技術が⽣命倫理の観点から批判されるように、科学⾃⾝
も専門性を⾼めるあまり、他の学問領域の⾒解に対し閉鎖的な態度を取ってしまっては科学⾃体の発展
も損なわれてしまうのではないか。複数の領域を横断する学際的研究の重要性が提唱される昨今、科学
的知識は他の学問に活⽤され、外部の意⾒や批判も加味しながら⾃らを⾼めていく、という意識も今後
重要になっていくのではないか。(三八二字)
(※配点は予想配点です)
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2015 入試解答速報
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解 説
【設問Ⅰ】
例年通り、設問Ⅰは要約要素の強い問題。課題⽂は⽂学部志望者にとっては若⼲馴染まないものにも
思えるが、よく読んでみると「科学的な知識を理解・啓蒙する際の⾔葉(表現)の問題」という人文科
学系ではおなじみの⾔語論に関する⽂章だとわかる。課題⽂中から抜き出すポイントは以下の四点。
①︓⼈間は感情により対象を類推する→科学的な知識も擬⼈的な表現により実⽤・実践的に理解できる
②︓科学的知識を啓蒙する際にも擬⼈的・⽐喩的表現は有効である
③︓科学的に難解な事柄を平易に表現すると、⼈は「腑に落ちる」部分のみを理解したつもりになる
④︓科学以外の学問領域が科学的⽤語を恣意的に利⽤することで科学が誤解・歪曲される
表現が科学的知識にもたらす「良い効果」が①②、「悪い効果」が③④で説明されている。
この四点を踏まえて、最終的に筆者が科学の正当な理解がより⼀層妨げられる事を危ぶんでいる点を含
めれば、充分な解答となる。
【設問Ⅱ】
「⽂章を踏まえて」という指⽰の通り、筆者の主張に対して賛成/反対の⽴場から意⾒を論じていく、
というプランを⽴てる事が望ましい。賛成派は表現が科学的知識にもたらす「悪い効果(設問Ⅰ③④)」
に着目し、科学的知識を誤解・歪曲して捉えないために⾔語表現にも注意を払うべきことを主張すれば
良い。ただし筆者と同じ主張・根拠では独⾃性の低い⾒解と評価されてしまうため、筆者とは異なる根
拠付けや、課題⽂に無い具体例などを追加して独⾃性をアピールしたい。反対派は表現が科学的知識に
与える「良い効果(設問Ⅰ①②)」を強調するか、もしくは「悪い効果」に対しての反論をしていくこと
で論じていくことになる。解答例では反対の⽴場をとり、筆者の主張が若⼲「科学偏重」的ではないか
と捉え、設問Ⅰ④に重点をあて「他の学問領域が科学的⽤語を利⽤することは、危険性もある⼀⽅で科
学をより幅広い視点から捉える契機になる」という意⾒⽴てをした。また学問分野で昨今取り上げられ
る「学際的研究(⼀つの学問分野では解決が困難な研究領域に対して、⼆つ以上の学問分野を統合して
学問横断的に進めて⾏く研究)」という⽤語を⽤いて、知識⾯でのアピールも加えた。このような知識ア
ピールも評価を上げるポイントではあるが、何より重要なのは「充分な要約・設問の観察」を心掛ける
こと。充分な課題⽂の要約からは意⾒論述の材料が確保できる。設問から「何を答えてほしいのか」を
掴めば論をどう展開していけばよいかが⾒えてくる。このような基本に忠実に解答を進めていくことが、
安定した高評価の鍵となる。
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