自己効力感と知識創造の関係性分析

自己効力感と知識創造の関係性分析:小松里山エコツアー企画を事例として
Analysis of Correlation Between Self Efficacy And Knowledge Creation
Ability: A Case of Eco-Tour Planning in Komatsu SATOYAMA Land Scape
久保 喜宜,白肌 邦生
北陸先端科学技術大学院大学, 知識科学研究科
Japan Advanced Institute of Science and Technology, School of Knowledge Science
1. 研究の背景と目的
SECI モデル(野中郁次郎,1990)に代表されるように,知識創造とは個人の内面にある知識から発
生するものであると考えられる.その時,個人の心理要素が知識創造に影響を与える可能性が高い.
これまで,場の理論や組織の観点からの知識創造に関する研究はあるものの,知識創造と心理要素の
関係性に着目した研究は十分にない.本論文では,心理要素の中でも個人が目標に到達する能力と定
義される(Albert Bandura,1997)自己効力感に着目した.心理的行動促進効果である自己効力感は知
識創造の SECI モデルの表出化・内面化において,過去の類似経験の反復による自信獲得での経験の活
用や,新規経験の獲得のための積極的行動を行うことにより,知識創造の能力に良い影響を及ぼす可
能性がある.また,自己効力感から知識創造の能力の分析を行うことは,個人の精神と知識創造の有
意的な関係性を示唆し,心理的研究によって知識創造を分析する議論を促進・発展させるために重要
である.そこで本論文では,自己効力感が与える人間の知識創造のための知識の吸収反復・活用の能
力への影響を明らかにすることを目的とする.
2. 研究方法
本研究では,自己効力感形成のための体験型フィールドワークを実施し,自己効力感が知識創造の
知識の吸収反復・活用の能力に与える影響を分析する.被験者は,東京在住の社会人学生 6 名であり,
石川県小松市日用町において「地域自然の保全から恩恵の享受」という四つのプロセスを有する体感
型フィールドワークに参加し,この体験を基に地域発展の企画案を出すことを求められた.企画案は
第三者の評価を行った後に被験者に伝達された.これを自己効力感は知識創造に対して,どのように
作用したのかに関する反応をアンケートによって調査し,SPSS のクロス表を用いて分析する.また,
体験型フィールドワークにおいて,行動から得られる知識創造ではどのような自己効力感を得られた
のかアンケートによって同様の手法によって調査を行う.現時点ではデータ収集の最中で分析が終了
しておらず,報告当日に分析結果を基にして,自己効力感が知識創造における表出・内面化にどのよ
うな作用をもたらしているのかを議論する.
3. 結果及び考察
分析の結果から,自己効力感が知識創造において表出・内面化の促進をしていることを明らかにす
るべく分析を進める.現状で収集したデータをクロス表で分析した結果から,被験者は新たな知識の
獲得,興味関心のある活動に自己効力感を得ることがわかった.個人に有用な知識・経験を得ると自
己効力感が高まる傾向があることが判明した.以上より,自己効力感が知識創造の表出化・内面化を
促進するためには,類似・新規経験の吸収反復・活用をすることが重要と考える.