2015 年 10 月 2 日 3.3. 実証的アプローチと規範的アプローチ メカニズムデザインは以下の二つの視点から考察される ・実証的(事実解明的、Descriptive, Positive)アプローチ メカニズム ( M , g , x ) とゲーム理論分析 「配分問題が実際にどのように決定されるか」 ・規範的(Normative)アプローチ 「各 state にてどのような配分が望ましいか(べきか)?」 社会的選択ルール(Social Choice Function、SCF) f : A 各 state において配分 f ( ) A が望ましい 1 代表的な SCF:効率的配分ルール for every u ( f ( ), ) u (a, ) for all a A iN その他の規範的論点: i iN i 公正な配分とは?所得移転はどうか? 収入は? 望ましい配分が複数ある場合は? 2 Implementation Problem (履行問題、実行問題) 任意の社会状態において常に 社会的選択ルールが示す望ましい配分達成は可能か? そのためにはどのようにメカニズムをデザインすればいいか? Mechanism ( M , g , x ) and Strategy Profile s S がみたすべき条件 g ( s ( )) f ( ) for all チェックすべき制約条件: ・戦略プロファイル s S はなんらかの均衡条件をみたしているか? 優位戦略プロファイル?あるいは別の均衡条件? ・ s S 以外に別の均衡は存在するか? それは社会的選択ルールの示す配分を達成するものか? ・メカニズム ( M , g , x ) は不公正、不適切な所得移転をもたらしていないか? プレーヤーはこの配分問題にちゃんと参加してくれるだろうか? 詳しくは後述の予定 3 次回 一般的な不確実性下の配分問題において 優位戦略によって効率的配分を達成するメカニズム を紹介しよう その名は Groves Mechanism グローブス・メカニズム 4 脱線:Mutual Knowledge(相互知識)と Common Knowledge(共通知識) 例:バブル経済 ・バブル経済が長く続いたが突然クラッシュして大騒ぎになっている 「実はずいぶん前からバブル(本来の価値より高く株価が設定されている)ことに気 付いていたんだ。」 「実は俺もそうだ」「おれも」 「おれも!」 「なあんだ。みんな気付いていたんだ。ちっとも気付かなかった」 ←これが Mutual Knowledge ・バブルだと思ったが、だれも気付いてないだろうと思い、投機的売買を続けた 「今バブルだと思うんだ。」 「俺もそう思う」「おれも」「おれも!」 「みんなバブルだと思ってんだね。わかった」 翌日バブル崩壊! ←これが Common Knowledge 5 Mutual Knowledge とは 単にある事象(event)をみんなが知っているということ Common Knowledge とは 単にある事象(event)をみんなが知っているというだけでなく みんなが知っていることをみんな知っている そのことをみんな知っている またそのことをみんな知っている ……… という無限の連鎖が成立している状況を意味する。 「王様の耳はロバの耳!」 6 浮気村の悲劇 村には二組の夫婦がおったそうな 社会状態 (1 , 2 ) 1 {0,1}: 2 {0,1}: 婿2が(嫁1と)浮気している(1)してない(0) 婿1が(嫁2と)浮気している(1)してない(0) 嫁1は1 を知っているが2 を知らない 嫁2は2 を知っているが1 を知らない 村の掟:「自分の婿が浮気しているのがわかったら、その日の晩に磔にすべし!」 嫁二人「自分の婿は大丈夫だろう…」 「村には浮気している婿がいる」という事象について 嫁は相互知識(Mutual Knowledge)を持っている しかしこの段階では Common Knowledge ではない 7 宿題3:翌週木曜5時までに教務に提出 ある朝、突然神様があらわれ 「この村には浮気している婿がいる」 とみんなに向かってお告げを叫んだ。 (Common Knowledge になった) 問1:二日目の晩に婿は二人とも磔になった。なぜか説明せよ。 問2:夫婦を三組として、、婿三人とも浮気しているとし、各嫁は自分以外の婿は浮気して いることを知っているとする。神様のお告げを聞いた後、三日後に婿全員が磔になった。な ぜか証明せよ。 問3:夫婦 n 組として、同様に、 n 日後の晩に婿全員が磔になることを証明せよ。 8
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