システム情報工学研究科修士論文概要 年 度 平成 22 年度 専 攻 知能機能システム 学位名 専攻 著者氏名 修士( 工学 ) 白石 直人 指導教員氏名 山海 嘉之 論文題目 動脈硬化計測手法の開発と循環器系健康管理への展開に関する研究 論文概要 循環器系疾患は日本人の死因の約 3 割を占め,中でも心疾患や脳血管疾患は生活の質を著しく低下させ る.したがって,循環器系疾患の発症を防ぐことが非常に重要である.特に,心疾患や脳血管疾患の原因とな る動脈硬化の予防は効果的である.動脈硬化は自覚症状がないため,動脈硬化の状態を日常生活の中で把 握することが重要である.動脈硬化度指標を在宅で計測できる技術は確立されていない.動脈硬化の早期発 見や治療には血圧をはじめとする種々の生体情報も日常的に計測・管理する必要性がある. 本研究では,循環器系疾患の予防を実現するために,簡便に計測することのできる生体情報を用いた動脈 硬化度指標を提案し,簡便・高精度・低侵襲な計測装置を開発するとともに,開発した装置による動脈硬化度 指標や関連する生体情報を在宅で計測・管理可能なシステムを構築することを目的としている. 在宅で利用可能な動脈硬化度指標として,心電図と足先の光電容積脈波を用いた脈波伝播速度の原理に 基づく指標(stPWV: Sinoatrial node-Toe Pulse Wave Velocity)を提案し,stPWV の計測装置を開発した.開発 した装置は,片手に乗る大きさで,バッテリー駆動と無線通信が可能である.本装置は,従来の動脈硬化度計 測装置よりも簡便な計測と収納や持ち運びが可能である.また,心電図と光電脈波の採用により,従来装置と 異なり計測精度に影響するカフが不要で,簡易で低侵襲に動脈硬化度指標の計測が期待できる.閉塞性動脈 硬化症患者群と健常者群における計測値の比較実験によって,有意差および,判定に十分な差異の計測値が 得られることを確認した. 健康管理システムは,計測情報の蓄積と管理機能を提供するサーバシステムで構成され,生体情報をネット ワーク上で管理可能である.自治体協力により地域住民による運用試験を行い実運用環境での動作を確認し た.さらに,健康管理システムのインターフェース装置として,健康情報自動認識装置を開発した.本装置を用 いることで,通信機能を有しない市販の計測機器の情報でも容易に統合・管理できる.本装置は画像認識によ って市販機器から計測値を認識する.2 種類の機器を識別し値を取得する実験によって,9 割以上の取得率を 確認しできたことから,本装置は市販の機器と健康管理システムを統合可能といえる. 本研究では,循環器系疾患の効果的な予防に貢献する技術として,簡便に計測することのできる生体情報を 用いた動脈硬化度指標を提案し,簡便・高精度・低侵襲な計測装置を開発するとともに,開発した装置による 動脈硬化度指標や関連する生体情報を在宅で計測・管理可能なシステムを構築することができた.これにより, 動脈硬化に関連する状態を在宅で計測できると期待される. 審査日 平成 23 年 2月 4日 審査員 (大学名 職名) (学位) (氏名) 主査 筑波大学 教授 工学博士 山海 嘉之 副査 筑波大学 准教授 博士(工学) 眞島 澄子 副査 筑波大学 准教授 博士(工学) 長谷川 泰久
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