ベル企業レポート 7618 ピーシーデポコーポレーション・・・ITソリューション

(株)日本ベル投資研究所
belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
7618 ピーシーデポコーポレーション
~プレミアム会員型サービスの SLP(スマートライフ)店へ業態転換~
2015 年 2 月 28 日
ジャスダック
ポイント
・NTT 東西がビジネスモデルを転換し、高速光回線の卸業に徹する。この固定光回線を活
用して、当社も 2 月から FVNO(仮想固定通信事業者)として、光インターネットサービス
の販売を開始した。競争は激しいが、サービスを活かす当社の強みが生きて、会員の獲
得とサービスの付加価値向上に大きく貢献してこよう。
・当社は、PC(パソコン)販売の専門店という形態を進化させ、商品とサービスを組み合
わせたインターネットデバイスのサービスストアにビジネスモデルを転換した。収益構
造をみると、PC などのハードの売上比率が年々下がる一方で、プレミアムサービス、サ
ポートサービスなどのサービス収入が 4 割に近づいている。プレミアムサービスとは、
PC やスマートフォンを購入したユーザーに一定の月額使用料を支払ってもらうことで、
便利なコンテンツサービスやメンテナンスサービスを提供する仕組みである。ここが最
大の収益源に育っており、業績を牽引している。
・プレミアム会員型サービスを軸にした SLP 店(スマート・ライフ・パートナー)への転
換が加速している。2014 年 3 月期の 4 店が、2015 年 3 月期は 15 店となろう。既存店を
SLP 店に転換していくが、新店も出していく。この SLP 店への転換で、サービス需要を一
段と掘り起こしていく。SLP 店は 16 年 3 月期に 28 店へ拡大しよう。
・2014 年 3 月期の経常利益は 24 億円と、3 年ぶりに過去最高益を更新した。売上がさほ
ど伸びなくても、サービス収入のストック効果で、2015 年 3 月期は経常利益で 32 億円(前
期比+37%)、2016 年 3 月期も同 41 億円(同+28%)とピーク利益を更新が続こう、売上
経常利益率も 7.5%が達成でき、ROE も早晩 15%に乗せてこよう。
・スマホやタブレットが新市場を形成する中で、PC をプラットフォームとしながら、多
様な商品でサービス需要を掘り起こしている。売上高経常利益率 7~8%、経常利益 40~
50 億円が会社側の当面のターゲットであるが、ほぼ射程に入った。次は売上高経常利益
率 10%が目標となろう。増配も期待できる。他社が真似できない差別化されたサービス
の提供が、株式市場で今後も一段と評価されて行こう。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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目 次
1.特色
インターネットデバイスのサービス専門店へ進化
2.強み
サービス収入へ収益構造が転換
3.中期経営方針
4.当面の業績
コンテンツとサービスを開拓する SLP 店を本格展開
サービス収入の効果が顕在化し、ピーク利益の更新が続く
5.企業評価
業態転換のイノベーションが継続
企業レーティング A
株価(15 年 2 月 27 日)
PBR 2.38 倍
926 円
ROE 13.2%
時価総額 360 億円(38.928 百万株)
PER 17.9 倍
配当利回り 0.9%
(百万円、円)
決算期
売上高
営業利益
経常利益
当期純利益
EPS
配当
2007.3
42345
839
1112
511
15.3
3.3
2008.3
42439
1229
1340
816
24.5
4.0
2009.3
42899
1259
1429
684
20.7
4.7
2010.3
44740
1226
1306
677
20.7
4.7
2011.3
46912
1368
1509
737
22.8
4.7
2012.3
49693
553
717
280
8.7
4.7
2013.3
51353
876
933
445
13.6
4.7
2014.3
53816
2310
2411
1554
46.1
5.7
2015.3(予)
53000
3100
3200
1960
51.6
8.3
2016.3(予)
55000
4000
4100
2500
65.8
10.0
(14.12 ベース)
総資産 30438 百万円
純資産 14797 百万円
自己資本比率 48.5%
BPS 389.5 円
(注)ROE、PER、配当利回りは直近予想ベース。2013 年 10 月 1 日に 1:100 の株式分割、
2015 年 1 月 1 日に 1:1.5 の株式分割を実施。それ以前の EPS、配当については修正
ベース。
担当アナリスト
鈴木行生
(日本ベル投資研究所 主席アナリスト)
企業レーティングの定義:当該企業の、①経営者の経営力、②事業の成長力・持続力、③業績下方修正の
可能性、という点から定性評価している。A:良好である、B:一定の努力を要する、C:相当の改善を要す
る、D:極めて厳しい局面にある、という 4 段階で示す。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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1.特色
インターネットデバイスのサービス専門店へ進化
デジタルデバイドの解消を社会的使命とし、新しい業態へ転換
ピーシーデポ(PC デポ)は、デジタルネットワーク機器で困っている人を優先する。そ
こで、地道にサービスを磨いていく。それがサービス市場を開拓して、独自のビジネスモ
デル作りに繋がっている。野島社長は、チャレンジはするが、冒険はしない、と語る。常
に慎重で、必ず実験をして確認してから事業の手を拡げていく。
当社は、長く付き合える IT ソリューションストア(SLP 店:スマート・ライフ・パートナ
ー店)を標榜している。PC の量販店がそばにあるというだけでなく、IT 機器やネットワー
クを使っていくうえで、
‘困ったこと’を解決してくれる。
デジタルネットワークの特徴は、新しい機器(デバイス)やサービスがどんどん入ってく
る。それらがきちんと使えるように IT 環境を整えていくには、サポートが必要になる。PC、
スマホ(スマートフォン)、タブレット(多機能携帯端末)など、その機能を使いこなすため
のサービスを提供してくれる。丁寧に教えてくれて、必要なことは総てセットしてくれる。
これは確かに便利である。長く使ってもらうと、商品を買ってもらった時の利益だけで
はなく、使っていく上での利便性に対して、フィー(料金)を払ってくれるようになる。そ
れには利便性が納得できるものでなければならない。
通常の小売業は商品をビジネスの起点とするが、当社は小売サービス企業なので、サー
ビスを起点とする。インターネットのインフラに関するデバイスをベースにしたサービス
を提供し、そこで顧客と繋がっていく。
当社の利益は 3 つの視点からみることができる。1つの商品を販売した時の利益、2 つ目
は、商品の修理メンテナンスをした時の技術料、3 つ目は、会員として継続的なサポートを
提供するフィー(月額料金)である。特に、会員としてのサポートフィーが事業の主力と
なる企業は小売業の中で珍しい。
当社の CSR(企業の社会的責任)は、デジタルデバイド(情報格差)を低減することにあ
る。デジタルネットワークをうまく使える人とそうでない人には何らかの情報格差が生ま
れ、上手く使えない人が不利になることは、社会全体としてよくない。そういう人々をサ
ポートして、IT サービスを適切に使えるようにして、生活の利便性や快適性の向上に貢献
する、という意味である。このサービスを、PC デポの店舗をベースに提供していく。
PC(パソコン)とともに創業
野島社長は、かつて家電量販店のノジマ(コード 7419、ジャスダック上場)で働いてい
た。ノジマ創業者の長男がノジマの現社長で、野島社長は次男である。家電量販店ノジマ
で店舗や商品を担当していたが、パソコン(PC)が出始めた頃に自分で事業をしたいと考え、
独立した。現在でも野島社長はノジマの株主の一人であるが、ピーシーデポとノジマの両
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
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社に、会社としての取引関係は全くない。
野島社長は 35 歳の時に創業し、現在事業年度で 21 年目である。会社設立当初、人々に
とって PC はほしいが、まだ手が届かなかった。特別な人が秋葉原に買いに行くという時期
であった。それに対して、小売業が新商品を普通に扱うという感覚で、PC の小売に参入し
た。順調に業績を伸ばして、1999 年には創業 5 年でジャスダックに上場した。
2000 年からはインターネット時代が始まり、新しい時代に入った。上場した時は、店舗
が 10 店余りで、売上高 150 億円、経常利益 8 億円、無借金という規模であった。
現在は家電量販店で PC 関連製品は普通に販売されている。PC 専門の量販店もいろいろあ
る。家電量販店・PC 量販店という広義のセクターでみれば、上場企業主要 11 社中、売上規
模でみて 9 位だが、競争の土俵が少し違うので、ヤマダ電機、エディオン、ケーズデンキ
などと直接戦っているわけではない。差別化を図っているところに着目したい。
店舗の状況
(店舗数:店)
PCデポ
(PC DEPOT)
直営
SLP店
子会社
2015年2月末
37
14
13
ホームユーザー向けパソコン・関連商品、技術サービスサポート
神奈川、東京、千葉、埼玉、静岡、群馬、栃木、茨城
ピーシーデポストアーズ
九州、中部、四国、甲信越、東北
四国、中国、近畿
FC
3
グループ計
67
PCデポ
直営
52
家電量販店インショップ店
パソコンクリニック
FC
6
グループ計
58
総 計
125
(注)SLPは新業態のピーシーデポスマートライフ店、FC(フランチャイズ店)からはロイヤリティを得る
2014 年 10 月に PC デポの FC 店を 2 店直営にして、グリップを効かせるようにした。北越
ケーズ社から、先方の要請で引き取った。当社の子会社であるピーシーデポストアーズに
入れて、営業の強化を図ることにした。年商 10 億円レベルであるが、サービスを強化する
ことで収益性を高めることができよう。
ケーズデンキと連携
当社はパソコンの専門小売店 PC デポ(PC DEPOT)を展開する中で、ケーズホールディング
ス(コード 8282)のケーズデンキを当初 FC(フランチャイジー)にした。PC デポの FC にケ
ーズデンキが 2 番目に参加したのである。家電量販店が PC を取り扱い始めるという点で双
方にメリットがあった。
当社がケーズデンキと組んでいる理由は、両社の経営の考え方が似ており、先方の加藤
会長(兼 CEO)に共感出来るからである、と野島社長はいう。チェーンストア・オペレーショ
ンを基本にして、サービス以外はセルフで売る、ポイント制は採用せず、現金値引きで売
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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るなど、分かり易い経営を心掛けている。
当初は、ミスターマックスやカメラのキタムラも FC になった。しかし、家電量販店は大
手が優位となり、ディスカウントストアでの PC の取り扱いは難しくなった。ミスターマッ
クスの FC 店は、
2010 年までに当社の子会社(現ピーシーデポストアーズ)として買い取った。
FC展開から直営に
PC デポの FC とは別に、家電量販店にインショップとして、技術サービスを取り扱う店舗
を FC として出した。それがパソコンクリニック(PC DEPOT パソコンクリニック)である。
ケーズデンキにパソコンクリニックを出してうまくいったので、これを広げていった。
現在、PC デポは直営が 51 店(うち SLP14 店)
、関東圏以外に出店している子会社ピーシ
ーデポストアーズが 13 店、FC が 3 店の 67 店である。また、パソコンクリニックは直営が
52 店、FC で 6 店ある。合計で 125 店を有する。
パソコンクリニックは 5 年前まで FC 中心であったが、これを直営に転換した。サービス
機能を強化するには直営の方が効果的であると合意でき、ケーズデンキから FC を買い取っ
た。その後はケーズデンキの中に当社の直営店として、パソコンクリニックを出している。
ウェブ事業を継続
子会社のイージェーワークスでは、インターネットのサービスプロバイダー、ウェブ制
作等の IT ソリューション事業を展開している。インターネットサービスは、2000 年頃から
普及がスタートした。今や普及は一巡しつつあり、インターネットプロバイダーの淘汰も
始まっている。当社は中小のプロバイダーを買収して、顧客向けサービスを継続している。
顧客にとっては、メールアドレスを変更しなくてよいので、継続性が保てる。
最近はここを当社のサービス、コンテンツ開発のサポート部隊として活用しており、そ
のウエイトが高まりつつある。新しい開発サポート拠点という位置付けである。
アルバイトを効果的、機動的に活用し、正社員にも登用
当社の社員数は 2014 年 12 月末で 776 人、この他に 8 時間換算で 1333 人のアルバイトを
活用している。仕事のカテゴリーは、オペレーション(会計、商品引き渡し)、セールス(接
客)
、クリニック(ディフェンス、オフェンス)など 7 つほどあり、1 つのカテゴリーの仕
事を、1 週間ほどで基本動作ができるようにする。店内ではトランシーバーで絶えず情報を
共有し、助け合うので、顧客への対応は十分できるようにしている。長年働いているアル
バイトも多く、そこから正社員への登用も行っている。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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2.強み
サービス収入へ収益構造が転換
PC関連の技術サービスに特化し、この分野で業界トップ
当社は関東に強い。この地域の人口カバー率は 90%である。少し遠くても、PC デポのサ
ービスを受けたいと思えばアクセスできる。PC を購入し、ルーターをセットしてもらうと、
家に帰って電源を入れるだけですぐに使える。初期設定を自分でやる必要はない。スマホ
も Wi-Fi(高速無線 LAN)に繋がる。何かあったらコールセンターに電話をすると、即対応し
てくれる。これを、月額料金を払うことですべてできる。実に安心で便利である。
当社は PC の修理、メンテナンスサービスでは業界トップである。しかも、毎年のサービ
ス収入が年 20%以上伸びており、高い成長を見せている。PC の販売台数では、業界 7~8 位
であるが、サービスで特色を出している。
当社は、過去 10 年の家電量販店との戦いにおいて、独自の存在感を出していた。PC 専門
店であるという点で局地戦には強かったが、全体のボリューム(販売数量)では大手に対応
出来なかった。こうした流れの中で、無理な出店による規模拡大は図らなかった。PC とい
うハード(物販)の量的拡大ではなく、サービスの向上に努めて、顧客にとっての IT ソリュ
ーション企業になると決めたのである。2005 年からこの方向に明確に舵を切った。ここが
創業期に次ぐ、第 2 のターニングポイントとなった。
鍵は、サービスの組み合わせによるソリューション提供である。当社は MVNO(仮想移動体
サービス事業者)として、イーモバイルに代わって通信サービスを提供する。さらに、当社
のプレミアムサービスに加入すると、メンテナンス、コールセンターサービス、ウイルス
サポート、PC 買い替え時のフルインストール作業など、何でも対応してくれる。
このメニューを自社開発して実行していることが強みである。他の PC ショップで当社の
ようなスピードで技術サービス、とりわけデータリカバリーができるところはない。他社
は真似ができないのである。
売上高構成比の推移
2009.3
売上高 構成比
商品売上高
35572
82.4
パソコン・周辺機器
24375
58.5
アクセサリー・サプライ・ソフト
6554
14.6
中古その他
4643
9.3
(%、百万円)
(%、百万円)
2014.3
2010.3 2011.3 2012.3 2013.3
構成比 構成比 構成比 構成比 構成比 売上高
78.2
75.8
72.3
69.0
66.9
35984
56.9
52.0
46.5
46.4
42.7
22981
15.0
13.9
12.6
12.1
10.8
5724
6.3
9.9
13.2
10.5
13.5
7278
サービス収入
技術サービス・手数料
ロイヤリティ他収入(FC)
インターネット関連事業
11340
8726
522
2090
17.6
10.3
1.3
6.0
21.8
14.4
1.3
6.1
24.2
18.6
1.1
4.5
27.8
23.3
0.8
3.7
31.0
27.3
0.3
3.4
33.1
30.2
0.3
2.6
17831
16237
174
1419
合 計
46912
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
53816
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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サービスに強い専門店として成長すると方針を決め、インターネット時代にその方向を
強めてきた。オッジオ(OZZIO)は、当社のプライベートブランド(PB)商品のブランド名
である。PB にも力は入れてきた。物販の中でも、アクセサリーやサプライ品の収益性は高
いが、方向はサービスであった。
プレミアムサービスを収益源とするユニークなビジネスモデル
サービスの内容でみれば、①プレミアム会員の継続、②修理・メンテナンス、③MVNO、
④コンテンツなど多様であるが、この順で金額ウエイトが高い。その意味では、プレミア
ム会員サービスを軸に、今後コンテンツサービスがどこまで伸びていくかが注目される。
当社のビジネスモデルは海外にもあまり例がないユニークなものである。物販、サービ
ス、MVNO を組み合わせている。会員はプレミアムサービスを 3 年契約で結ぶことになる。
但し、サポートコストは先に発生するので、経費先行、後で顧客から回収する。
PC やタブレットなどを買って家に帰った時、すぐに使いたい。野島社長自身もそうであ
った。購入時に、リカバリーディスク、ウイルス対策、初期設定、パスワードなど、さま
ざまなセットアップに 3 時間もかかり、途中でつまってしまうと、誰かに聞かないとわか
らない。これをネットワークで解決しようとしたのが、プレミアムサービスである。
古い PC とメンバーカードを持って、PC デポで PC を買い替える。すると、その場でサー
ビスの担当者が全てをインストールしてくれる。
本人はその新しい PC を家に持って帰ると、
従来と同じように無線のルーター(当社製)を通じて、何もせずにすぐに新しい PC が使える
ので、確かに便利である。
このルーターのシステム特許は 2012 年 3 月に成立した。他のサービスも入れて、代表的
なコースで月 3950 円(デバイス 7 台)、4450 円(同 10 台)でこのサービスが受けられる。ク
ラウド化にも対応している。このサービスは逐次充実している。
サービスの売上げをビジネスにするという方式(ビジネスモデル)は、2005 年 11 月から本
格化させ、以来順調に拡大してきた。従来からメモリーを増設するなど、さまざまな技術
サービスを有料でやっていた。今では、月額で一定の料金を支払うとワイヤレスのルータ
ーを貸し出し(コースにより 3~10 台までなら追加料金なし)
、PC を買うと何もせずにその
ルーターを通して高速無線インターネットが使える状態になる。
MVNO(仮想移動体通信業者)は、ケータイの通信ネットワークを独自にもたず、大手の
キャリアから借りて自社ブランドのサービスを提供する。当社では、通信キャリアからイ
ンセンティブをもらうのではなく、自らが通信業者となって、顧客にサービスする。そう
すると、顧客が求めるサービスをワンパッケージでまとめて対応できるので、プレミアム
サービスとして都合がよい。このタイプのサービス(EM プレミアムサービス オールデバイ
スパーソナルプラン)は月々5750 円(税込 6037 円)である。
パソコンクリニックは 1 回限りの技術サービスになり易い。継続的なサービスを提供す
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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る顧客として囲い込むには、プレミアムのユーザーになってもらう方がよい。そうするに
は直営の方がやり易い。そこで、パソコンクリニックの直営に舵を切ったのである。
主なプレミアムサービスのメインメニュー
オールデバイス ファミリープラン
オールデバイス ファミリーワイドプラン
初期設定・サポート
オールデバイス7台まで
オールデバイス10台まで
ワイヤレスインターネット
店頭でつなげて渡す
ハイスピードタイプの無線機器
店頭でつなげて渡す
自宅ワイヤレス接続
店頭設定無料
店頭設定無料
ウィルス感染・データ流出
危険サイト侵入防止
Winパソコン・Mac・スマホ7台まで
Winパソコン・Mac・スマホ10台まで
ozzioメールアカウント登録設定
1アドレス
1アドレス
基本操作店頭説明
Winパソコン・Mac・スマホ7台まで
Winパソコン・Mac・スマホ10台まで
ozzioクラウド自動バックアップサービス
最大1TB
最大1TB
トータルサービスコールセンター
利用可
利用可
OSアップグレード&バックアップ
オールデバイス7台まで
オールデバイス10台まで
店頭点検・定期バックアップ
オールデバイス7台まで
オールデバイス10台まで
トラブル復旧サービス
トラブルリストアサービス
オールデバイス7台まで
オールデバイス10台まで
買換え時データ再設定
オールデバイス7台まで
オールデバイス10台まで
想い出スマートビデオ
預かり本数10本まで500円/月(税別) 預かり本数10本まで500円/月(税別)
VHS、8mm、miniDV OK
VHS、8mm、miniDV OK
テザリング設定
何台でも接続OK
何台でも接続OK
パソコン延長修理保証
800年/月(税別)で何度でも修理OK
800年/月(税別)で何度でも修理OK
月額料金
3950円
1台当たり564円
4450円
1台当たり445円
真似ができない仕組み
サービス収入は、PC の新規販売台数に付随して伸びるウエイトが高い。加えて、スマホ
やタブレットの販売台数増に伴うサービス収入も急速に増えている。
一人で 1 台ではなく、
一人で複数台、ファミリーで複数台となると、その台数に見合って、しっかりしたサービ
スを受けたいというニーズも高まってくるので、当社にとっては固定客化しやすい。
当社と同じビジネスを他社がやることは難しい。カテゴリーごとに専門職を置いて、チ
ームプレーでサービスを提供している。この仕組みを 10 年以上かけて作っており、1 つの
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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文化としてビジネスモデル化している。他社も真似できそうに見えるが、サービスの相談
にのるには手間がかかるし、かなりのナレッジも必要である。サービスで稼ぐには数年の
時間を要する。人材を育成し、仕組みを作って、数年間蓄積していく必要がある。これに
本気で取り組むことは、今の量販店タイプにはできないといってよい。
3.中期経営方針
コンテンツとサービスを開拓する SLP 店を本格展開
新型店舗ピーシーデポスマートライフ店(SLP 店)の立ち上げに成功
現在、PC デポタイプの直営店は 51 店あるが、そのうち 14 店が SLP 店となった。SLP 店
は、2014 年 3 月期に西馬込(8 月)
、東府中(11 月)、碑文谷(2 月)
、新横浜(2 月)の 4
店が既存店を改装してオープンした。今 2015 年 3 月期は、東名川崎(5 月)
、みなとみらい
(6 月)
、調布(6 月)
、辻堂(8 月)
、日吉(8 月)、港北(9 月)、平和台(9 月)、世田谷砧(10
月より先行営業、15 年 3 月開店予定)、花小金井(11 月)、
「大和(2 月)
」と続いている。
これで 3 タイプの店の SLP 化が実現した。100 坪、200 坪、300 坪と、当社にとって小型
店の 3 タイプのフォーマットが揃った。SLP 店は西馬込 100 坪、碑文谷 150 坪、東名川崎
150 坪、東府中 250 坪、新横浜 300 坪、みなといらい 300 坪、調布 300 坪、辻堂 300 坪、日
吉 300 坪と、地域ドミナントを生かして、改装を進めている。店舗のロゴはシンプルにな
り、カラーも従来の青からオレンジに変わっている。
SLP 店はおしゃれで便利
スマートライフ西馬込店は、SLP の1号店である。2013 年 8 月に東京の西馬込の店舗(PC
デポ)を改装した。従来の店に比べると、商品の展示は減っている。タブレットが増え、
サービス対応のスペースも大幅に増えている。ものを売るのではなく、顧客が必要とする
サービスをまとめて提供しようという店作りである。
PC のマニアにすれば、専門的な付属品の品揃えが十分ではない面はあるが、店に来て問
い合わせればすぐに必要なものを取り寄せることができるので問題はない。修理などの相
談に応じるパソコンクリニックも、
「Dr. Smart(ドクター・スマート)」と称してユニフォ
ームも一新した。
生活者が望むのは、必要な IT サービスを不自由なくすぐに利用できることである。コン
テンツサービスをタブレットなどに組み込んで、そのまま使える状態までセットしてくれ
れば、これは楽である。自分でマニュアルを見てセットする、一所懸命いくつものコール
センターに電話してやり方を教えてもらう、という手間がいらないからである。
また、今使っている PC、スマホ、タブレットごとの回線や使用料についても相談にのっ
てくれるので、まとめて安くなる方法や、もっと便利な組み合わせに移ることもできる。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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スマートパックという利用方法も広がっている。ハードを購入して、必要なソフトや回
線料を別々に月額で払うという方式ではなくて、ハードもソフトもネット回線も全て込み
こみで、月額利用料金にまとめてしまうやり方である。一種の残価設定型のローンである
が、ケータイで 2 年契約という方式に慣れている顧客には違和感はない。
店舗のイノベーションにも本格的に取り組んだ。PC デポ(PC DEPOT)のロゴマークには、
“Low Price” という文字と “The Computer Superstore”という文字が入っている。イ
メージは PC のスーパーである。これが実態と合わなくなっている面もあるので、新しい店
ではこれらの 2 つを外した。
スマートライフ店は単にものを売る店ではない。顧客が望むソリューションをパッケー
ジで提供する。そのサービスを長く使ってもらう会員になって頂く。商品を並べて好きな
ものを選ぶ、というスタンスではない。本人が実行したいインターネットコミュニケーシ
ョンを、ワンストップで提示する、と野島社長は強調する。よってお店のイメージも従来
とは異なり、接客カウンターが重要なスペースを占める。
スマートライフ店では商品在庫が減る。顧客を選ぶ苦しみから解放して、必要なサービ
ス機能を提供する。結果として在庫は減る。但し、バランスシートでは、ハードとソフト、
コンテンツをセットにして商品化し、月額課金で回収するので、一定の売掛金がかさんで
いくことにはなる。
PCデポの店舗展開
年度末店舗数
PCデポ 直営
SLP店
子会社
FC
1994 1999 2004 2005 2009 2010 2011 2012
1
10
28
32
43
44
48
50
(店舗数 : 店)
2013 2014 (予) 2015 (予)
46
36
26
4
15
28
11
13
13
5
3
3
0
0
0
8
0
32
0
24
4
17
4
17
12
5
11
5
PCデポ 直営
パソコン 子会社
クリニック FC
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
5
0
0
24
30
0
6
46
1
7
49
1
7
49
1
7
52
0
6
52
0
6
合計
1
18
60
61
88
101
119
123
123
125
128
(注)SLP店は改装と新規を含む。直営はSLP店へ改装転換しているので減少。
既存店の改装で、SLP 店を多店舗展開
SLP の 2 店目、東府中店が 2013 年 11 月にオープンした。こちらも既存店の全面改装であ
る。SLP 店は坪当たりの投資額は少ないが、対面サービスという点では人件費はかかる。
既存店の PC デポを SLP 店に転換すると、店の認知度は既にあり、固定客もいる。そこに
新しいサービス中心の顧客をどこまで集められるかがカギである。SLP 店は、多少立地の悪
いところでも出店できる。西馬込、東府中とも店舗は 2F にある。自ら駐車場を持たなくて
も、コインパーキングがあれば十分対応できる。この店舗が上手くいくと分かったので、
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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SLP 店の出店を加速させている。
SLP 店は改装を中心に進める。サービスが伸びて、そのウエイトも高まっていくので、利
益率はさらに上がっていこう。改装費用は新規出店より安くすむ。しかも、効果は歴然と
表れる。改装前と改装後では、収益性の伸びが既存店に比べて 2 割程度高い。400~500 坪
を 1 店新規出店する費用で、300 坪の店の 4 店は改装できる。しかも、投資回収の確度も高
く、リターンも高いので、こちらを優先している。
SLP 店は、改装が前期 4 店、2015 年 3 月期 11 店に対して、来期も 10 店程度は実行され
よう。新規出店は、前期はなかったが、今期は 1 店出した。来期は立地次第であるが、3~
4 店に増えてこよう。
2014 年 1 月のエクイティ・ファイナンスで 23 億円を調達した。その資金の使途として、
新店に 9 億円、既存店の改装に 11 億円、社内のシステム投資に 3 億円をあてる予定だ。
SLP 店へ改装する店は、従来の PC デポの店のうち、①古い店、②競争力の劣化した店、
③都心に近い店が対象となる。物販よりはサービス重視の店であるとしても、予想以上に
専門的な周辺機器も売れるとわかってきた。よって、SLP 店の在庫水準が従来の PC デポ店
より著しく少なくて済むというわけではなく、一定量は在庫しておく方針である。
SLP 店の出店余地はかなりある。サービス中心の新しいタイプの店として、出店可能なと
ころは 200 カ所ほど想定できる。まずは、関東圏を軸に、地域密着で店舗のブランド力を
上げるように展開していく。SLP 店を更地に出すのであれば、都内であれば、100~200 坪、
首都圏であれば 200~300 坪の効率がよいと会社側ではみている。
PCデポの新規出店予想
PCデポ 直営
SLP店
子会社
FC
PCデポ
パソコン
クリニック
直営
子会社
FC
2011.3
1
2012.3
4
2013.3
3
0
0
6
-12
2
0
2014.3
0
0
0
0
30
0
-18
16
1
1
3
0
0
0
0
0
(店)
2015.3 (予) 2016.3 (予)
0
0
1
3
2
0
-2
0
3
0
0
0
0
0
(注)新規はSLP店、パソコンクリニックは提携先との案件次第。
PCデポの子会社はFCを子会社化。2015.3のパソコンクリニックは(出店5-閉店2)の数字。
SLP 化を大型店にも波及
SLP 店の特徴としては、1)きれいな店になったので、お店の女性に声がかけやすくなっ
た、2)会員になって、相談がしやすくなった。その反面で、3)一般的な家電量販店等と
違い、ブティックのようなイメージの店舗のため、価格志向の方やパソコンマニアの方な
どが少し入りづらくなった、という面もある。さらに、4)会社としては、女性の活用がや
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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りやすくなった、というメリットがある。
今後の店舗展開については、100~150 坪の店(西馬込、碑文谷)
、150~250 坪の店(東
名川崎、東府中)
、300 坪の店(新横浜、みなとみらい、調布など)というフォーマットに
加えて、大型店に SLP 化をどのように応用するかを検討してきた。
実際、SLP 化を PC デポの大型店に導入開始した。千葉の富里インター店では、スマート
バイソリューション(S×S)を導入した。オレンジ色の看板の SLP 店ではなく、青い看板の
従来型大型店に、SLP と同じようなコーナーを設置して効果を見ている。
転換は進む
SLP 店の数は、2015 年 3 月末で 15 店となろう。既存店の改装 10 店、新規出店 1 店で、
11 店が増える。2016 年 3 月期については、SLP の新店が 3 店、SLP への改装が 10 店で、全
体では 28 店になるというのが 1 つの目途であろう。
新規出店への投資は、3 月に本格オープンする世田谷砧店は 300 坪と広いので、3.5 億円
ほどかかるが、これは例外で通常は 200 坪の店で 2.5 億円の投資である。
SLP 店への改装については 300 坪までで、それより大型の店舗については、SLP 店の良さ
は取り込めるとしても、全面転換という方向ではない。
PCからインターネットデバイスへ
PC の販売が減っている。そうすると当社の経営は苦しくなるのかというと、そんなこと
はない。1 人当たりのデバイスが増えていくからである。PC に代わって、スマホやタブレ
ットが増えていく。PC がなくなるわけではない。コアとしての機能は必ず残る。1 人当た
りの台数が増えていけば、それを使いこなすネットワーク環境は常に必要である。
自分が持っている基本データはどこにおくのか。クラウドの利用も進むが、ローカルに
キープしたいというニーズも強い。そうすると PC がコアになる。周りを見ても、PC はもう
いらないという人は今のところいない。PC、スマホ、タブレットなどのスマートデバイス
商品が多様化すれば、サポートの幅も広がっていく。PC デポでしか出来ないサービスが価
値をもってくるわけだ。
デジタルデバイド(情報格差)の解消に貢献するというのが当社の社会的使命の原点で
ある。とすると、事業領域はかなり広がる可能性がある。しかも、コンテンツとの連携を
図ることによって、付加価値を高めている。高齢者や忙しい人々にとっては、ネットワー
クを自分で繋ぎ、使えるようにするというのは手間がかかる。しかも、うまく動かなくな
った時にすぐに助けてもらえるのはありがたい。
コンテンツとサービスを独自開発 ~ デジタルコンテンツサービスは 50 種類を超える
当社のビジネスモデルは進化している。現在力を入れているのは、インターネットデバ
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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イスに合わせたコンテンツとサービスを開発し、それをソリューションとして顧客に提供
することである。
元々は家電量販店のように、パソコン(PC)の登場に合わせて PC ショップを作り、PC を
売るというビジネスであった。しかし、PC を使いこなすには付属的なソフトウェアやハー
ドウェアをのせていく必要がある。マニアに合わせて専門的な商品、サービスを提供する
一方で、PC が普及してくると、PC を上手く使いこなせない顧客にも親切なサービスが求め
られる。修理はもちろん、買い替え時のサービスや、新機種や新ソフトが発表された時の
使いこなしである。ワンタッチで使えるならこんな便利なことはない。
現在は、PC 中心からスマホ、タブレットにインターネットデバイスが多様化している。
一人が何台も持って使い分けるようになる。コンテンツとの組み合わせもニーズに合う。
実際、専門的な雑誌のデジタル版とタブレットを組み合わせて全てインストールして、安
く提供している。顧客は自分に合ったものがすぐ利用できるのに加えて、そのタブレット
を自由に使うこともできる。
デジタルコンテンツサービス(例)
(円)
(円)
雑誌の定価 コンテンツ(雑誌)
雑誌の定価
コンテンツ(雑誌)
雑誌+iPadAir
雑誌+iPadAir
月額料金
月額料金
週刊東洋経済
2000
690
週1 日経PC21
1200
650
月1
日経Woman
1200
580
月1 毎日が発見
1000
ー
月1
日経ビジネスアソシエ
1200
650
月1 News Week
1500
460
月1
日経マネー
1200
690
月1 PEN
1200
650
月2
日経トレンディ
1200
570
月1 seventeen
1200
590
月1
GetNavi
1200
610
月1 non・no
1200
650
月1
LEVOLANT(ル・ボラン)
1200
1010
月1 MAQUIA
1200
650
月1
レタスクラブ
1000
329
月2 Marisol
1200
800
月1
ESSE(エッセ)
1000
500
月1 BAILA
1200
730
月1
プレジデント
1500
690
月1 eclat
1200
940
月1
デジキャパ
1200
910
月1 LEE
1200
670
月1
CAPA
1200
700
月1 MEN'S NON・NO
1200
770
月1
Mac Fan
1200
780
月1 俳句
1200
920
月1
週刊サッカーダイジェスト
1200
480
週1 短歌
1200
930
月1
ワールドサッカーダイジェスト
1200
620
月2 EVEN
1200
741
月1
日経ヘルス
1200
600
月2 将棋世界
1000
800
月3
スラッガー
1500
900
月1 日経ビスネス
2000
690
週1
スマッシュ
1200
670
月1 つり人
1200
935
月1
dancyu
1200
880
月1 上沼恵美子の
1000
490
月1
DOS/V POWER REPORT
1200
1180
月1 おしゃべりクッキング
ゴルフダイジェスト
1500
390
週1 趣味の園芸
1000
545
月1
RIDERS CLUB
1200
905
月1 きょうの健康
1,000
545
月1
BiCYCLE CLUB
1200
720
月1 囲碁講座
1200
545
月1
Discover Japan
1000
1008 2か月1 サンキュ!
1,000
420
月1
Flick!
1000
ー
月1
婦人画報
1200
1200
月1 2誌パック
1800 2100
ELLE
1200
690
月1 3誌パック
2200 2300
25ans
1200
780
月1 4誌パック
3300
MEN’S CLUB
1000
780
月1
(注)月額料金は標準価格、割安価格がある場合はそれを表示。パック料金は組合せ次第。iPadAirは16GB/Wi-Fi。
レタスクラブ(月 2 回発行、1 冊 329 円)と iPad Air(16GB/Wi-Fi)を組み合わせて、月々
1000 円で利用できる。3 年契約であるが、別々に契約すれば合計で 6 万円近くかかるとこ
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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ろを、そこまでかからず、安く済む。当社としては、顧客がほしいサービスをパックとし
て提供し、長く使ってもらう会員としてリテンション(保持)していくという考えだ。
デバイスにコンテンツを入れて会員を獲得
タブレットで、デジタル雑誌を提供するという独自のサービスが一段と広がっている。
日経ビジネス、東洋経済など、それができるようになった。しかも一定期間継続すると雑
誌や新聞代より安くすむ。
カー雑誌のル・ボラン(LEVOLANT)はマニア向けの専門誌でカラフルである。月刊誌で
定価 1010 円である。これを iPadAir とセットにして、月 1200 円で見ることができる。本
は重いが、これはどこでも手軽にみることができる。
なぜ安くなるのか。当社がまとめるサービス機能を有しているからである。iPadAir を持
っている人はデジタル版を購入すればよい。iPad を買って個別に購入してもよいが、すべ
て自分がやるとその場合は月 1200 円以上掛かってしまう。ル・ボランの会社にすれば全て
自社がやってもよいが、デバイスを使いこなすサポートまでは面倒見切れない。当社はそ
れをワンストップでいつでもサポートする。コンテンツ提供企業にとっても、デジタル顧
客を増やすのに好都合である。既に 50 種類を超えるパックが提供されている。
サービスの充実
デバイス別サービス
主なサービスの内容
iPhone向けサービス
物損延長保証(機器故障、水漏れ故障、破損故障)
iPhoneとパソコンの同期
お得な電話をiPhoneで
ラジオをiPhoneで
iPad向けサービス
機器の水漏れ・破損故障(2年2回まで)
iPadとパソコン同期
お持ちのMac・iPhone+iPadデータ共有
iPadを大画面で
Windows向けサービス
初期設定+復旧ディスク
データ引越し+ハードディスクバックアップ
ワンポイントクイックレクチャーサポート
nexus7向けサービス
メール設定+アカウント登録
ウィルス・個人情報保護安全対策+1TBクラウドパック
朝日新聞をnexus7で
インターネットデバイスの形は変わってもサービスは生きる
パーソナル・コミュニケーションの主役がパソコン(PC)からスマートフォン(スマホ)
に代わろうという動きが本格化している。インフラとしてはクラウド化が主力となろう。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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インターネットがパソコン中心ではなく、家電、車、家(ホーム)などのあらゆる場面でネ
ットデバイスとして使われるようになる。それらの機能をコントロールするにはソフトウ
ェアが必要であり、それを使いこなすためのサービスが必要となる。当社はそのサービス
も追求していく。パソコン周辺のサービスに限らず、インターネットデバイスに広げてい
く戦略をとろうとしている。
デジタル時代の現在の 3 極は、グーグル、ウィンドウズ(マイクロソフト)、アップルで
ある。この 3 極を中心に、ユーザーの‘困った’を助けるのが、野島社長の方針である。
顧客の‘困った’を解決し、サービス会員を獲得
SLP 店のような店作りは欧州にもあるが、当社のようなサービスを軸として、顧客を囲い
込んでいるビジネスモデルは、欧米にもアジアにもない。
発想は 10 年以上前に遡る。当初は“PC に弱い人”を優先するというところからスタート
している。かつては PC を使う人は特別の人、何らかの素養にある人というイメージであっ
た。ところが、野島社長は PC に弱い人こそ、顧客になってもらおうとした。パソコン教室
をやったわけではない。PC の使いこなせない人、PC が動かなくなってリカバーしたいこと
を助けようとした。
そこで、次は“困った人を優先する”ことにした。技術サポートを追求し、それを差別
化の武器にしていった。困った度にお金を支払うより月額料金で継続的にサービスを受け
る方が、利便性が高いと考え、2006 年から月額料金制をスタートさせた。それが現在に至
り、今まで困ったら何でもまとめてサービスする仕組みまで洗練させてきた。女性が使う、
ファミリーで使うということで、プレミアムサービスの利便性が高まってきたのである。
プレミアム会員を増やすことに力を入れている。PC を買ったら入ってもらう、修理に来
たら入ってもらう、買い替えの時に入ってもらうなど、地域ごときめ細かくデータをとっ
てフォローしている。
プレミアム会員は相当のピッチで増えている。但し、すぐに儲かるわけではない。ルー
ターには初期投資がいるので、プレミアムの月額会費で回収すれば 1 年ほどかかる。イニ
シャル費用をカバーして利益が出るのは 2 年目からである。
サービスの売上げが順調に伸びている。何がサービスの売上げかという点で外部からは
分りにくいところがあるが、考え方ははっきりしている。商品の販売にかかるメーカーか
らの販売奨励金のようなものは、商品売上げに含める。プレミアムサービスや修理、メン
テナンス、単発のサービスプランの収入はサービスの売上げに入る。多様なサービスがあ
るので、サービス加入者数とその平均単価に分解して、状況を把握するのは難しい。人数
と平均値があまり意味をもたないからである。
会員数について会社側では公表していないが、さまざまなサービスがあるとしても、そ
の数やサポート台数の増加から、年 20%程度のピッチで増えているとみてよいだろう。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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サービスの良さが競争力の源泉、新規出店でも優位性を発揮
最近、スマホは乱売気味だが、当社は PC やタブレットのハードを売るのではなく、サー
ビスを提供する。便利なソリューションを月額課金で継続的に提供する仕組みである。
パソコンクリニックにくる 6 割の人は、他店で製品を購入した人である。つまり、安い
という値段以外の接点を求めてくる。顧客が現在所有している商品までサポートできるよ
うにするので、当社にとっての効率は大きい。
物販とサービスの収益を営業利益段階でみた場合、どういう利益水準、構成になるのか
という点については明確には分けられない。当社では、物販事業、サービス事業という区
分けで事業を行っていないからである。店舗の人員にはそれぞれの役割はあるとしても、
お客一人に対して、物販もサービスも提供するので、そこを分けて成果としては測ってい
ない。商品を販売するからサービスにも加入する。加入して当社の固定客となるから、次
の商品も買いに来るというパターンである。
ただ、物販とサービスの収益を一定の前提をおいて、営業利益段階までおとしてみても、
サービスの収益性が圧倒的に高いという構図は変わらない。
このサービス需要を取り込もうという競争では、当社は長年の実績と人材をテコに優位
に立っている。もともと当社は、他社が主力としてきた商品を売るだけの手離れの良い顧
客ではなく、商品を使いこなすのに手間のかかるお客に、手間をかけてサービスすること
を差別化のコアにしてきたからである。
パソコンクリニックのサービスメニュー(例)
会員
サービス
クイックレクチャー12回チケット
5000
セットアップ
無線プリンタセットアップ
3000
データ
データ復旧サービス
5000
外付け周辺機器セットアップ
プリンタセットアップ
3000
OS・アプリケーション設定
OSインストール
0
インターネット・ネットワーク設定
他社プロバイダメール設定
3000
スマートフォン・タブレット
WiFi設定モバイルアクセスポイント付
3000
データ管理設定
Itune同期・バックアップ同期
3000
周辺機器設定
AppleTV設定
3000
コンテンツ・アプリ設定
新聞購読設定
1000
(注)会員は当社の会員になっている人、一般はそうでない人。
消費税は外税で、この料金に8%の消費税分がかかる。
(円)
一般
30000
10000
16000
6000
10000
7000
10000
6000
6000
4000
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ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
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新しいサービスでは売掛金が増加するので、そのリスク管理が重要
SLP 型販売では、商品・サービスの売上げを 3 年かけて回収するというモデルである。商
品の販売は先に売上げに立つので、売掛金となる。SLP 化の販売が増えると、売掛金が増え
ていく。例えば、iPadAir +雑誌の販売が伸びている。これは、最初は物販の売上に入り、
その後はサービスの売上として入ってくる。タブレットやプリンターの月額課金サービス
は、ハード機器を販売した後、毎月の代金で回収するという仕組みになる。つまり、バラ
ンスシート上では売掛金(割賦売掛金)が増えていく。
この売掛金は、2013 年 3 月期+6 億円、2014 年 3 月期+19 億円と増え、今 2015 年 3 月
期も+28 億円となりそうである。つまり、その分増加運転資金が必要となっている。しか
し、割賦の回収が進めば、次第にバランスがとれてくるので、このまま増え続けるわけで
はない。1~2 年の間には年 10 億円の増加ペースに落ち着いてこよう。
もう 1 つは、与信管理が重要になる。今まで商品をクレジットカードで買った人の回収
リスクはクレジット会社にあったが、スマートライフ店での販売では当社が回収リスクを
負う。顧客が何らかの理由で月次の支払いが出来なくなくなると、その負担は当社が負う。
当社は、個人の販売、IT 機器を使う本人への販売を基本としており、その身元確認や使
用状況についても事前によくチェックしている。法人への大量販売はしない。個人でも何
台もまとめて買うのは、本当に本人利用かどうかわからないので応じないケースも多い。
よって、与信リスクについては、店頭で対応しており、余り心配しなくてよい。
人材育成に力を入れる
店舗展開のポイントは人材と立地条件である。当社のサービスは必ず人がアナログで接
触していく。そこによさがあり、一定の頻度で利便性を感じるからこそ、月額のサービス
料金を支払ってくれるのである。
現在正社員は 776 人、アルバイト、パートは 1333 人(8 時間換算)の約 2100 人であるが、
これに対して年間で社員 100 人、アルバイト・パートで 300 人の増員を図っていく。つま
り、サービスが 20%伸びるのに見合って、人員も一定割合で増やし、しかも、先行させる必
要がある。また、年間 50~60 人はアルバイト、パートから正社員へ転換していく。
人材については、新卒の定期採用制度を転換し、学生のうちにインターンやアルバイト
を入れて、そこから正規採用していく。その方が確実にいい人材がとれるし、アルバイト
のやる気も違ってくる。また、2013 年 7 月にはベア(定昇)を 2%強実施して、待遇の改
善にも力を入れている。
出店に対応する人材育成は進んでいる。PC デポにはパソコン好きの人材が集まっている。
女性も多い。ハードウェア、ソフトウェアに詳しい、使い方に詳しいというのが女性にと
ってもやりがいがあると映る。ここで人材を育てているので、パソコンクリニックを出店
しても人材的には対応できる。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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当社の営業、サービスに個人のノルマはない。全てチームで対応する。3~5 人のチーム
を作り、そのチームが 5 つあるという具合である。経験を共有して、互いのレベルを上げ
ていくという経営である。社員の接客対応が鍵を握っており、アルバイトの人たちも長く
働いている人は積極的に正社員にあげていく。
もう 1 つは、サイバーオペレーションの活用である。もともとは社内を監視するという
危機管理の仕組みであるが、現場の担当者と本部が音声で繋がっているので、いつでもな
んでも聞くことができる。サービスサポートもここからできる。現場の担当者が困ってい
ると、店内の別の人間をすぐに応援に駆け付けるなど、機敏な対応でサービス力を上げて
いる。顧客にとっては PC デポにいくと、親切で、丁寧で、早いと感じるのである。
ネット通販への対応
ネット通販は店舗販売にとって脅威にならないか、という懸念はある。店舗で商品を見
て、実際に買うのはネットでということが起こっている。ネットの方が安いからである。
そこでハードの機器を使いこなせれば問題がないが、使い方がはっきりしない時や不具
合が生じた時に、便利なサービスを受けたいというニーズは強い。そこに当社の存在、出
番がある。iPhone、iPad、ネクサス、キンドルなどは、その販売を取り扱っても利幅は薄
い。しかし、プレミアムサービスに入ってもらえば、顧客の囲い込みになり、サービス収
入で稼ぐこともできる。その意味で、当社では新しい商品を積極的に取り扱っていく。
低価格スマホでも個性を発揮
当社は顧客の使い勝手を中心に考えて、ビジネスを作っていく。スマホの低価格機種が
話題になっているが、当社では月額 1490 円、2490 円という 2 つの機種を出している。
スマホ本体に SIM カードをセットするが、これが意外に手間である。当社はそれを店頭
ですべて対応し、店を出る時にはすぐ使えるようにする。1490 円のものは低速なので、画
像を多用するとレスポンスが遅いが、今までガラケー(フューチャーフォン)だった人が電
話とメール中心に使うには何ら不都合はない。2490 円のものなら 3 ギガなので大手キャリ
アのスマホと何ら遜色ない。
これを低コストでサービスしながら、当社の顧客への囲い込みも考えている。当社はこ
のタイプのサービスに、ネットの申し込みはない。すべて店頭渡しである。店に来てもら
って本人を確認しているので、悪意の事故が発生しない。メンテナンスもすべて店頭で行
うので、コールセンターはいらない。顧客が上手く使えないのは、機種の故障なのか、使
い方が不十分なのかも、店頭で対応するとすぐに分かる。そうすると、顧客満足度は上が
り、サポートコストも安くすむ。
これに月額 500 円からのサポートに入ってもらうと、サービスを受ける顧客となって、
当社の様々な商品、サービスを紹介する機会となる。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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ウェアラブル端末をどう売るか
店舗における新しいサービスでは、ソリューションの提供がカギを握る。例えば、ウェ
アラブル端末として、アップルウォッチが出てくる。この販売は、従来のウォッチを売る
というサービスでは通用しない。
端的にいえば、通常の腕時計は並べておいて好きなものを買って帰ってもらえればよい
が、アップルウォッチはそうはいかない。スマホとの使い分けが必要で、いろいろセット
する必要もある。つまり、使いこなすためのソリューションを組み込んで、すぐに使える
ようにする。これを PC デポの店頭ではできるが、他社の店舗でスムーズにいくかどうかは
分からない。
ソリューションの提供を強化
今後の営業方針としては、1)スマート販売の強化と、2)ソリューション提供に力を入
れる。スマホが売れて、そのソリューションが求められる。
最近は、スマホやタブレットから直接プリンターで印刷するユーザーも増えており、連
れてプリンターも売れる。2.5 万円のプリンターを買うのではなく、月 500 円でプリンター
をサービスするということも始めており、当社のプリンター購入者の 3 割がこのタイプで
ある。
ヘルスケア商品との連動も図っていく。タニタの体重計に乗ると、いろいろのデータが
無線で、PC やスマホに送られて、データ管理が便利にできるようになる。それもすべて当
社がセットしてくれる。月額課金で支払うという仕組みである。このようにメニューを増
やしていくので、物販はサービス込みで売れていくようになろう。
スマホについては、SIM フリーが 5 月ごろに解禁される。これによってスマホの売れ行き
が変わってくる。日本のケータイは今まで SIM カード(Subscriber Identity Module Card)
にロックがかかっていた。つまり、個人が使用する電話番号などの識別情報記録されたカ
ード(SIM カード)が特定のケータイでしか使えない状態であった。
海外では、SIM カードさえ差し替えればどのケータイでも自分のものとして使える。つま
り、SIM カードさえ持っていれば、ハードのスマホは買い替え易くなり、機能によって、2
台、3 台のハードを持っていてもよい。
また、NTT 東日本、西日本は、光回線のサービス卸事業を開始する。ケータイの MVNO と
同じで、固定電話について、NTT のネットワークを借りて、自社ブランドで固定電話サービ
スを、FVNO(仮想固定通信事業者、Fixed Virtual Operator)として提供できる。今まで
光回線を取り継いでいたが、これを自社提供に変えていく。当社のルーターから先は同じ
なので、光回線を当社のものに切り替える。プレミアムサービスにまとめていけばよいの
で、特に問題はなくサービスを強化できる。
これらのサービスに当社は率先して対応する。販売競争は激しくなる可能性はあるが、
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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どのように上手く使いこなすかという面で、当社のサービス機能を充実して、サービス需
要を拡大できる余地は大きい。新しいビジネスチャンスとなろう。
具体的には、1)スマホのハードのメンテナンス、2)スマホの買い替えに伴うサービス
の提供、3)FVNO のサービスを組み込むことによって、通信料を安くできる、4)家庭にお
ける通信ハード、ソフトの効率化などを提供する。ユーザーにとっては便利になる。それ
に見合って、月額サービス課金も増やすことができよう。
サービス&ソリューション化の推進
デジタルコンテンツ
の提供
スマートデバイス
の販売・サービス強化
低価格スマホ・
低価格SIMの促進
プレミアムサービスの会員拡大
MVNO
FVNO
仮想移動体通信事業者
としてサービスと提供
仮想固定通信事業者と
してサービスを提供
NTT の卸事業への変革は画期的
光回線の利用による FVNO は画期的な変化である。NTT 民営化 30 年の中で、ドコモを中心
にケータイが伸びてきたが、固定電話回線は縮小の一途であった。その中で、NTT 東西は光
ファイバーのネットワーク回線を自前で拡大しようとしたが、この戦略を 180 度転換した。
つまり小売りをやめて、卸売りに徹することにした、NTT の光回線を卸にするので、小売
りのサービスは誰でも参入できるようになった。ドコモ自身がケータイと光固定の双方を
サービスすることができるようになったが、他のさまざまな業界の企業も自らのサービス
の一貫として光固定回線の小売りをしてくる。その意味で競争は激しくなろうが、当社に
とっても事業領域は大きく広がって行こう。
FVNO で付加価値アップ
FVMO は、固定電話のサービスまでサポートしようというものである。今までは光ファイ
バーの先に当社の WiFi ルーターをつけてサービスしていたが、これからは固定回線の光フ
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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ァイバーもまとめて面倒みられるようになる。
この FVMO については、キャリアのケータイショップとの戦いになる。それぞれの持ち味
を活かすことになろうが、当社にとっては、既存の会員に FVMO にも入ってもらい、新規の
顧客にも当社ならではのサービスのよさを訴求していく。
サービスメニューが増えるということは、上手く使えない人が増えるということにもな
るので、困ったら PC デポへという流れにも結び付く。ただ、そのためにはキャリアショッ
プとの戦い上、インセンティブ(販促費)を使う場面も想定される。
この光固定回線を利用した PC デポならではサービスが好評である。スマホで自宅にきた
FAX を確認でき、宅内でスマホが子機として使え、しかも 10 分以内の電話や FAX が月 300
回までかけ放題になる。当社の光インターネットに加入すると月 2000 円でこれが使える。
PCデポの高速光回線
~FVNOとしての光インターネットサービス~
・2015年2月より、FVNO(仮想固定通信業者)として、「ozzio光」を展開。
・当社のプレミアムサービス、サポートサービス、コンテンツサービス、 低価格スマホ等のMVNOと融合
・ozzio光は、NTTから光回線の卸しを受け、当社より提供
・当社のプレミアム会員は、NTTの光回線を当社のozzio光に変更することで、
セットサービスがお得で、便利になる。
ライフタイム・バリューを追求
SLP 化は順調に進んでいく。PC がなくなるわけではないので、ストック化は進んでいこ
う。PC デポはパソコンの大型量販店からイメージを一新して、全く新しいタイプの業態に
進化しつつある。SLP 店に衣替えすると、前の店に比べて、①客の滞在時間が長くなる、②
女性客が増える、③リピートのピッチが早い、④社員にいろいろ相談するようになる、と
いう変化がみられる。
改装前と後で、ものを買うという売上金額にさほど変化は出ない。しかし、サービスの
売上げは確実に増える。つまり、長い付き合いのできる客になっていく。
リピートのピッチが早いという意味は、1 回何らかの商品とサービスを購入した後、次に
来店する時期が短くなっている。女性が多いという点では、家庭におけるデジタル商品の
ニーズが増えており、もっと使いこなしたいと思っている現れであろう。その点では、野
島社長の狙いは、見事に当たっている。
一方、商品が豊富に置いてある昔の店をなつかしむ客もいる。品揃えの楽しみが減った
という人もいるが、店の機能をはっきりさせたという点でユニークさが光っている。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
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社員にとっては、青いロゴ(かつての PC デポ)の時は、常にまわりの同業他社を気にし
ていたが、オレンジのロゴ(新しい SLP 店)になってからは、他社を気にしなくなった。
接客においても、商品の説明が長くなって、プライスの交渉が減っているという。
ライフタイム・バリューとは、顧客がその商品を使う期間を存続期間と捉え、その期間
の顧客価値を全体として高め、それに見合って収益を稼ごうという考え方である。
サービスの売上げが伸びているが、サービスは 3 年契約の中で 2 年目、3 年目に稼ぐとい
うパターンである。会員は、新しい商品も同じ店で買いたくなるように、サービスの質を
高めていく。当然、会員のストックは新店よりも既存店の方が多い。新店は物販の勝負と
なり、そこから会員を増やしていく。よって、物販競争で価格が下がると、新店の収益化
が当初見込みより遅れることになる。会員増によって、サービス収入を高め、数年後にそ
この収益がプラスにきいてくるようにもっていく。
サービスに加入する会員は増えており、会員の加入期間を考慮したライフタイム・バリ
ューは一定の水準を確保できる。このストック型ビジネスの拡大に向けて勝負していく。
会社側では、サービス収入を読みながらマネジメントしている。
新ビジネスモデルで、売上高経常利益率 7~8%達成後は 10%を目指す
SLP 店化によって、フローからストックへのビジネスモデルの変化が一段と加速してきた。
顧客と当社の結びつきがより長期化していく、しかも、顧客の相談にのるので、接触頻度
が上がってくる。
このような当社のビジネスモデルが業績にも表れている。ユーザーとの長い付き合いを
ベースに、収益構造もフローからストック型に変化していく。会社側では、こうしたサー
ビス収入依存型の収益構造をより顕在化させることで、中期的な売上高経常利益率を従来
の 2%から 7~8%に上げていく方針を立てた。
PC の量販店として上場した 2000 年頃は 4.4%
の利益率があった。新しいビジネスモデルでそれを超えるような水準を目標とした。
SLP 店の新規出店には 2~3 億円の投資を必要とする。年商が 7~8 億円として、サービス
のストック効果で 3 年以降利益貢献を高めてくる。
7~8%の営業利益率は十分見込めるが、
それがほぼ達成できる局面にある。
会員については、さまざまなパターンがあるので、会員何人、平均単価何円という平均
値で語ることはできない。今まで 1 家庭でのサービスというパターンであったが、クラウ
ドサービスが入ってくると、データの個人管理が重要になり、ユーザー毎のアカウントが
大事になる。サービスの中身もさらに多様化してくる。
つまり、会員数がこれまでよりも高いピッチで増え、サービスの単価も上がってくると
いうことである。サービスの母体となる契約金額は年 20~30%で伸びることになろう。そう
なれば売上経常利益率で 10%以上を目指すことができるので、次のターゲットはサービス売
上高の拡大とともに、次の 5 カ年で経常利益 80~100 億円を目指すということになろう。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
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4.当面の業績
サービス収入の効果が顕在化し、ピーク利益の更新が続く
2013 年 3 月期から回復局面に入った
2013 年 3 月期は、
売上高 51353 百万円(前期比+3.3%)、営業利益 876 百万円(同+58.3%)
、
経常利益 933 百万円(同+30.1%)
、当期純利益 445 百万円(同+59.0%)と、予想を上回る
回復を見せた。
既存店は前期比 94%であったが、サービスが+21%と好調を続け、サービスの売上構成比
も 27%を占めるようになってきたためである。店舗増、サービス向け要員増、システム開発
費増などもあったが、サービス収入のプラスが寄与した。
バランスシートでは、棚卸資産の削減に努める一方、サービスの売上増で売掛金は増え
た。在庫に関しては、既存店の在庫を 20%ほど削減した。売掛金は、MVNO による通信端末
やプレミアムサービス(月額会員制保守サービス型商品)によるサービス一体型商品の販
売が増加した。
ハードの売上げでは、PC の売上げが前期比+2.2%であったが、これは台数増が+23.8%
であったのに対して、単価は-17.4%と下がったことによる。
サービスの売上高は 140 億円(同+21.1%)に増え、売上高構成比も 27.3%まで高まった。
このサービスの売上増によって、全体の粗利率は前年度比の 29.7%が 31.4%へ向上した。サ
ービス売上げが増える要因は、新規出店による効果に加えて、タブレットやスマホの販売
で、一人当りのインターネットデバイス台数が増える効果もある。台数が増える中で、ま
とめてサービスを受けようとすると会員のサービス料が上がっている。
業績予想と利益率の比較
2011.3
売上高
46912
粗利益
13640
売上高粗利益率
29.1
販売管理費
12271
対売上比
26.2
営業利益
1368
対売上比
2.9
経常利益
1509
対売上比
3.2
(予)はアナリスト予想
2012.3
49693
14756
29.7
14202
28.5
553
1.1
717
1.4
2013.3
51353
16134
31.4
15258
29.7
876
1.7
933
1.8
2014.3
53816
18429
34.2
16118
30.0
2310
4.3
2411
4.5
2015.3(予)
53000
20400
38.5
17300
32.6
3100
5.8
3200
6.0
(百万円、%)
2016.3(予)
55000
22000
40.0
18000
32.7
4000
7.3
4100
7.5
2014 年 3 月期も大幅増益を達成
2014 年 3 月期は、売上高 53816 百万円(前期比+4.8%)、営業利益 2310 百万円(同+
163.6%)
、経常利益 2411 百万円(同+158.4%)、当期純利益 1554 百万円(同+248.7%)と
極めて好調に推移し、過去最高の利益を達成した。
その要因は、1)サービスの売上高が前年度比+28.7%と好調を持続し、売上高の 30%を占
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
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めてきたこと、
2)消費税が XP のメンテナンス終了前の駆け込み需要が 3 月に発生したこと、
3)PC などの物販も円安の定着で価格が安定してきたことによる。商品別にみると、物販は
減っているが、それでも 15~18 億円は 3 月の駆け込み需要であったとみてよい。既存店は
当初の多少のマイナスでみていたが、+4.8%となり好調であった。
3 月末の店舗数は、
1 年前に比べて総店舗数に変化はないが、PC デポ 66 店中 4 店が SLP(PC
デポスマートライフ店)に改装した。
配当については長期安定をベースに、配当性向については 20%を目途にするという考えで
ある。業績が好調なので、増配を実施した。
バランスシートの比較
流動資産
現預金
売掛金
棚卸資産
固定資産
有形固定資産
のれん
差入保証金
敷金
資産合計
流動負債
買掛金
短期借入金
長期借入金(1年内)
固定負債
長期借入金
純資産
有利子負債
有利子負債比率
2010.3
10511
1754
2251
5316
7443
2844
1025
1479
1329
17954
6473
2764
800
690
2743
1936
8738
3426
19.1
2011.3
11678
2505
2533
5500
8051
3736
690
1440
1234
19729
6449
2421
700
1004
3747
2759
9533
4463
22.6
2012.3
14185
2083
3619
7285
9052
4941
406
1466
1272
23238
9225
3506
2100
1518
4449
3809
9563
7428
32.0
2013.3
13991
2982
4098
5986
8942
5073
155
1387
1268
22933
9009
2087
2550
1849
4149
3479
9722
7879
34.4
(百万円、%)
2014.3 2014.12
18494
21308
4679
2161
6939
8870
5775
8984
8644
9129
4836
5021
10
6
1349
1499
1248
1279
27138
30438
9758
12867
3506
4409
900
3920
1727
1499
3915
2773
3244
2143
13464
14797
5871
7563
21.6
24.8
運転資本が増加
2014 年 3 月期のバランスシートでは、3 月の駆け込み需要が影響して売掛金が増えた。
純資産は公募増資によるファイナンス資金が 23 億円入ったので、大幅に増加した。自己資
本比率は 49.5%に上昇した。
当社の収益性は高まってきたので、設備投資については内部資金で賄える。23 億円のフ
ァイナンス資金も新店作りに活かしていく。設備投資は、前期の 8 億円が今期は 13 億円程
度に拡大しよう。改装は 1 店 70 百万円、新店は 2~3 億円を要する。今までの PC デポの新
店よりは SLP 店の方が安く済む。一方、サービス売上げが増えると運転資金が先行し、2~
3 年かけて回収することになる。
最近の傾向は、来店客数は減っているが、PC 購入者の平均単価は上がっている。一方、
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
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サービス収入はコンスタントに 2 桁で増えている。バランスシートについては、売掛金が
増えている。サービス売上げが増えると、その中で例えばタブレット+雑誌という組み合
わせ商品は、サービスと商品のセット販売であり、毎月の月額料金から一部、後回収をし
ているため、売掛金が増えていく。店舗への投資は落ち着いているが、サービス売上増に
伴って、増加運転資金は必要になる。
現在、ソフトウェアへの投資も増やしている。自前のクラウドや課金システム作りに力
を入れているからである。新規出店は様子を見ながらであるが、一定程度は出していく。
キャッシュ・フローの推移
2010.3
2011.3
2012.3
2013.3
2014.3
(百万円)
2015.3(予) 2016.3(予)
営業キャッシュ・フロー
税引き後利益
減価償却
のれん償却
売上債権
棚卸資産
仕入債務
182
651
512
344
-356
-564
28
1121
713
595
334
-281
-184
-343
-635
-63
715
296
-1087
-1785
1085
1597
441
728
259
-479
1299
-1418
2010
1902
686
145
-2840
210
1417
-1440
1850
700
10
-2000
-3000
1000
2300
2500
800
0
-1200
-300
500
投資キャッシュ・フロー
有形固定資産
無形固定資産
-1561
-1341
-56
-1440
-1287
-163
-2537
-1691
-140
-994
-844
-135
-441
-332
-374
-1500
-1300
-200
-2000
-1800
-200
フリー・キャッシュ・フロー
-1379
-319
-3172
603
1569
-2940
300
財務キャッシュ・フロー
長短借入金
株式の発行
自己株式
配当金
1330
1715
0
-225
-154
1070
1037
0
194
-150
2752
2964
0
-25
-153
295
451
0
0
-155
127
-2007
2289
0
-153
1747
2000
0
0
-253
-520
-200
0
0
-320
現金・同等物の期末残高
(注)〈予〉はアナリスト予想
1753
2505
2083
2984
4679
3486
3266
既存店の数字の見方
当社の既存店の伸び率を、来店客数と顧客当りの単価に分けてみる見方は正しくない。
当社の月次のデータを従来の物販中心の店舗のようにみることができなくなっている。
サービス会員が累積的に増えており、そこから月次のサービス収入が入ってくるからで
ある。かといって、実際に商品は売っているので、通信キャリアのように、会員数と
ARPU(Average Revenue Per User、月額利用料金)に単純に分けてみることもできない。し
かし、サービスの累積効果がウエイトを高めていることは確実である。
当社の売上げを四半期でみると、物販中心の時は、1Q はまあまあ、2Q はダウン、3Q、4Q
に売れるというパターンであったが、その季節性は薄れていく方向にある。商品からサー
ビスへシフトしているからで、業績も安定感を高めてこよう。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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2015 年 3 月期の業績も好調
2015 年 3 月期 3Q 累計は、売上高は前年同期比-0.4%ながら、経常利益は同+43.8%とな
った。2Q までは XP の影響で物販の粗利もよかったが、3Q からは PC が失速してきた。一方
で、サービスの好調は続いており、全体の売上高は伸びなくても、利益は大幅に増えると
いうこれまでのパターンが続いている。
4Q についても同じ傾向が続くので好調な業績が達成できよう。しかし、変動要因はある。
NTT の光ファイバーの仕入れ、再販については、ケータイキャリアのショップとの競合にも
なる。ここにどのように臨むかによって販促費が変わってくるので、これがコスト先行の
変動要因になる。
2015 年 3 月期の会社計画は、2Q が終わったところで期初に比べ営業利益で 300 百万円ほ
ど上方修正された。売上高 53000 百万円(前年度比-1.5%)
、営業利益 3100 百万円(同+
34.2%)
、経常利益 3200 百万円(同+32.7%)、当期純利益 1960 百万円(同+26.1%)である。
これは十分達成できよう。
新規出店、SLP店への転換の動き
(店)
(年度)
PCデポ
直営
SLP店(新規)
SLP店(改装)
子会社
2011 2011 2012 2012 2012 2012 2013 2013 2013 2013 2014 2014 2014
3Q 4Q 1Q
2Q
3Q
4Q
1Q
2Q
3Q
4Q
1Q
2Q
3Q
1
0
2
1
1
1
4
2
パソコンクリニック
直営
6
3
1
2
合 計
7
5
3
8
1
2
3
4
1
1
2
2
0
0
0
1
1
2
3
4
6
(注)改装はPCデポ直営からSLP店への改装転換数。
好調なサービスが新しい局面へ ~「手ぶらでパソコン買い替え」
サービスの好調は続いている。これまではデバイスの販売につれて、プレミアムサービ
スが入ってくるというパターンであった。このプレミアムサービスのブラッシュアップが
顕在化して、サービスの伸びが利益成長への貢献度を高めてきた。
これからは、MVNO に加えて、FVNO は入ってくる、まだ種まきの局面であるが、新しいサ
ービスが付加されるので、これまでとは違った局面に入ってこよう。今までは、パソコン
(PC)まわりのことは PC デポへという流れであったが、これからはスマホ、タブレットは
もちろん、プリンター、FAX、などのインターネットデバイスについては、全部まとめて PC
デポへという流れになるかもしれない。
その場合、クラウドがカギとなる。
「総合クラウドサービス」が本格化してこよう。サー
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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バーの安定稼働が確保されてきたので、これから新しいサービスができるようになる。そ
の象徴が「手ぶらでパソコン買い替え」である。当社のプレミアム会員に対して、特許出
願中の独自の総合クラウドシステムを使うことによって、PC などインターネットデバイス
のバックアップデータの自動保存と、店頭でのそれらのデータの設定再現ができるサービ
スを開始した。
PC 上のデータがバックアップされているので、例えば PC を買い替える時に、既存の PC
のデータを取り出すのに現物を店頭に持って行って、書き換えてもらう必要がない。
つまり、一般的なミラーリング(クラウドへの同じデータの保存)を当社の場合 PC 上で行
っているので、これらのことが簡単にできる。スマホのデータも PC を通してクラウドに保
存されている。
こうしたクラウドサービスへの投資には、さほどお金がかからない。新店を作ることに
比べると大きな投資とはいえず、逐次拡大していけばよい。
では、同じことが他社にできるか。これは難しい。当社は店頭で PC クリニックの機能を
充実してきた。PC やスマホ、インターネットに詳しい技術者を育てきた。これで儲けるし
くみをすでに作っている。家電量販店が真似をしようと思っても、店舗にそのような人材
をそろえた機能を拡充することはできない。
5 月からは SIM フリーが入ってくる。月額 2000 円のサービスである。光固定サービスが
入ると、月 5000 円のサービスである。これらが伸びてくると 2~3 年目からは一定の利益
貢献が見込めよう。
サービス売上比率の推移
2013.3期
(百万円、%)
2015.3期
2014.3期
サービス売上 サービス売上比率 サービス売上 サービス売上比率 サービス売上 サービス売上比率
1Q
3025
24.8
3689
30.3
4495
36.1
2Q
3083
25.8
3894
31.8
4690
39.3
3Q
3223
23.5
4215
30.6
5248
38.4
4Q
3285
24.5
4439
28.4
利益率は上昇局面へ
2016 年 3 月期については、光回線サービスの売上が一定程度入ってこよう。これによっ
て、サービス及びハードの売上がプラスとなってくる。よって、売上高は、新店や改装の
効果も加わって伸びてこよう。利益については、引き続きサービスの寄与によって、大幅
増益が続こう。
サービス売上が年間で 200 億円ペースに近づいている。金額的に最もウエイトが高いの
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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は、プレミアム会員サポートで、次が修理等の技術料である。その次が MVNO、FVNO などの
通信回線サービスである。雑誌などのコンテンツサービスは、ウエイトは低いが伸びは最
も高い。
方針として、①スマートデバイスの販売を強化、②コンテンツやサービスを組み合わせ
たソリューション化の推進、③安心、安全を強化したサービス商品の開発、提供、④SLP 店
への改装及び新規出店に力を入れている。
2016 年 3 月期についても、同じ方向に進むので、引き続き利益率の向上が図れよう。2016
年 3 月期は、売上高 550 億円、経常利益 41 億円(前年度比+28%)、経常利益率 7.5%まで
高まろう。
野島社長は、一連のビジネスモデルの転換で、売上高経常利益率で目標の 7~8%が達成
できると自信を深めている。ROE も 15%を超えてくることになろう。実際、収益力の向上
では、物販の粗利率も改善している。物販の営業負担が鈍るので、サービス増加の利益が
一段と表面化してくる。また、サービス 1 人当たり単価は着実に向上している。この 2 つ
が進展しているので、会社側がターゲットとする売上高営業利益率 8%は早晩達成できよう。
名実ともにパーソナル・コミュニケーションのサービス企業として、独自の地位が確立で
きよう。
5.企業評価
業態転換のイノベーションが継続
収益構造の転換で ROE は大きく向上
既存店がサービス需要を取り込んで、全体としてプラスを維持できるのであれば、新規
出店を急ぐことはなく、年 3~4 店を着実に展開することで、二桁に利益成長を続けること
ができよう。既存店をベースに業績を伸ばすことで、売上高 550 億円、経常利益 40~50 億
円は十分達成できよう。ROE も 15%超えてこよう。
顧客の会員化を進めている、このストック効果をどのように高めていくかが注目される。
一人でいくつかのハードを所有する、ファミリーでいろいろ使うなど、さまざまなパター
ンがあるので、こうしたユーザーをメンバー化することによって、サービスの単価は上が
っていく。また、雑誌や音楽の複合サービス、新しい組み合わせによるセキュリティや使
い勝手のよさの追求など、これからの工夫の余地は大きい。
PC の販売からサービスで稼ぐという仕組みに切り換えると決断したのが 2005 年である。
それから 8 年をかけて、ビジネスモデルの転換に収益がついてきた。次は当社のビジネス
モデルがニッチな存在として続くのか、新しいメジャーな動きとなるのか。野島社長の次
の戦略に注目したい。
家電量販店の再編は、再編によって仕入れ価格が有利になったところは、値下げをして
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
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くるので、マーケットへの波及も出てくる。FVNO での通信キャリアとの戦いも価格競争の
様相を強めよう。当社は、インターネットデバイスのハードを販売することを通して、サ
ービスの収入を安定的に確保していこうというビジネスモデルである。大手とは距離をお
いた棲み分けはできると、野島社長はみている。
将来、会員を数 10 万人から 100 万人規模へ、また、サービスのメニューを多様化しつつ、
それらをまとめることで、月額課金の単価を数 1000 円から 5000 円以上へと上げる余地も
ある。そうなれば、経常利益で 100 億円(経常利益率で 10~15%)というターゲットもみえ
てこよう。全く新しい局面に入る可能性が高いので、大いに期待できよう。
サービス収入をベースとするストック型の収益構造への転換が大きく開花してきた。こ
うしたビジネスモデルの転換を評価し、スマートライフ店の多店舗展開など、次の攻めの
効果も期待できるので、企業評価はAとする。(企業評価については表紙を参照)
株主数は 3 月末の 2205 人から9月末は 1904 人へ減っている。機関投資家が持ち株を増
やしているものとみられる。東証1部上場基準に今一歩である。2015 年 1 月に 1:1.5 の株
式分割を実施しており、株主を一定程度増やすことができよう。
2 月 27 日時点の株価(926 円)でみると、PBR 2.38 倍、ROE 13.2%、PER 17.9 倍、配当利
回り 0.9%である。分割を機に、株価水準はかなり切り上がった。パソコン(PC)の次の時代
はどうなるか、家電量販店に対抗できるのか。これに対して、当社はユニークな存在を示
すことができよう。IT ソリューションのサービスで稼ぐという仕組みと、家電量販店と差
別的に共存するという位置付け(ポジショニング)が収益に結びついてきたので、業績拡大
とともに当社の企業価値は今後一段と見直されてこよう。
また、会社では 2014 年 7 月より「リスク・統制等月次報告」を出し始めた。世の中の流
れを踏まえながら自社の管理体制を見直し、それを適切に開示していこうという姿勢であ
る。この情報開示は高く評価できよう。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
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