2015 年 2 月 26 日 原子力規制委員会 委員長 田中 俊一 様 国際環境 NGO グリーンピース・ジャパン 気候変動・エネルギー担当 高田久代 拝啓 時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。 このたび、国際環境 NGO グリーンピースは、九州電力の川内原発に関連した委託レポート 『川内原発と火山灰のリスク』を発表いたしました。 レポート全文(英語)と、要旨および抜粋(和訳)、ならびにグリーンピースが委託した意見 書を含む川内原発仮処分裁判の「準備書面 26」をお送りいたしますので、何卒ご査収くださ いますようお願い申し上げます。 本レポートは、貴委員会の定めた「原子力発電所の火山影響評価ガイド」が国際原子力機関 (IAEA)の定めた「火山安全ガイドライン」を満たしていないこと、そして川内原発 1、2 号機の再稼働審査において、九州電力が川内原発への火山活動の影響を過小評価しているこ とを明らかにしています。 本レポートは、英国在住の原子力コンサルタント、ジョン・ラージ博士に委託して作成した ものです。大規模火山噴火に伴う火山灰降下は、原発の運転に支障を及ぼす重大なリスクを 孕みますが、貴委員会も九州電力も、火山灰堆積の可能生や影響について充分な考慮をして いるとは評価できません。特に我々が憂慮するのは、 「火山影響評価ガイド」が事業者に対し て、リスク評価、災害対策評価とも充分に包括的に行うことを厳しく要求していない点です。 本レポートでは、以下を懸念点として挙げています。 ・ IAEA は確率論的評価を行うことを勧告しているが、川内原発の火山リスクに関して、そ れが行われていないこと ・ 九州電力および貴委員会による「VEI3から 6 の事象(発生頻度がより高い)は、プラン トには影響を及ぼさない」との結論は正当性に欠けること ・ 九州電力は堆積する火山灰の厚さを最大 15 センチと想定しているが、風向きが変わった 場合には、倍以上の堆積量になる可能性もあり得る。この状況に、吸水、降下の継続、 迅速な除去の不能等の条件が重なった場合には、1、2 号機の燃料取扱建屋においては、 それぞれ x1.18(設計余裕 0.85)、x1.4(同 0.73)の係数分、設計荷重を超えることになり、 屋根が崩壊する恐れが生じること ・ 火山灰の堆積は、配電設備のショートや外部電源喪失につながり得るが、外部電源喪失 時に想定されている非常用ディーゼル発電機の管理に関する方策について、充分な対応 が検討されているとは言えないこと このように、貴委員会が策定した「火山影響評価ガイド」は IEAE のガイドラインで推奨さ れている方法論的アプローチを反映しておらず、事業者に包括的かつ有効な火山災害評価を 行わせるのに十分であるとは言えません。また、事業者にプラント固有の設計基準を策定さ せることも要求できていません。本レポートで言及しているワシントン州のコロンビア原発 における米・原子力規制委員会の例と比較してみても、その対応は安倍首相が強調する「世 界最高水準」と言えないことは明らかです。 以上の点をふまえ、グリーンピースは、貴委員会に対して、以下を要請いたします。 • 火山影響評価ガイドを、IAEA の要求を満たすものへと改訂してください • 改訂された火山影響評価ガイドをもとに、再稼働についての審査をやり直してください • 上記の作業を終了するまで、進行中の「工事計画」および「保安規定」の審査は留保し てください 以上、何卒よろしくお願い申し上げます。 敬具
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