統計学は面白い(その4) 小原 堯 これまでは,2つの異なる変数 x と y の相関を考察した.今回は同じ1つの 変数 x の異なる時点での相関を調べる.次のような予想を立てる.現時点 t で の x の値 xt は,1期前の x の値,xt−1 によって決まる.これを式で書けば xt = a + b xt−1 + et (1) である.a, b は回帰係数,e は誤差である.1期前のデータだけから今期の値が 決まるなどととても考えられないが,その1期前のデータは2期前のデータで 決まり,以下同様にして,何期も前のデータの影響が今期に及ぶことになる. A 社株の終値に (1) を適用してみよう.xt → y, xt−1 → x と読み替えて,今 まで適用した R の関数 lm(y˜x) を使う: result = lm(y˜x) (2) xhat = fitted(result). (3) 源データ xt を点で表し,推定された xhat を赤い線で表してみると,図 1 の様 になる.(1) のモデルを AR(1) (1-st order auto-regressive) モデルという.auto- regressive は自己回帰と訳している.自分の現在を,自分の過去で説明する(回 帰する)ということである.その次数が1次である.2 次の回帰ならば, xt = a + b1 xt−1 + b2 xt−2 + et 1 (4) 480 440 x 520 となる.図を見る限り,源データを表す点の大きさに,回帰値が埋没するくら 0 10 20 30 40 t 図 1: AR(1) による当てはめ い良く当てはまっている.AR モデルは関数の形を決めない回帰分析である.こ の種の分析を時系列分析と呼んでいる.時系列分析には有用な方法がいくつも ある.これらを調べるのは,面白い事である. 2
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