光環境に対する植物の順応シリーズ6 Leaf area and growth of juvenile temperate evergreens in low light: species of contrasting shade tolerance change rank during ontogeny Lusk, C.H. Funct. Ecol. 18: 820-828, 2004. 造林学分野DC2年 飯島勇人 Introduction 耐陰性の種間差 耐陰性 ・森林動態を考える上で重要な要素 ・耐陰性: 明確な定義はない →暗い林内で個体数が多い種 →一定期間の成長量や生残率による判断 etc… ・耐陰性の違いを検討するには? Introduction RGRの分解 -耐陰性を考えるためにRGR RGR = (W2 – W1) = (T2 – T1) × W1 (W2 – W1) (T2 – T1) × LA = NAR × W, 成長の程度を示すもの, 通常個体重 T, 時間 LA, 個体の葉面積 NAR: Net Assimilation Rate, 単位葉量あたりの稼ぎ LAR: Leaf Area Ratio, 個体重あたりの葉面積 × LA W1 LAR Introduction RGRの分解2 RGR RGR = (W2 – W1) = (T2 – T1) × W1 = (W2 – W1) (T2 – T1) × LA = NAR (W2 – W1) (T2 – T1) × LA × LA LW × × LA W1 LW W1 × SLA × LMR SLA: Specific Leaf Area, 重量あたりの葉面積、葉の厚さ LMR: Leaf Mass Ratio, 個体重あたりの葉重、葉への投資率 Introduction それぞれの要素が持つ意味 「重量」と「面積」 ・重量は、コスト (作るのに投資した量) ・面積は、効率 (資源を受ける部分の量は面積) NAR: (稼ぎ) / (葉面積) →生産効率 LAR: (葉面積) / (個体重) →受光器官生成効率 SLA: (葉面積) / (葉重) →葉の生成コスト LMR: (葉重) / (個体重) →葉への投資率 Introduction 目的 耐陰性の違いをもたらすもの ・炭素獲得能力 ・炭素保持能力 ・ (実験の場合) 生育段階 (個体サイズ) の違い →検討例が少ない 生育段階が実生の形態および成長に与える影響を検討 耐陰性の違いをもたらす要因を検討 Methods and materials 調査地と材料 調査地 ・チリのParque国立公園 ・年降水量3500mm、常緑広葉樹林 ・林内に2つの調査区を設定 (結局データはプールするけど) 調査種 ・常緑広葉樹4種 Methods and materials 材料の詳細 個体の選定 ・開空度2-5%で成育する個体 ・樹高1m未満 Methods and materials 調査項目 地上部RGR ・幹高、基部面積 (BA) 頂端枝直径から算出 形態・器官量配分 ・SLA、LAR、LMF、RMF 地上部における葉への投資率 葉寿命 ・ (一定期間の落葉数) / (最初の葉の枚数) Methods and materials 調査プロセス 2002年4月 ・地上部RGR項目と葉数の測定 2003年3月 ・地上部RGR項目と葉数を再測 ・個体を採取→葉、幹、根に分け、絶乾重量測定 ・葉は絶乾前に面積を測定 解析方法 ・生育段階を共変量、種を独立変数としたANCOVA Methods and materials ANCOVA ANCOVAの特徴 ・共変量の影響を考慮しながら、ある1要因の影響を検討する ・「回帰分析」+「分散分析」 ・ある回帰直線が複数あり、 直線の傾きが異なるか? (直線の傾きが同じときに) 切片が異なるか? ・アロメトリー関係で よく用いられる Result 葉寿命 ・個体サイズ増加or耐陰性高 →葉寿命長い Result 地上部器官内での葉への投資 ・個体サイズ増加 →葉への投資は減少 Result SLA ・個体サイズ増加→SLA減少 ・耐陰性高→SLA小 ・SLA小→厚い葉 (頑丈) Result LMF ・耐陰性高→LMF増加 ・耐陰性が高い種は個体 サイズの増加とともに葉へ の投資率を増やしている Result RMF ・耐陰性高→RMF減少 ・耐陰性低→RMF一定 Result LAR ・耐陰性高→LAR一定 ・耐陰性低→LAR減少 ・樹高50cm付近でLARが 逆転 ・葉面積でもほぼ同様の 傾向 Result 地上部RGR ・耐陰性低 →RGRの減少が大きい ・LARとほぼ同様のトレンド Discussion 生育段階の影響 LAR ・RGRに非常に大きな影響力を持つ ・個体サイズ小→耐陰性低の種のほうが大←主にSLAの大きさ 耐陰性低の種:初期段階は薄い葉をつけ、高い生産能力を実現 でも ・葉の付け替えが速く、個体サイズに係わらず根へ一定の投資 →器官生成のコストが大きく、被陰下では効率が悪い 個体サイズの増加→種間でのLARの関係が逆転 Discussion 耐陰性の高い種の特徴 資源保持 ・葉をあまり付け替えない→器官生成のコストを抑える ・厚い葉→生成した器官を長く維持する ・葉へ多くの投資→最も不足する資源を積極的に獲得 頑丈な器官を長く維持→成長速度は速くないが 暗い環境でも炭素収支を正に保つ Discussion 耐陰性の低い種の特徴 資源獲得 ・頻繁に葉を付け替える→生産効率を重視 ・薄い葉→葉の生成コストを抑える 資源が豊富な環境では速い成長速度 アクシデンタルなダメージを受けやすい 資源が不足すると炭素収支が負 Discussion 結論 ・植物の形は耐陰性の違いに大きな影響を与える ・植物の形は生育段階の違いのみによっても変化する 植物の形を元に耐陰性を議論しようとする際は 生育段階の違いを考慮する必要がある
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